第1-2話:輸送コンテナ

「ううう」

 4人に見つめらて、タカフミは、大きな体を縮めて唸る。

 タカフミは、日本の航宙自衛官である。「駅」建設に、土木技術で協力した。

 「自由に使える駒」として、マリウスと一緒に探索の旅に出ることを希望した。

 そして、観戦武官として、艦隊への同行を認められたのだ。


 司令補佐という名目で、マリウスの仕事も雑務も押し付けられる立場。

 探索計画も立案させられ、見つからない責任も追及されているという訳である。


          **


「あの、今更ですけど」とタカフミが質問した。

「他の部隊が、すぐに探索に行かなかったのは、なぜなんでしょう?」


「それは、優先度の問題だ」とマリウスが答えた。

「優先度? どういうことですか?」

「それはですね」

 マルガリータが説明を引き継ぐ。

「私たちの物を奪っていく悪い人たち、言わば『海賊』が、他にもたくさんいる、ということですよ」


 「星の人」は、駅を建設した無人の恒星系から、資源を集めている。

 条件の良い惑星があれば、農業惑星として食料も生産するし、恒星のエネルギーを、超電導バッテリーに蓄積している。

 こうして獲得した膨大な資源が、輸送コンテナに格納され、駅から駅へと、リレー方式で帝国中枢へと回収されているのだ。


「年間1億個以上の輸送コンテナが流れているのですが、途中でなくなっちゃうコンテナがあるんです。

 喪失率は0.01%くらいですけどね」


 タカフミは、桁が大きな数字を計算するのが苦手だ。

 紙のノートを取り出して、0を並べていく。

「0.01%って小さく聞こえますが、年1万個以上なくなってますよね?」

「大量に略奪する、大胆に悪い人たちがいるんです」


 艦隊派も、手をこまねいている訳ではなく、海賊対策の部隊を派遣して、取り締まりを行っている。


 だが、100万の恒星系に跨る銀河ハイウェイは、あまりに広大だ。

 大規模な海賊行為への追討が、優先される。

 襲撃があったとはいえ、速攻で撃退され、略奪被害もなかった太陽系の事案は、後回しにされたのだった。


「次の手を考えるんだ、タカフミ。

 駒として活躍するためには、まず戦う相手を探さないと」

 そう言い放ってから、マリウスは右頬を撫でた。少し慌てたように言い直す。


「いや、駒と言ったが、タカフミは我々の一員、仲間だ。

 使い捨ての駒だなんて、考えてないぞ。

 私が言いたいのは、その、

 とにかく相手を探さないと、任務を達成できない、ということだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る