第7-3話:アニクの館③―再会

 アニクとの話し合いが終わり、大使館に引き上げようとするダハムを、

「今日は遅い。食事を用意した。泊っていけ」とアニクが引き留めた。

 ダハムは厚意に甘えることにした。

 アニクは奥方、ダハムはアユーシを伴い、会食。


          **


 夜。アユーシが客室で休んでいると、ドアがノックされた。

 ドアスコープはなかったので、ドアを細く開けると、若い軍人が立っていた。

 どなたですか、と言いかけて、息を呑む。

 その顔に、見覚えがあった。


「アユーシだね? 入れてくれ」

 ドアガードを外すと、すっと入って来た。無言で対峙し、見つめ合う。

「なるほど。髪を伸ばした私と、そっくりだ」

 そう言って微笑む。

「もしかして、あなたは・・・私のお姉さんですか?」

「そうだ。双子のね。会えて嬉しいよ!」

 アユーシが胸の前で組んだ手を、シュリアの両手が包み込む。


「小さい頃の思い出で、いつも、誰かと一緒だったんです。

 あなただったの?」

「それは間違いなく私だよ。本当に、懐かしいな!

 私の名はシュリア。テロン宇宙軍に所属している」


「母は元気か?」

 シュリアが尋ねると、アユーシは目を伏せた。

「私が8歳の時に、亡くなりました。事故で」

「まさか! そんな! 会いたかったのに・・・」

 シュリアはがっくりと肩を落とす。アユーシは、遠慮がちにその肩に触れた。


「母は私のことを、何か言っていなかったか?」

「一度だけ、姉がいるの? と聞いたら、そうよ、と答えてくれたけど。

 母は、テロンにいた時のことを、話したがらなくて」


 アユーシはシュリアをしげしげと眺めた。

 髪は、耳の上で短く刈り込まれていて、男の子のようだ。

「父の意向でね。男として軍に勤めている」

「お父さんって、どんな人なの?」

「父は・・・ドゥルガー領の郷士さ。地方の有力者だ。若い頃は、宇宙軍に勤めていたんだ」

 シュリアは、養父のことだけを話した。


 シュリアは、話題を母に戻す。

「写真はないのか?」

「今は持ってない。コロニーに、少しだけあるけど」

「見せてくれないか。ぜひ!」

 もう一度、アユーシの手を掴む。


「アニク様が、クロード領に行くと聞いた。恐らく私も同行する。

 その時に、見せて欲しい。アユーシ、君の部屋に見に行くよ。いいかい?」

 アユーシは、頷いた。


 シュリアは、耳の上の自分の髪を、指で梳く。

「最近、女の恰好をすることがあってね。

 女性として生きるのも、楽しいと思ったんだ。アユーシはどうだ?」

「クロードでは、男も女も、そんなに変わらないわ」

 どっちも、変わらず、地味だ。

「さすがドゥルガー家ね。軍服ですら、随分と綺麗で立派だわ」


「アユーシ、入れ替わろう!」

 シュリアが唐突に提案した。

「はぁ!?」

「入れ替わろう! きっとチャンスがあるさ。

 君はこの服で、男のシュリアとして。

 僕はその服で、女のアユーシとして。しばらく生活したら、面白そうだ!」

 アユーシは苦笑した。

「ええ。機会があったらね」

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