第4話

「ヒビキもそろそろパーティーをそろえてダンジョン攻略に乗り出す必要がありそうです」


ミーシャ先生の突然の一言に響は一瞬固まった後、反論を繰り出す。


「ミーシャ先生は私の【念動力】の出力が上がるまで研究中ということにしてダンジョン攻略は後回しにするって言ってませんでしたか?」


「ところがギッチョン。なんと戦闘学校も含めてパーティーを結成するための模擬戦を大々的に行うことになったのでーす。私の力も及ばずヒビキも強制参加となってしまいました。しくしく」


ミーシャ先生は分かりやすい泣きまねをして場を和ませながらもちらちらこちらを見てくる。


おそらく私が折れて参加するというのを待っているのだろう。


「はぁ。それはわざと負けてもいいんですか?」


「それは構いませんが、一般企業も見に来るので力を示せばダンジョン攻略以外の道が開ける可能性がありますよ」


「やります」


私の変わり身の速さにミーシャ先生は驚いていたが、私が参加を表明したことに安堵していた。


「それでは簡単にルールを説明しておきますね。まず殺す可能性がある攻撃は反則とみなされます。次にそれ以外なんでもありです。以上となりまーす」


なんとも気が抜ける説明であったが殺し以外になんでもありなのであれば私の独壇場ではないかと思っていた。


「試合は3日後、準備を怠るなよ。ヒビキ」


最近、ミーシャ先生は日本のアニメにドハマりしたらしく言動が安定していない。まあ、3日前に知らせてくるあたり、どうにか参加しないで済むように手を打っていてくれていたのだろう。


3日などあっという間に過ぎ去り模擬戦当日、私はミーシャ先生を恨んでいた。戦闘を行うために作られたであろう壇上の上には数十人の装備を身に着けた人間がいる。


そう、予選がありバトルロイヤル形式という説明を忘れていたミーシャ先生であった。そんな先生は観覧席でお菓子を食べている。そして私と目が合っていることを察すると手を振っていた。


ちなみに、私の装備はタワーシールドにメイス、投げナイフを10本に酸素ボンベが3本。研究棟に進んだ生徒の中では装備が多い。というか研究棟に進んでこんな重装備をしているのは私だけであった。


「では予選第10試合。開始!!」


という合図とともに私は10本の投げナイフを私を囲んでいる人たちの膝関節目掛けて【念動力】で射出する。


合図と同時に近くにいた人間を攻撃しようとしていた人たちはろくに防御もできずに装備の隙間である関節にナイフが突き刺さる。そして、ナイフが突き刺さった人は全員もれなくその場に崩れ落ちた。


私はあらかじめナイフに即効性の麻痺毒を塗っておいたのだ。


この奇襲をよけられた者はおらず30名いた壇上の上から10人が地に伏せた。

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