第2-2話:灰と緑の激突
歩道に、シャトルバスの停留所があった。棒が1本立って、バスのマークが取り付けられている。
何人かが、腕輪を叩いた。プッシュ型のメッセージがある場合は、音声で指示しなくても、触るだけで表示される。
小型の空中ディスプレイが投影され、時刻表が表示された。
「次のバスは10分後だ」
一人が言う。
「街まで大した距離じゃない。歩こう」
スチールの言葉に、隊員たちの異論はなかった。
灰色の集団が歩き出す。
道が川と交差する。川にかかる、幅広のアーチ橋を渡る。
後ろからシャトルがやって来た。白と青の明るい塗装で、広告らしきものが印刷されているのが、とても賑やかに見える。
シャトルの車体は、地面から20㎝ほど浮いた状態で、音もなく滑っていく。
追突防止のために「ピポン、ピポン」という音を流しながら、のんびりと機動歩兵たちを追い越していった。
シャトルが通り過ぎると、向こう側の歩道に、緑色の制服を着た一団がいた。10人ほど。見慣れない顔ばかり。彼らも橋を渡りだした。
「おい、よその『緑色』がいるぜ」とギリクが言った。
「相変わらず、暑苦しいカッコをしてるな」
そう応じながらも、ブリオはちょっと心配になった。
性格の荒いギリクが、「緑色」の誰かを泣かせて、休暇がフイになるのではないか、と。
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「星の人」の機動歩兵は、鎧や人工重力(個人携行型)を用いて、文字通り「機動的に」活動する兵科である。その身を銃火に晒しながら、敵陣に侵攻する。
敵を殲滅する任務を帯びることが多く、近接戦闘を生き抜く力が要求される。
そのため機動歩兵の隊員は、総じて体格に優れている。体力・腕力・胆力が彼女たちの身上だ。これらを兼ね備えなければ、隊員に選ばれることはない。
勉強は得意ではない。というか、勉強しない(マリウスのような例外もいるが)。
一方、艦隊派は、艦船の運航を主任務とする集団である。
対艦戦闘や地上砲撃といった戦闘行為も行うが、「技官」としての側面が強い。
当然、かなり理数系に強くないと、なれない兵科である。
そして、艦隊派こそ帝国の運営を支えている、という自負がある。
「星の人」の領域は、銀河ハイウェイの伸展に伴い、百万の恒星系に広がる。
どんな軍事活動も、艦隊派が部隊を運ばなければ、始まらないのだ。
そんなわけで、プロ意識も、プライドも高い集団を形成している。
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機動歩兵たちは、わざわざ橋を横切って、「緑色」の方に寄っていった。
艦隊派は、喧嘩のような「近接戦」を、非効率な行動と見下す傾向がある。
(それが、機動歩兵にとっては「びびっている」ように見える)
なので、艦隊派は立ちどまって、自分たちが通り過ぎるのを待つだろう、と思ったのだ。
ところがこの「緑色」は、雰囲気が違った。
まったく臆することがない。
そのまま双方が歩き続け、ついに灰と緑の集団が、激突した。
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