第11-4話:タカフミの使命

 すぃーっと流れていくマリウスの後姿を、タカフミが呆然と見送っていると、


「タカフミくぅぅぅん」

「おわっ!?」

 耳元で、低く悲痛な声がして、驚く。


 白い肌を青褪あおざめさせて、幽霊のような顔をしたマルガリータが、すぐ後ろに立っていた。


「何を吹き込んだんですか!?」

「いや、自分は何も・・・」

 会話の内容を伝える。

 軍の一員である限り、駒であることからは逃れられない、云々。


 マルガリータは、深いため息を吐いた。

「赤ん坊の頃から一緒に育った幼馴染を、悪くは言いたくないですが。


 あの子はね、

 対戦すれば、骨は折る、内臓を潰す。

 自分の怪我にも気づかずに、あたりを血まみれにする。

 体も髪もちゃんと洗わない。部屋も散らかり放題。


 けれど、実技もお勉強も首席なので、

 教官と上官と軍団長からは大事にされるという、

 残念で迷惑な出来過ぎ君なんです!」


「・・・力いっぱい、ののしってますよ」


「そんな子が帝位を目指すなんて・・・

 あの子の足跡には、

 死と嘆きしか残らない」


 マルガリータは、顔を手でおおって、さめざめと泣いた。


「そして、一緒にいる私たちは、巻き込まれて、

 銀河中から蛇蝎だかつのように嫌われて、

 ご飯に招待されなくなる!(涙)」

「やはり、最後はそこに行きつくんですね」

「なにその! 悟ったような爽やかな表情は!?」


 実際、タカフミは、胸のつかえがおりたような、穏やかな表情で、マリウスが消えた通路を眺めていた。


「ようやく、自分の使命が分かったんです。

 自分の使命は、単に司令を助けることじゃない。


『マリウスを、虐殺者にしない』


 このために、一緒に行くんです!」


「呆れた! 普通、参謀役って、

 勝利に貢献するとか、覇業を助けるとか、言いそうですけど」


 そこでマルガリータは、ふふふ、と笑った。

「でも、そういうの、タカフミらしくて、いいですね」


 そして、左手のパネルをかざした。

「さて! 気を取り直して。

 マリウスが何を見たのか、調べましょう」

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