第7話 み…み…水…カミ…
モンゴリアンデスワームの様な生物の肉と体液は土の味であった。しかし、喉とお腹が満たされていく…。
くっそ不味いけど…なんとか食べられるな。
エリクサーより断然マシであった…、生ゴミと土なら土を誰でも食べるだろう。しかし、モンゴリアンデスワーム…到底食べ切れるサイズではなく、あと50センチくらい残っている。
鞄に入れとくか…。また、食べるかも知れないしな…。
順調にこちらの世界に順応していくのがわかる。よく言った物だ、自然に帰るとどんどんと順応していく…そしてアホになると…。アホになるは誤りでアホにならないとやってられないが正解だ。ぼっちならなおやってられない…。
なんとか今日中には水源を見つけておきたいな…。
半ば諦め気味ではあるが、先ほどの食事が活力を与えてくれる。最悪、モンゴリアンデスワームの様なまずい飯でも体は二、三日は持つであろう。猶予はあるものの、余裕を残しておきたいという気持ちだ。
思い出した…、確か…。
指を少し舐め、サタデーナイトフィーバーの俳優並みに人差し指を立て、腕を上げた。
感じろ…風を…。こいこい…こいこい。
目を閉じて、感じる…、感じる…全く何もわからない。テレビでは風を探す時こんなことをやっていたと思ったが、素人じゃわからない…、いや…無風なのか…。いつのまにか奥へ進むにつれ股間にも風を感じなくなっている。
掲げた腕を下げ真顔で森の奥へ足を運んだ。その顔はまさに歴戦の裸勇者…、冒険者から昇格しても良い面構えだと自負している。
よくにた景色だが、直感はこのまま進めと告げる。神の導きの様に…足は勝手に進む、この世に神がいたならば…だが…。
ゾクゾクするぞ…体が何かを訴えている。
今までにない感覚…いや、今まで何度も乗り越えてきた感覚に体が支配されていく事がわかる。
ここで来るか…あいつがやってくる…。腹が痛い…。
自分でも思うがトイレに関してはうるさい。外でなんてもっての他だ、個室空間かつ水洗便所でないと体が受け付けないのだ。追加するならウォシュレットも欲しい。
いや、わかってるのだ…、高望みである事はわかっているのだ。しかし、しかし…、尊厳なくしてはもう人間ではいられない。裸なのは歴戦の猛者であるという事で納得できるが、これは譲れない。
そんなことを考えている時も降り龍のように腹が暴れだす。
クソッタレ…。負けるもんか…。水…トイレ…トイレ…トイレ。
お腹が痛すぎて息が絶え絶えになってくる。
ここで…この場で出してしまえば楽になる、そんな事はわかっている。わかっているんだ…、わかっているんだが…自分にとってサンクチュアリ(聖域)である尊厳を侵害してはならない。そんな事が頭の中で格闘する。
天使と悪魔が戦う、そんな描写が良くされると思うが、その状況だ。
我慢の限界も近い…、トイレを…作るんだ…自分の尊厳を失わないレベルの最低の…トイレを…。
急いで穴を掘る。もう、この際はボットン便所でも良い…、その目の前にある穴はトイレだ…と自分に言い聞かせる。
神よ…なんという試練をお与えになるのだ…。
今掘った穴にまたがり神にこの腹痛を止めてくれと祈ることしかできなかった。
モンゴリアンデスワームに当たったのか、エリクサーが腹の悪いところを治してくれたのかは定かではないが、自分の恥らいの気持ちが一枚剥けた事が理解できた。
カミ…カミ…カミ…。くっ、やはり、これしかないのか…。
そして、柔らかい葉っぱでお尻を拭いでみたが、案外悪くなかった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます