第2話 とりあえず異世界きたら言っとけ

 気持ちを鎮めるためにも海を見つめること約30分…、一向に気持ちは落ち着かない。逆に何もしていないとイライラが募ってくる一方だ。


 なんで俺なんだよ…。もっとファンタジーな世界でチートとかさせてくれよ…。ここどこだよ…、こんな世界に飛ばすならもっと屈強な人にしろよ…。

 そんな愚痴が止めどなく溢れる。


 その時一つ思い出した…異世界に転移された時まずやるべきことを…。


 ステータスオープン!!!!


 そうその伝統とも言える言葉を初めてここにきて口にした…。しかし、なんの意味もなく…虚しく地平線の彼方へ声は消えていく。


 なまじ大きな声で叫んだこともあり喉がどんどんと渇くのがわかる。


 もうわかりました…、降参です。神様、誰か出てきてくださ〜い。ドッキリなんでしょ、もういいって!


 もうやぶれかぶれだ…、ではっきりいって帰りたい。財布を捨ててしまったことで身分証明書も無くなり、もしここが外国なら不法滞在で捕まる、そんなことばかり考え現実逃避する。


 そのとき、その声が届いたのか一緒に転移されていた鞄がガサガサと音を立てる。


 もしかして…チートアイテムか!?勿体ぶってないで早くくださいよ、ありがと〜う神様!


 猫撫で声で一人寂しく喋る自分は滑稽であるが、死ぬよりマシだ。今の状況なら神様の足を舐めてもいい、そんな勢いだ。


 地面に置いていた鞄を持ち上げ中身を確認する。


 うわぁぁぁぁあ!カニ…のようなキモい奴が…。ふ…ふざけんなよ…。


 この島にいたカニに似た原生生物がただ鞄に入っていただけであった…。


 そして、不甲斐ない自分に腹が立ちひっそりと泣いた…。

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