英雄になる理由


「やめろ…ハルカに手を…だすな!」


 体が動かない……、俺のせいでハルカが……


「やっと見つけたぞ坊主」


 ……!この声はカイさん?どうして?


「どうしてカイさんがここに?」


「お前らが帰って来ないって聞いてな探してたら悲鳴が聞こえたから来たんだよ。まぁこうなったのも俺に責任があるしな。」


 そう言いながらハルカを守るように魔物と対峙した。


「たかがブラックベアーごときが俺に挑もうなんざ100年はえぇよ。」


 たった1振りそれだけでブラックベアーと呼ばれていた魔物は両断され呆気なく終わった。


「す……すごい。」


 すごく綺麗な太刀筋で思わず見蕩れてしまった。

 どれだけ修行したんだろう、なんでこんなに強いのに英雄を否定したんだろう?


「さっさと帰るぞ」


 そう言ってカイさんはハルカを抱えた


「ハルカは大丈夫なんですか?」


「恐怖で気を失ってるだけで特に怪我はねぇから安心しろ。」!

 


「そ…そっか、良かった。」


 本当に良かったハルカに怪我がなくて。

 そういえば……

「聞きたいことがあるんですけど良いですか?」


「なんだ?」


「なんで英雄を目指すなって行ったんですか?」


「ああその事か別に英雄になるために強くなることは否定しねぇけどなお前は皆を守ると言ったよな?」


「はい。」


「それはダメだ」


「……なぜ。ダメなんですか?」


「それはな、皆を守るなんてことは誰にもできねぇからだ。」


「でも物語の英雄は皆を守ったって書いてあったよ?」


「いーや書かれてないだけで魔王による被害は大きいものから小さいものまで多々あったはずだ。そしてそれを全て英雄が防いだなんてことはありえない。現に他の残された本を読めば英雄が防げたのはほんの一部でしかないと分かる。」


「でも目指すことは良い事じゃないの?お父さんは目標はでかく持てって言ってたよ。」


「ならお前は魔王や魔族から被害がある度に防げなかったことを後悔するのか?」


「何か守る方法はあったんじゃないかなって思う。」


「それがダメだ。どれだけ強くても人1人が守れる人の上限は決まっていて皆を助けるなんてことはできない。なのに皆を守らなければと思うのは無駄にお前の心がすり減るだけだ。」


「じゃあどうすれば良いの?」


「守る対象に優先順位をつけること。そして他のもの全てを犠牲にしてでも守りたいものをつくること。」


「優先順位なんてつけて良いの?」


「いざという時に判断を鈍らせないために必要なことだ。」


「ふーん、でも絶対に守りたいものなんてできるかな?」


「それは心配すんな。自身では気づいてねぇかもしれないけどお前にはもうできてるよ。」


「そうなんだ。ねぇ僕に剣を教えてください。」


 ふとした会話に紛らわせれば承認してくれるはず


「いいぞ、俺のことはカイ師匠と呼べ。」


 え?


「え?良いの?」


 まさか認めてくれるとは。


「逆にお前は良いのか。俺は1度お前の英雄を否定してるんだぞ。」


「うん。カイ師匠に英雄とは何かを教えてもらったからね。」


「なら帰ったらまず休まねぇとな。」


「うん!」


 10分くらい歩いてたら森の出口に無事に着いた


 大切なものを守るために強くなる。

 大切なものを守れるそれが僕にとっての英雄



 あとがき

 次回よりカイ師匠による修行の始まり!

 カイ君はどれだけ強くなれるのか!

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