オタクに優しいギャルは実在するのか? いざアニメ専門店へ!

えふの

第1話

 20××年、日本のネットや創作物では「オタクに優しいギャル」の存在があふれかえっていた!だが、本当に「オタクに優しいギャル」は実在するのか!?

 その謎を探るべく、一人の男が立ち上がった。


「ハーイ!どうも。私はジョンです」

 彼こそは日本の地方都市に住み、オタクカルチャーを愛する男。

 そんな彼が、一度は会いたい存在、それが「オタクに優しいギャル」だ。


「近年、マンガやアニメ内において、オタクに優しいギャルはよく見かけるキャラクターです。しかし、現実では、まだ私はその存在を見たことがありません」


 彼は目を伏せた。その顔には悲しい表情があらわれる。

「私が学生のころは、オタクカルチャーはあまり市民権を獲得した趣味とは言えませんでした。特に学校のクラスにおけるヒエラルキー上部に位置する、いわゆる陽キャという人たちの一部からは、心無い言葉を言われたこともあります」

 学生時代、彼はオタク趣味をいじられたり、あまつさえオタク趣味を理由にイジメられたことさえあるという。


「しかし、時代は変わりました。クールジャパン! オタクカルチャーは徐々に市民権を得ていき、いまやアニメを観ていることは、恥ずかしいことではありません!」

 彼の目は希望に輝いていた。

「これまでにない過酷なチャレンジになるでしょう。しかし、私はあきらめません!」


 今回は、日本の有名なアニメグッズの専門店へ潜入し、「オタクに優しいギャル」を追います。


「いま、私が向かっているのは、全国に約100店舗あるという有名なアニメグッズの専門店のひとつです。こういった専門店は、私の住んでいる地元にはなかったので、今回初めて利用します」

 電車で移動している彼は、やや緊張した面持ちで語る。

「どんなところなのでしょうか。ワクワクしてきましたね」


 電車を乗り換えること数度、目的地の最寄り駅で降り、スマホで地図を確認しながら、歩いて店へと向かう。すると!

「あ、見て下さい! 見えてきました! あの看板の文字が見えますか!?」

 興奮気味の彼の指さす方を見ると、そこには目的の店の看板が見える。

「最寄り駅から徒歩でこの近さ。これは学校帰りの学生も利用しやすいですね。これは期待できます」


 目的の店の前まで来た彼は立ち止まって深呼吸している。

「フー。やはり初めての入店は緊張します。でも、ここで怖気づいているわけにはいきません。早速、店内へ入ってみましょう」


 店内に入った瞬間、彼の目に映ったものは!?


「ワーオ! 見て下さい! 書籍コーナーです!」

 興奮気味にしゃべる彼は目を輝かせている。

「すごい! 新刊コーナーだけで、こんなにマンガやライトノベルが置いてあります!」

 彼はしばらくマンガやライトノベルを手に取って見ていたが、何かに気づいたようだ。


「あ、あそこにアニメ化作品のコーナーが見えます。行ってみましょう!」

 彼は「絶賛アニメ放送中!」と書かれたポップのコーナーへ近寄っていく。

「見えますか、この光景が。信じられません。これらのアニメ化された原作の本が、全巻平積みされてあります」

 そんなに驚くようなことなのでしょうか。

「残念ながら、私の地元の本屋さんでは、このようなアニメ化作品のコーナーはありませんでした。それが、ここへ来ればすぐに全巻揃えることができます」


 そのとき! 彼の横に人影が!


 学校帰りであろうか。黒髪の女子高生ふたりが並んでアニメ化作品コーナーの前に来て談笑しているではないか!

