第2話
残りの中学生活にそれほど大きなイベントなんてものはなく、中学校を卒業した。
私は研究棟への進学が無事に認められ、【念動力】スキルが過去に1件あるだけの希少性の高いスキルだった。そのため、専任で研究者が着くという異例の事態となった。
両親にそのことを報告すると。
「そんなことよりも、【念動力】は戦闘スキルなのだろう?響がダンジョンへ潜らないかが心配だよ」
と父。
「そうよ。せっかくの一人娘なのだから危険なことはやめて孫の顔くらい見せてよね」
と母が言う。
私も、ダンジョンに興味がなかったため。
「大丈夫だよ。多分・・・」
と気楽に返しておいた。
そして、研究棟へ進み担当となったのが。
「ハジメマシテ、ミーシャ・クロイツです。ミーシャと呼んでください」
外国人だった。だが、今の時代ではめずらしいことではない。外国では人口に比べて出現したダンジョンが多い箇所がいくつもあったため、日本に避難している人間が多数いたのだ。
「高橋 響です。よろしくお願いします」
「オー。ヒビキ。キュートな名前ね」
「ありがとうございます」
そんなやり取りがあった後、【念動力】スキルで分かっていることを共有することになった。
スキルの代償は周りの酸素濃度が下がること。これは【念動力】の出力が上がるほど周りへの影響が大きくなる。
なんと分かっているのはこれだけだった。最大出力はスキルを使っていくうちに上がっていくのが一般的なのだが、それが【念動力】にも当てはまるのかもわかっていない。
というのも、前例である【念動力】スキル保持者は男性で、スキルが対モンスターに優秀なものだとわかるとダンジョンへ突っ込んでいったそうだ。
そしてその後、彼の姿を見た者はいないという奴である。
「【念動力】が対モンスターに優秀だと言われるのはなぜですか?」
私は気になったことを率直に質問するとミーシャ先生が答える。
「発動速度が早くてモンスターがよけられない。そして効果が局所的にも作用する。つまり、よけられない速度で首の骨を折るような攻撃が可能だからだね」
ミーシャ先生は自分の首をトントンと叩きながら説明してくれた。
説明を聞いた私は、代償が払える範囲でそれが可能なのであれば確かに無双できそうだと感じた。
そんなことを考えているところにミーシャ先生が注意を促す。
「だけれど、効果が局所的過ぎて動いているモンスター相手にはめっぽう弱いのよ。まあデータが不足しているだけで実はとんでもない使い方があるのかもしれないのだけれど」
「ちなみにこの力でダンジョンへ潜る以外の職業は見つかるのでしょうか?」
この質問にミーシャ先生は目が点になっていた。
「代償が周りにも影響を及ぼす点から難しいわね。あとパーティを組むのも難しいわよ」
研究棟入学初日から将来に絶望しか感じることのできない私だった。
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