2章 獣人族の村へ
11話 どうやら新たな話が始まるらしい
話し合いが終わり2人を寝かした場所へと向かった。
「あっ、アシュだ。おはよ」
扉を開けて中に入るとサチが完全な状態で起きていた。
「サチ起きていたか。…レンはまだ寝てるのか?」
あり得ない事だと思いながらサチに聞く。すると、
「お兄ちゃんはね…」
とサチがベットの隅を見た。そこには小さくなり震えているレンの姿があった。
「おい、レン何で震えているんだ?」
「怪物が…うぅ、怪物が…」
駄目だ、俺の話を聞いてない。
「サチ、何があった?」
「うーん、なんかね。殺気に近いものを感じたの私たちを一瞬で殺すような」
…あぁ、エメルの殺気がここまで飛んで来たのか。確かに今はかなりの力の差だからな、あの殺気に怯えるのは仕方がないだろう。しかし、そうなると1つ疑問が残る。
「サチは大丈夫だったんだな」
レンは駄目でサチが大丈夫だったことだ、俺の中でのレン・サチの精神面での評価はサチの方が高いのは確かだ。だからと言って、サチが平気な理由にはならない。
「うん。精霊さんが守ってくれたんだ」
精霊はそんな事が出来るのか…まぁ、まだ分からない事ばかりだから出来ないという確証も出来ない、おいおい調べていくとしよう。
「なるほどな。もっと聞きたいことはあるが先の用事を済ませるとしよう。レンもさっさと意識を戻せ」
とレンにチョップを入れこっちに意識を戻させた。
「早速、本題に入るが。今からお前らの故郷『ホムラ村』に行こうと思う」
獣人族の村、正式名『ホムラ村』この名前は地図には乗っておらずエメルからつい先ほど聞いたものだった。
「…それはお母様の所へ行くという事だよな」
最初に反応するのは先ほどまで震えていたレン
「あぁ、そうだ」
こいつらの母親サレンミルに会いに行きこの2人を貰う。これは俺の計画において必要な事の1つだ。
「1つお前たちに聞きたいことがある。私は最初お前たちの意思を尊重すると言った。しかし、今私はお前たちを私のものにしようとしている。この愚かな私の行いを受け入れてくれるか?」
それに対しレンは言う。
「お前に付いて行くなんて絶対に嫌だね」
そうだな、レンならそう言うだろう。
「サチはどうだ?」
「うーん。私は…アシュと一緒に居たらきっと面白い事が起こるだろうし。私はアシュと一緒に居ようかな」
とサチは肯定の意思を見せてくれた。
「ありがとうな、サチ」
「おい、サチ。本当にそれでいいのか?」
サチの判断に不満をぶつけるレン
「うん。私が決めたことだから」
しかし、サチはぶれない。サチの固い意志には感謝しかない。
「アシュ…なんか遠いな」
と突然サチが何かに悩み始めた。
「突然どうしたんだサチ」
「いやー、これからずっと一緒に過ごすから呼び方を変えようかな?って思って」
呼び方が変わっても意味はないと思うが
「アシュポン…」
「それは辞めてくれ」
前言撤回、呼び方は大事だ。
「こいつの呼び方なんて何でもいいだろ」
レンにその言葉は過去の自分を見ているようだ。そこで俺は
「じゃあ、レンを呼ぶときこれからレンチンって呼んでやろうか?」
「…ごめんなさい、元の呼び方で呼んでください。俺は移動の準備してるので呼び名が決まったら呼んでください」
レンの反省姿というのはどうにも見たいとは思わない、調子が狂うと言うのが正解だろうか?
「アシュくん…うん、これが一番距離が近いかも」
シンプルイズベスト 結局はエメルと同じ呼び方に落ち着いている。
「呼び名決まりました?」
「お兄ちゃん、何でそんなにかしこまってんの?気持ち悪いよ?」
「うっ…」
急に毒舌になったサチ、彼女の中で何があったというのか、俺には想像も付かなかった。
「さぁ、アシュくん。さっさと、行こう」
「お、おう」
なんか最初に比べてレンの姿が小さく見えるのは気のせいではないはず。そしてサチのその姿は企画の製作途中で辞めると言い出した社員を裏切り者とし切り捨てた昔の上司によく似ている。
昔話はこの程度にしておき、俺は
目的地は獣人族が住む村『ホムラの村』ゲートを出すポイントはロストレイン王国を基準とし南西に位置する谷の近くの森に移動する。
「お兄ちゃん、早く行くよ」
「はい」
そうして開いた
「アシュ君‼」
俺の事を君付けで呼ぶ2人目の人物エメルが部屋に飛び込んできた。
「どうしました?エメル様」
「これ、渡しとくね」
そして、エメルは俺に木の球を渡した。
「絶対に役に立つから」
「わざわざ、ありがとうございます」
この木の球が何の役に立つか見当もつかないが獣人のエメルが言うのなら間違いないだろう。
俺は今度こそ
「絶対に生きて帰ってね」
え?
その言葉を最後にエメルの声も聞こえなくなり俺の目の前には森と岩肌が広がっていた。
木のいい香りと心地よい川の音と共に俺の新しい話が始まったのだった。
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