「ねぇ、この前オススメしたこのアニメどうだった?」

「面白かった! 原作も買っちゃおっかなー?」

 アニメの感想を喋りながら彼女たちは商品を手に取って、その場から離れていった。


「見ましたか。あれはオタク友達です。信じられません。この世に本当に実在していたなんて。時代と場所が違えば、私もあのようなオタク生活をエンジョイ出来たかもしれませんね」

 彼の目は遠くを見ているようだった。

 その目には、ありえたかもしれない学生生活が見えていたのかもしれない。


「リアルで女子高生のオタク友達を見ることが出来ました。幸先がいいですね。これはもしかするとオタクに優しいギャルにもすぐに会えるかもしれません」


 その後も学校帰りであろう学生たちが店に次々と入ってくる。


「人が多くなってきましたね。移動しましょう」

 彼はマンガやライトノベルのカラフルな背表紙いっぱいの棚を横目に移動する。

「すごい量ですね。この書籍コーナーだけで1日は時間が潰せます」


 すると、棚の向こうから男女の声が聞こえてきた。


「――さんは、このマンガのだれが好きなの?」

「あーしの推しはやっぱりこの子かな~」


「聞こえましたか!? すぐに向こうの棚へ移動します!」

 彼は周囲の迷惑にならないように注意しながら、やや早歩きで棚を移動する。

が、しかし!

「もう周囲に人は見当たりません。ちょっと遅かったようです」

 彼は残念な声を漏らす。そして、平積みされたマンガを見渡す。

すると、きれいに陳列されたなかに1冊、微妙にずれて置かれたマンガを発見した。

「おそらく、これがさっき会話していた人が持っていた本でしょう。」

 彼がマンガを手に取る。

「まだかすかに温かい。そんなに遠くへは移動していないはずです」


 どうしますか?

「次はグッズコーナーへ移動します」


 店内の案内板を見て、グッズコーナーへ移動する。

「これは、大量の作品とグッズです。ワーオ! こんな光景は見たことがない。しかも……」

 そこは書籍コーナーよりも人であふれていた。

「女性が多いですね。ざっと見渡す限りお客さんの8割程度が女性でしょうか。信じられない。こんなにオタクカルチャーを愛する女性がいるなんて」


 彼の口元に笑みが浮かぶ。

「いや、嬉しいですね! さすがクールジャパン! オタクカルチャーを愛する人々がこんなにいることを感じられて幸せです!」


 その後、彼はグッズコーナーを1周するために移動を開始した。

「あ、あれは!」

 彼の視線の先には同じキャラクターのグッズをたくさんカゴに入れている女性の姿が見えた。あれはいったい?

「推し活ですね。好きなキャラクターへの愛を形にする尊い行為です」

 注意深くみれば、同じようなことをしている人が散見された。

「おお! ジャニーズ推し活! こうやって彼ら彼女らの愛によって経済が回るのです」


 すると、棚の向こうから男女の声が聞こえてきた。


「――さん、そんなに買って大丈夫なの?」

「バイトしてるから、へーきへーき! あーしの推しへの愛はこんなもんじゃないって!」


「聞こえましたか!? すぐに向こうの棚へ移動します!」

 だが、目の前にはたくさんの女性客がおり、真剣にグッズを選んでいて、容易に動ける状態ではなかった。彼は迷惑にならないように女性客の間を慎重にすり抜けて棚の向こう側へ移動する。

 が、しかし!

「もう周囲にそれらしき人は見当たりません。ちょっと遅かったようです」


 どうしますか?

「もう一度、書籍コーナーへ戻り、その後、グッズコーナーへ移動しましょう」



 だが、この後の捜索もむなしく、その後、件の男女らしき声を聞いたり、人影を見つけることは出来なかった。やがて閉店のアナウンスが店内に流れ始める。


 彼は帰宅すべく店を出て、最寄り駅へ移動する。


「今回は残念ながら、オタクに優しいギャルをこの目にすることは出来ませんでした。しかし、それらしい声を聞くことが出来ましたし、なにより、オタクカルチャーを愛する素晴らしい人々を目にすることが出来ました。これは私の人生にとって貴重な経験です。もしこの企画に次回があれば、次こそはチャンスをつかみ取ります!」


 そう満足げに語った彼は、今回買い込んだマンガやグッズでパンパンになった手提げ袋を手に、駅の雑踏の中へ消えていった。

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オタクに優しいギャルは実在するのか? いざアニメ専門店へ! えふの @robaa-mimi

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