第11章:託されしものたち

第11-1話:コロニーと聖墓

 テロン宇宙軍は、ザッカウ-1を奪うと、直ちにコロニーを攻撃した。

 周辺に浮かぶ輸送コンテナ(の外箱)を、衝突させたのである。

 星間航法船を失ったクロード家は、その攻撃を阻止できなかった。


 発電プラント2基を、どちらも破壊されたのが、最大にして致命的な被害だった。

 他にも何カ所か、コロニー外壁に穴をあけられた。


 大慌てで空気漏れを塞いでいる間に、帝国の探索艦隊がやって来た。

 だが、大破したザッカウ-1を発着ポートに置くと、助けを呼ぶ間もなく、さっさと出発してしまう。

 コロニーの異常には気づかなかったらしい。

 あるいは、他に気になることがあったのか。


“くそー、マリウスめ、せっかちな奴だな”

 ダハムは内心毒づいたが、どうしようもない。


 必死の努力で空気漏れは止めたが、コロニー内の気圧は大幅に低下。

 発電プラントは、根こそぎ吹き飛ばされており、再建しようがない。

 電力喪失で、酸素発生機も止まってしまった。

 気温も、徐々に低下していく。


 やむなく、コロニーの6割を放棄。

 住民を集め、残された電力を節約する。


 「窒息」「凍結」「飢餓」の3人の死神が、大鎌を振りかざして、コロニーの周りを飛び回っている。そんな状況だ。

 それでも。

“なんとかなるさ!”

 ダハムは努めて、明るく振舞った。


 想えば。民の生活を改善するために、妻も娶らず、無茶を繰り返した半生だった。

 駅MIを騙して侵入したり、

 行先も分からないワープゲートに突入したり(無賃乗車とも言う)。

 行く先々で危険があったが、乗り越えてきた。

“俺の代で、クロードの歴史を、終わらせてなるものか!”



          **



 探索艦隊がコロニーに到着。

 発着ポートに機動歩兵が展開して、周囲を警戒。

 マリウスは、マルガリータ、タカフミを連れて、聖墓へ向かった。


「マリウス、そこに立って。

 はい笑って。うーん、無理か~」

 マルガリータは、マリウスを女神ウルカ像の脇に立たせると、記念のツーショットを撮った。


 それから3人で聖墓の扉の前に立つが、開かない。

 何の変化もない。


 タカフミとマルガリータは、再び女神像の前に戻った。

「やっぱり儀式では盛り過ぎでしたよ。

 タカフミがワガママ言うから!」

「くっ」


 1人残されたマリウスは、扉を見つめる。

“何も起こらないのか?”


 すると、黒い扉の上に、文字が浮かび上がった。

「44,297,342、入れ」

 音もなく、扉が左右に開く。

 内部から、白い冷気が、外へと漏れ出す。

 マリウスが足を踏み入れると、背後で再び、扉が閉じた。

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