10話 どうやら俺の次の仕事は決まったらしい

「あの双子をどうする気だ?」

「彼らの身体能力は大体わかりましたから…彼らが元の場所へ帰りたいと言うのであれば…」

「お前がどうしたいのか聞いているのだ」

まさか、父からそこまで踏み込んでくれるとは感心した。

「…彼らは確実に強く、優秀な人材になります。だから、手に入れたいと考えています」

だから、俺も本心で答える。すると、しばらくの静寂が訪れる。

そして、静寂を最初に破ったのは父…では、なく

「ねぇ、アシュ君」

デュアしてんのうの獣人、エメル・サイリだった。

「どうしました、エメル様」

お互い笑顔だがエメルの声色が違う。これは怒っているな。

「強くなるって言ったけど、それは私よりも?」

俺が言った事を気にしているようだ。でも、正直…

「…勿論」

嘘をつくつもりはない。必ずあいつらはエメルどころかこの四人よりも強くなれる。

「そっか。楽しみにしてるね」

俺の言葉が嘘かどうか図ったのか?まぁ、何せ怒りを抑えてくれて良かった。正直、エメルと戦闘をしてもお互い痛手を負う事になっただろうから。エメルが本能だけで戦うタイプでなかった事に感謝だな。

「話は終わったか?」

「はい。魔王様」

「では、アシュよ。お前が次に取る行動はなんだ?」

2人を手に入れる為にどうするのか。という事か。

「あの子達を連れあの子たちの母親に会うつもりです」

母親のセリフから獣人族が暮らす村の位置は分かったつもりだからな。

「そうか、サレンミルに会うつもりか…」

「わかるのですか?」

俺が知っている監視魔法でも音までは拾えなかったと思ったのだが。

「あぁ、あの2人は彼女によく似ているからな。一目見て分かったよ」

俺は名前しか知らないが父は本人に会ったことがあるようだ。

「懐かしいな。エメルもそう思うだろ?」

「はい、そうですね。250年くらい前ですね」

何となく読めたが念のために聞いておこう

「お二人は何かあったのですか?」

「あぁ、これは本に乗ってないからなお前が知らないのも当たり前だろう。まず、エメルがデュアの一番最後に入って来たというのは知っているか?」

「いいえ、知りませんでした。ですが、確か…ロズ様(悪魔族)リフォ様(サキュバス…淫魔族)レル様(岩人族)エメル様(獣人族)の順番で国を滅ぼしに現れたというのは知っています?」

「…あぁ、そうだ。実際その順番で俺が勧誘している。…いや、エメルを勧誘はしていなかったか」

そして、父は語る。

「エメルに出会ったのは俺とロズが森に囲まれた国を見に行った時の事だった」

森に囲まれた国となると『ウェビニア』か『サンブーン』のどちらかだろう。

「エメルは狂暴化し暴れていたんだよ。後に聞いたが病の一種だったそうだ。そんなエメルを2人で無力化したのが最初の出会いであった」

「あの時は本当に…やばかったですね」

はっはっは、とロズが笑っているが目が笑っていない、何かトラウマがあったのだろう。

「うぅ…恥ずかしい」

そして、エメルは顔を赤くし手で顔を覆っていた。

「まぁ、その後エメルを鎮静化し、その恩としてエメルは魔王軍に入り、ロズに大怪我を負わしたことからデュアに入ったんだ」

ロズのトラウマ判明

「そして、ある日。エメルが言ったのだ。獣人族の長に会って欲しいと」

200年前の獣人族の長は…記録が無いな。

「サレンミルはその長の娘だ。彼女は俺が長と話そうとすると襲ってきたのが彼女だ。その時は、エメルが居たから何とかなったが。居なかったらまずかっただろう」

それがエメルとサレンミルとの過去の話か。全くと言っていいほど情報が無いな。ただ、喧嘩っ早いという事が分かっただけじゃないか。

「そうだったんですね。教えてくださりありがとうございます」

「あぁ、大丈夫だ。ところでアシュよ。お前はどうやって獣人族の村に行くつもりなんだ?」

サレンミルの言葉からある程度の推測を付け10か所程空間転移ゲートを出すつもりだ、と言おうとしたが父から良い情報を得る

「分からないのであればエメルに案内させるが」

当てずっぽうで探すよりも効率が良い。正直、この案は乗る以外はないのだが

「それはエメル様はよろしいのでしょうか?」

あの後だから何を条件にされるか分からない。決闘で勝ったらとか言われれば終わりだろう。

「うーん、本当は獣人が主と認めた者を同伴で案内するものなんだけど。…まぁ、アシュ君だし地図の何処にあるかを教えるだけならいいよ」

同伴は許されないようだ。

「同伴は無理なのかエメルよ」

「サレンミルに実力差を見破られて殺されますよ」

エメルと俺の実力はあまり変わらないと思うのだが…まぁ、良いだろう。

「よし、場所だけ教えてやれエメル」

そうして、俺はエメルから獣人族の村の位置を聞いた。場所は俺が考えていた6つ目の場所であった。

「では、太陽が完全に登り切ったころ。あの2人と共に獣人族の村に行きたいと思います」

これが俺の次の仕事『2人を仲間にする』の始まりであった

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