第1-2話:輸送コンテナ
「ううう」
4人に見つめらて、タカフミは、大きな体を縮めて唸る。
タカフミは、日本の航宙自衛官である。「駅」建設に、土木技術で協力した。
「自由に使える駒」として、マリウスと一緒に探索の旅に出ることを希望した。
そして、観戦武官として、艦隊への同行を認められたのだ。
司令補佐という名目で、マリウスの仕事も雑務も押し付けられる立場。
探索計画も立案させられ、見つからない責任も追及されているという訳である。
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「あの、今更ですけど」とタカフミが質問した。
「他の部隊が、すぐに探索に行かなかったのは、なぜなんでしょう?」
「それは、優先度の問題だ」とマリウスが答えた。
「優先度? どういうことですか?」
「それはですね」
マルガリータが説明を引き継ぐ。
「私たちの物を奪っていく悪い人たち、言わば『海賊』が、他にもたくさんいる、ということですよ」
「星の人」は、駅を建設した無人の恒星系から、資源を集めている。
条件の良い惑星があれば、農業惑星として食料も生産するし、恒星のエネルギーを、超電導バッテリーに蓄積している。
こうして獲得した膨大な資源が、輸送コンテナに格納され、駅から駅へと、リレー方式で帝国中枢へと回収されているのだ。
「年間1億個以上の輸送コンテナが流れているのですが、途中でなくなっちゃうコンテナがあるんです。
喪失率は0.01%くらいですけどね」
タカフミは、桁が大きな数字を計算するのが苦手だ。
紙のノートを取り出して、0を並べていく。
「0.01%って小さく聞こえますが、年1万個以上なくなってますよね?」
「大量に略奪する、大胆に悪い人たちがいるんです」
艦隊派も、手をこまねいている訳ではなく、海賊対策の部隊を派遣して、取り締まりを行っている。
だが、100万の恒星系に跨る銀河ハイウェイは、あまりに広大だ。
大規模な海賊行為への追討が、優先される。
襲撃があったとはいえ、速攻で撃退され、略奪被害もなかった太陽系の事案は、後回しにされたのだった。
「次の手を考えるんだ、タカフミ。
駒として活躍するためには、まず戦う相手を探さないと」
そう言い放ってから、マリウスは右頬を撫でた。少し慌てたように言い直す。
「いや、駒と言ったが、タカフミは我々の一員、仲間だ。
使い捨ての駒だなんて、考えてないぞ。
私が言いたいのは、その、
とにかく相手を探さないと、任務を達成できない、ということだ」
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