第3話

研究棟に進学した私を待っていたのは、低酸素状態での運動という訓練だった。そして、息が整うとスキルを発動して自分の限界を探るという行動を繰り返した。


ミーシャ先生はというとその際にどの程度【念動力】の出力が出ているのかを計測している。何ができるかを探る前に出力と使用回数を安定させるのが先だというミーシャ先生の結論だ。


「う~ん。なかなか【念動力】のパワーが上がりませんね。これでは最初に想定していた首の骨を折るという技を使うのに数年の訓練が必要になりそうです」


研究棟では、ある程度ダンジョン攻略が可能だという目途が立つとモンスターの間引きが義務付けられる。それほどに人類の生存圏は狭まっているのだ。


私は訓練には本気で取り組んでいたがそれよりもダンジョン内での生存率をあげる方法を考えていた。


今思いついているのは空気中の窒素を操って奇襲を受けないようにする案だ。しかし塵を操るのには精密なコントロールと緻密な想像力が必要らしくミーシャ先生曰く、現実的ではないが素晴らしい考えというレベルらしい。


まあ私は死にたくはないので必死にその技の習得を模索しているのだがそのせいで【念動力】の出力が上がっていない気がしないでもない。


そんな私に、ミーシャ先生が持ってきたのは大きな盾。いわゆるタワーシールドというやつである。しかも下の方には杭がついており地面に固定できるようになっていた。


「ヒビキは、ダンジョン攻略にあまり関心がない見たいで生存力ばかりに気をとられているようだったのでこれを使うといいです。これを扱えるようになればまあ死にはしないでしょう」


「でも、これ女性が扱うような重さではないと思うんですけれど・・・」


「そこは【念動力】と低酸素運動で鍛えたパワーで何とかするです。最終目標はこの盾を【念動力】のみで空中に浮かせることですね」


「盾を使えという指示には従いますけれど攻撃はどうするのですか?」


「ヒビキは【念動力】のコントロールに意識を割きすぎなのです。だから盾を先に使えるように訓練することで【念動力】の出力が必要なように訓練を矯正するのです」


ミーシャ先生の行動の意味には納得がいったが、こんな重くしかも視界をふさぐ盾を使用して奇襲でも受けたらどうするのか?と考えているとミーシャ先生が続きを話す。


「ヒビキの索敵方法の案は素晴らしいです。だけれどそれだけで生きていけるほどダンジョンは甘くありません。それに攻防が出来なければダンジョンでは命取りです。大丈夫です、索敵と盾の扱い、後は首をへし折るほどの出力が出るまで研究中という理由でダンジョンに潜らせることはしません」


そうして1年ほどを訓練に費やし、普通の中学生だった私はそんな過去などなかったかのように立派なアスリート体系となったのであった。

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