第5話 エリ臭ー…?

 スライムの形見の瓶を眺めるとその中にはキラキラと光り輝くなんらかの水分が入っている事がよくわかる。


 エリクサーってあれだよな…伝説の回復薬。いや、水分には違いない。


 体が水分を欲している気持ちはすごく理解できる…。しかし、エリクサーだとわかってしまった今、あの考えが脳裏から離れない。


 くそぅ…今、あの…あの…発作がでてくるのか…。


 そう皆も知っているであろうあの有名なエリクサー症候群だ…。もしかするとこれがレアすぎてこれから手に入らない可能性がある…、そんなことを考えてしまうの一種の発作だ。


 いやまだ、水分は我慢できるな…。このエリクサーは一旦鞄の中にしまっておこう。


 あの気持ち悪い蟹が入っていた鞄を拾い上げエリクサーを鞄の中に入れ、鞄を装備した。


 裸に鞄…歴戦の冒険者と言っても過言ではないであろう。

 ゲームでも行き着く先の縛りプレイは裸での攻略だ。それと大差ないので、歴戦という言葉が似合うのだ…と言い聞かせた。


 ここにいる得体の知れない者達はもしかするとゲームのようにアイテムをドロップするのかも知れない。よし水源の確保と同時にドロップアイテムも狙うぞ!


 光明が見えた気がし、浜風でゆらゆらと揺れる男性シンボルを隠すこともせず森の中へ再度足を踏み入れた。


 エリクサーが手に入ったということもあり、今まで感じていた恐怖は半減している。しかし、一抹の不安が頭をよぎる。


 このエリクサーは本物なのか…?


 もし偽物だったら…そんなことを考え出すと、悪い考えの悪循環に陥った。


 一滴…だけなら…。先っちょだけなら…大丈夫だろぅ。


 瓶の蓋を開けて、小指をちょこんと瓶につけて匂いを嗅いだ。


 無臭だ…。薬のような匂いもしない…、水か?


 恐る恐る口に小指を含んだ時にはもう遅かった。

 唾液と反応した瞬間に生ゴミが腐り塾生されたようなアンモニア臭が口の中に充満し、口腔から鼻腔に掛けて駆け抜ける。そして、悶える。


 臭い、臭い、臭い。なんなんだよ、この世界で拾う物大体クセェ!


 エリクサーの瓶のラベルをじっくりと読んだところ、塗り薬と書いてあり、飲用すると口臭の原因になると記載してあった。


 呼吸をする毎に匂いが鼻を通り抜け、嗚咽が出る…、そして涙が溢れてくる…。用法要領は正しく読むべきだと、今までの自分を戒めるのであった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る