第6-7話:説得

 マルガリータは次の会談に、伝統衣装ではなく、自分の青い制服で登場した。

 おや? と意外そうな顔をする貴族たち。


「私たちは、心から、略奪を止めて頂きたいと思っています。

 私たちの本気を示すために、

 新しい月を、打ち上げます!」


 その日、アニクは欠席していた。出席者は、リークァイ、ダハムと、北方の10家。

 全員、マルガリータは、冗談を言っていると思った。


          **


「私、忙しいんですよ!」

 クロード家のコロニーがある、女神の星恒星系に呼び出されたカーレンは、ぷりぷりと怒っていた。

 直径100キロメートル超の小惑星を、惑星テロンまで、3日かけて曳航した。


「次の駅の建設予定も入っているんですから!」

 そう言い残すと、さっさと太陽系に戻って行った。


          **


 テロン側が受けた衝撃は、大きかった。

 直径25キロメートルの円盤が出現した時点で、かなり動揺したのだが、

 小惑星が、見る見るうちに惑星に近づくのを見て、恐慌状態になった。


 カーレンは、ラグランジュ点に、小惑星を置いていった。

 ラグランジュ点は、3つの天体が、安定して滞在できる位置。

 神託の月も小惑星も、この位置なら、安定して回り続けることが出来る。


「大丈夫ですよ。力学的に安定していますから」

 マルガリータは、のんきに説明した。本気を示しただけのつもりだった。

 だが、テロン貴族たちは、正しく理解していた。

 逆らえば、落とすという、脅しであることを。


          **


 こうして、テロン政府は帝国に対して、以下の事項を正式に表明した。

 ・これ以上、輸送コンテナの略奪を行わない

 ・クロード領が、略奪に頼らず存続できるように、必要な支援を行う

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