第7話 心臓の声

 幼い頃から僕の心臓はお喋りをする。


 こんな事を言うと可笑しな奴だとおもわれるかもしれないが本当に声がするんだ。


 例えば小学校のマラソン大会で足を挫いてしまい、ゴールまであと少しの所で諦めようとしていた時だ。


「もう少し、もう少し、あと一歩」


 心臓はお喋りを始め、ゴールを諦めようとしている僕を励ましてくれた。


 中学生になり志望校の受験勉強を始めるが、成績が思う様に上がらない時だって。


「頑張って、君なら出来る、あと一歩」


 成績が上がらず悩んでいる僕を心臓が応援してくれる事もあった。


 念願叶って志望校にも合格出来た。しかし楽しい高校生活を夢見ていた僕に待ち受けていたのは辛い現実だった。


 元々内気な僕はいじめの標的になってしまう。


 僕は悩みを抱え校舎の屋上で空を眺めていた。


 今も心臓は僕を励ましてくれる。


 無視をする同級生と友達になりたい……


「頑張って、諦めないで、もう一歩」


 いじめが原因で成績も落ちてしまった、どうにか挽回しないと……


「頑張って、君なら出来る、もう一歩」


 先生も無視し始めた。どうにか気に入られないと……


「もう少し、諦めないで、もう一歩」


 僕は喋る心臓に身を預け、声に従った。


「もう一歩、もう一歩、もう一歩」


 心臓は僕の背中を押してくれる……


「あと一歩、あと一歩、あと一歩」






 こうして僕は屋上から身を投げた。


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