第7-10話:地球②―堂島、暴走する
タカフミは、前も隠さずに、ドアを開けて出てきた。
堂島を見て驚愕する。
「いや、これは誤解だ。いや事故だ。いや、正当な行為なんだ」
タカフミも、最初は遠慮した。
さすがに一緒はまずいと思い、他の隊員を締め出した。
一人でさっと済ませるつもりだったのだが。
「外国士官が、風呂を占拠している」
という通報で飛んできたジルに、叱られた。
隠したりすると、逆に奇異の目で見られるので、自然体を心掛けている。
なるべく、ガタイがいい機動歩兵たちの傍にいて、目立たないようにしていた。
結果的に、ジルやスチール、ハーキフと一緒のことが多い。
タカフミは、堂島が怒っているのかと思って、言い訳した。
しかし、堂島の目から涙が流れるのを見て、驚く。
堂島は、目を伏せて、小刻みに震えていた。
果てしない悲しみに、涙がこぼれる。
「よくも・・・よくも・・・」
それはすぐに、激しい怒りへと変わった。
拳を握り締める
「よくも私の初めてを奪ったな!」
「俺が!? いつ!? お前、頭は大丈夫か?」
「私が初めて見る、
マリウス様のと決めていたんだ!」
「そんな無理筋なこと、勝手に決めるんじゃありません!
だいたい、生って・・・」
言い終わる前に。
「天誅!」
堂島の声が、更衣室に響き渡る。
タカフミ、身を捩って危うく回避。
ぼごっ、という低い音をたてて、ロッカーが拳の形にへこんだ。
やばい。こんなのを喰らったら、良くて重体だ。
すると、周囲の隊員たちが、飛び掛かって堂島を押さえつけた。
『やめろ! あいつは士官だぞ』
『懲罰になっちゃうよ!』
必死の表情で、堂島を引き留める。
「放して! 殺しはしない。潰すだけだ」
「なお悪いわ!」
タカフミは素早くスラックスだけ穿くと、
「こいつ、腹が減って気が立っているようだ。食堂に案内してくれ」
隊員たちに頼むと、そそくさと立ち去る。
堂島は、隊員たちに抱えられるようにして、食堂に向かった。
風呂に向かっていたマリウスとマルガリータは、堂島の叫び声を聞いた。
「あの声は、堂島か。なんだか・・・あいつ、ちょっと怖いよな」
「マリウスが怖いですって!?」
「なぜか、身の危険を感じるんだ。理由はよく分からないが」
マルガリータは、食堂の方向を見つめた。
マリウスの暴走を止められるのは、ジルか、タカフミだろうと思っていたが、もしかしてそれは、堂島なのではないか。
“いつか、あの子が、銀河の歴史を左右する時が、来るかもしれない”
それまで、堂島とは仲良くしておこう、と思うマルガリータだった。
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