第3-4話:見せてあげましょう

 マルガリータが、桟橋外部の映像を呼び出した。空中ディスプレイに星々が映る。

「ちゃんとカメラは動いてますね」


 タカフミは星の位置を確認した。

 ワープアウトして、タカフミが真っ先にやったのは、星の観察だった。

 太陽系で見慣れた星座は、そこにはなかった。一等星の位置が、まるで違う。

 地球から遠く離れた地点に来たことを確認して、感動に震えたことを思い出す。


 映像を操作してみた。確かに、この恒星系での一等星が見えている。

「あれ? ちょっと待ってください」

 タカフミは、もう一度ディスプレイに触れて、全天をなぞるように動かした。


「ポッドは?」

 3人が乗っている、白いポッドの姿がない。

「あれ? 映らないですか?」

 マルガリータも、映像をすりすりとなぞって動かす。


 それから左手のパネルに触れて、ポッド内の隊員を呼び出した。

「そこにいますか?」

「いますよ~」

 隊員が腕輪を顔に寄せて、通話に応答した。


「うーん。なぜ映らないのでしょう?」

「もしかして、カメラからのデータが、偽装されているのでは?」


 2人は管理棟内を捜索した。

 人形の置かれていた部屋の他に、倉庫やトイレ、給水施設があり、その奥に制御室がある。


 制御室内の端末から、数本の線が伸びていた。床の上の黒い箱に繋がっている。

 箱からは外部にも線が伸びていた。


「この箱が怪しいですね」

「えー、こんなの、誰がいつ?」

 マルガリータは床の箱と、左手のパネルを交互に眺めて、何か調べた。

 それから、誰かに電話をかける。


「もしもし? オラティスの駅担当の方?

 ええ、はいどうも。私は帝国情報軍のマルガリータと申します。

 はい。おかげさまで。隊員たちもとても喜んでます。


 え!? 踊仔馬亭で新作メニュー!?

 それ今日の夕食で頼めます? 予約制?

 じゃあ6人でお願いします。はい、連絡先は私で。

 取れました? あー良かった。

 そうですね。ええ。本当に。

 では。


 はっ! ちょっと待って!

 すみません、一つお願いがあってですね・・・」


 通話が終わると、ポッドの隊員をもう一度呼び出して、「黒曜石」に行くように指示を出した。


「黒曜石・・・士官専用ですよね? 隊員が入っても大丈夫ですか?」

「仕事ですから大丈夫。それに今は誰もいませんから」


 20分後、ポッドの隊員が、黒曜石のバーテンダーを連れてきた。

「下手に移動させると、自壊するかもしれないので」

 そう言って、マルガリータはバーテンダーの手を取った。

「お店の人に電話して、この子を貸してもらいました。

 箱を調査してもらいます」

「バーテンダーでしょう? 出来ますか?」

 マルガリータは、ふふん、と自慢するように胸を反らした。


「情報軍のMIが、この子に指示をして、調査させます。

 場合によっては、この子の制御を奪って、筐体を直接操作します」

「自律で動いているロボットを乗っ取るって、すごくないですか!?」

「まあ、そんな芸当が出来るMIは稀ですけどね~」


「情報軍のMIですか。名前はあるんですか?」

「カサンドラ、です。

 まあ、楽しみに待っててください。

 見せてあげましょう。情報軍の実力というものを」

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