第8話 なんと美しい大剣なのか…

 ひとしきり神に祈りを捧げ、内部にいた外敵を全て排出し、再び立ち上がった。

 しっかりと掘った穴は埋めて証拠を隠滅する。


 こう考えよう…歴戦の勇者も宿に泊まれない時は野糞していたんだ。そうだ、これは崇高な行いなんだ…。


 苦しい言い訳、誰も聞いてはいないのに一人で取り繕う。この頃、寂しさが溢れ出してくる…、元いた世界では今頃放課後で今日は何して遊ぶか考えている事だ…。

 今を見てみろ…裸に鞄しか持っていない…この姿を…、誰がこうなると予測できるというのだ。そう胸に色々な感情をしまいこみ再び歩み始める。


 木に傷を付けながら進んでいるので前の様に元いた海岸に戻るという事はない。しかし、進めど進めど一向に森を抜けられる気配はない…。

 自分が今この島の何%を踏破できているかもわからない…、全体像もわからないのだ。しかし、進むしかないのだ。


 しばらく無言で黙々と足を進めていると、異質な空間にたどり着いた。

 石畳で何かの祭壇が作られており、文明を感じさせる。


 人がいるのか…?


 恐る恐るその祭壇に近づくが人の気配はない…。というか、ここまでモンゴリアンデスワーム以来、モンスターらしき生物すら見ていない…。


 原生生物はもっといていいと思うんだがな…。森は更に続いているから…もっと奥にいるのか?


 そんな事を考えながら祭壇の奥へ奥へ進んでいく。

 

 私にもわかった…、ある場所から神聖な気が満ち溢れている。祭壇奥にある祠の様なその奥からだ…。

 

 すごいな…。何かわからないが…、あの奥から感じる…俺を呼んでいるのか?。そうだよ、俺はこういうファンタジー展開を待っていたんだ!


 何かに導かれている様な気分になりここまで歩いてきたが間違いがない…。ここに呼ばれていたのだとわかる。軽快なステップを刻みながら奥へ進もうも近づく。


 祠はジャングルの中にあったということもあり、あのターザンごっこをした時のような蔦が絡まり、祠の入り口を軽く塞いでいる。


 素手でこの蔦をどかすのはキツイぞ…。何より痛いんだよ…。


 何かないかと周りを見渡すがそんな都合よく何かあるわけがないのだ。一つ見つけた物といえば祠の壁に刻まれた文字だけだ。そう、読めてしまうのだ…。


 勇者を待つ…って書いてあるな…。それって俺のことじゃん!


 裸に鞄のみの勇者がいてたまるもんか、と誰かがいればツッコミが飛んでくるだろうが、そんな事をしてくれる人間もいないのだ。


 もしかしたら…女賢者とかいるかも知れないな!ちょっと痛いけど頑張るか。

 

 もう頭がやられてきているのだ。少し考えればわかる事だ…ずっと放置されているこの遺跡の様な祠…いたとしても…もう亡くなっているに違いない…。


 ここでやらなきゃ男が廃る!


 蔦にドロップキックをかまして祠の中にダイブする。

 ちょうど祠の蔦が腰蓑のように絡みつき、フラダンスを踊る人の様な姿でになったのも束の間、祠は地下に続いている様でその降り階段で腰を強打し悶絶する。


 ただでは起きん…。腰蓑という装備を手に入れたぞ!


 腰蓑とはいい様に言っているが…6本くらいの蔦が腰からぶら下がっているだけだ。全く隠せていないし、正直チクチクと棘が刺さって痛い。しかし、女賢者に会う(妄想)に裸は失礼だという事で少し我慢していた。

 

 勇者…いま参ります!


 真っ暗な中、地下に向かう階段を踏み違えない様にゆっくりと足を進める。

 その先には吹き抜けで地上から太陽の光が降り注ぐ聖域の様な場所があった。


 け…け…剣かよ!女賢者はどこにいるんだよケンしかあって無いじゃないか。いや美しい剣だけど…、違うんだよ!


 光が集約されるその場所に大剣が突き刺さっている。その横には碑文の様なものが置かれており意味深な文字が刻まれている。


 えーと何々…、勇者…さ…き…は抜ける…。いやいやいや、唐突な下ネタ…はやめろよ!


 俺は男賢者が勇者さきちゃんの事を思い書いた卑猥な文(卑文)なのであろうと思い、蹴飛ばし破壊しておいた…。

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