第5話

麻痺毒投げナイフを【念動力】によって投擲した私は、倒れた選手を一人ずつ丁寧に場外へ転がしていく。


7人目に取り掛かろうとしたところで塵の索敵に反応があった。こちらへとまっすぐ進んでくる反応があったため、私はタワーシールドを筋力と【念動力】を合わせて使い敵との間に滑り込ませる。


どうにか間に合ったようでタワーシールドに衝撃があったのだが、その場所がおかしかった。盾の面ではなく角から衝撃が来たのだ。


私は衝撃のあった方の先を見つめると一人の選手が場外に吹き飛んで転がっている様子が見えた。


一瞬、周りの選手の目が私に集まったような気がしたが、数秒後には乱戦が再開される。


私も先ほどのことはなかったことにして残りの麻痺して動けない選手を場外へ運び出す。それが終わるころには選手が3人となっていた。


「試合終了。場内に残っている3人を本戦出場者とする!!」


試合開始の宣言をした先生?が試合終了を宣言した。私はすぐさま移動しようとしていたのだが、残っている選手の一人に声をかけられてしまった。


「なあ嬢ちゃん。俺は戦闘学校の相沢っていうんやけどれど。そのでかい盾で一人吹き飛ばしたの。あれ狙ってやったんか?」


「初めまして。高橋です。あれは選手が迫ってきていたのでその間に盾を滑り込ませたら偶然吹き飛ばしただけですよ」


そう私が口にすると相沢さんは爆笑してお腹が痛いポーズをとっていた。


このまま立ち去っていいものかと考えていると、相沢さんが笑い疲れたようで話の続きを始めた。


「悪い悪い!笑わせてもろたわ。あの吹き飛ばされた奴やけどな。【隠形】っつうスキルもちでな。姿を見えなくできるスキルなんよ。それなのに見つかったばかりか盾で一撃っていうのがおもろうてついな」


「その【隠形】って魔法ではないのですか?」


「ちゃうで。制約がないからな。いつまでも姿を隠せるっちゅう噂や」


「ずるいですね。それ」


「まあ。一撃で退場していったけどな」


こんな感じで壇上で話していると、次のバトルロイヤルの選手がどんどん集まってきていた。流石にこれ以上この場にいると次に試合に巻き込まれそうだというわけで私たちは解散した。


私は観覧席へ向かってミーシャ先生を見つけると頭をぐりぐりしておいた。


「OH!ヒビキ。なんてことをするのですか?」


「試合の件をちゃんと説明しなかった罰です。それでこれはいつまで続くのですか?」


「バトルロイヤルは終了でーす。次は60名での1対1の対戦が優勝者を決めるまでトーナメント形式で行われまーす」


「何日かかるのですか?それ」


「1週間の予定でーす。まあヒビキはちゃんと観戦して装備を決めたり【念動力】スキルのアイデアを蓄えるといいですよ」


「まあ、そうします」


「ちなみに観客席の人からのスカウトは試合期間中も面接可能となっていまーす。一応、試合に集中するという理由で断ることもできますがヒビキはどうしますか?」


「話を聞きたいので断らないでください」


「了解でーす」


こうして模擬戦1日目は問題なく終わった。

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