9話 どうやら仕事は一瞬で終わるらしい

3日目

日が昇り始めた時刻

「おい。レン起きろ」

俺は寝ているレンを起こす。

「…ん。なんだ?」

と言い目をこすりながらレンは体を起こす。

「今から魔王城に帰るぞ」

と俺はレンに言う。本当は起こさずに2人を抱え連れて行きたかったのだがレンが確実にうるさくなると判断し起こしたのだった。

「そうか。サチはどうするんだ?」

意外にも驚かず冷静に対応するレン。

「私かお前が担いで連れて行く起こすのは可哀そうだからな」

と俺は毛布でサチを包む

「分かった。サチは俺が運ぶ」

と言いレンはサチを持ち上げる。そして、俺たちは宿を出た。


宿を出て朝方で人の気配が無く静かな大通りに出たときレンが口を開いた。

「お前、何か用事があってこの国に来たんじゃないのか?」

「あぁ、その用事なら今から終わらせる」

俺の本当の用事、国を落とす。そして、その為に俺がやることは…

水の弾丸ウォーターバレット

指先に水を圧縮させ銃の弾のように発射する魔法。コントロールが効かず真っすぐにしか飛ばない。だが、速度、威力、魔力消費の少なさはどの魔法よりも優れている俺がこの3日間で作り出した魔法だ。狙いは魔眼で見て城の中心の魔力障壁が馬鹿みたいに張られてる場所、恐らく大量の魔術師を使い暗殺防止に張られたのだろう。だが…

「発射」

俺の水の弾丸ウォーターバレットはそんな物じゃ防げねえよ

小さな水の弾が指から放たれ城壁を貫通し、魔力障壁を貫通し、また城壁を貫通する。

「よし、帰るか」

魔眼で見た限りきちんと魔力障壁の破壊と王の暗殺を確認した。それにしても目に魔力を込めるだけで壁を透視出来る魔法というのは便利なものだ。子供の頃の俺を褒めてやりたい。

「あぁ、なんかもう驚く元気もねえわ」

と眠そうなレン。俺はレンを早く寝かせる為空間転移ゲートを出し魔王城へと移動した。

「おぉ、お待ちしておりましたよ。ロイ様」

空間転移ゲートを通り王座の間に出ると俺が帰ってくるのを予測していたようにロズがいた。なので、

「ロズ様、戻ってきて早々悪いのですが子供たちを寝かす場所はございますか?」

と無茶ぶりを言ってみた。すると、

「えぇ、こちらへ」

と対応されレンとサチをふかふかのベットに寝させることが出来た。

そして、王座の間に戻り

「ただいま戻りました。父さん」

と跪き、魔王デュアしてんのうに仕事の報告を行う事にした。

「ロイよ。よく戻った。早速だが、報告を頼む」

報告か…正直する必要はないと思うが

「はい、私ロイは父から受けた仕事、国との共存と征服を果たす為、あの国の王を殺してまいりました」

「うむ、そうだな。その一連の光景は見て居ったよ」

やっぱり、何か監視出来る魔法で俺を軽く見てたか

「まず、一つ目の質問だ」

さて、魔法の事か?それとも王様を殺したことか?

「何故、王を殺したのだ?」

後者か、その問なら

「私の計画に不必要な存在だったからです」

と答えよう

「その計画とは?」

「はい、まず私が計画したのは国の立て直しです。あの国は王の異常な政策により半分滅んでいました。その状況を変えるには、まず王を殺し政策を無くすのが最適だと考えました」

とここまで説明すると

「それなら失敗のリスクがある遠距離からの暗殺を選んだのは何故ですか?王を殺すだけなら正面からや寝込みを襲うのもありでしょうに」

とロズが疑問を口にする。こいつは見た目の割に頭が回っていないのか。

「王の側近に見られてしまえば王を殺した罪人にされ共存への道が遠のきます、寝込みを襲うのは魔力障壁を突破する間に見つかる可能性と侵入者を撃退する魔法の可能性があったので案として排除しました」

「…なるほど」

何となく理解したようだ

「では、ロイよ。王を殺した後どうやって国を立て直すつもりだ?」

「はい、まず昨日、奴隷商人に薬を渡しました」

薬漬けされた人間の薬を中和する為の薬。だが、実際はただの水に俺が鎮静系統の魔法をかけたもの。効力は試し済みである。

「そして、薬をあの国の騎士団長の名と共に売ってもらいます」

「何故騎士団長の名前なのですか?」

「あの国で一番の信用がある人物だからです。名も知らぬ者が売る薬と名が通っている者が売る薬では売れ行きが変わってきますから」

「国の立て直し方は分かった。だがロイよ。このままでは王様を殺した謎の暗殺者と薬を売った騎士団長のおかげで国が救われたとなる訳だ、これではただ人間が勝手に助け合っただけに見えるが違うか?」

と父が疑問を口にする。

「えぇ、その通りです。だから、私はあの双子だけでなく裏で騎士団長にも私の正体を明かしました」

彼はいい人間だった。姿を見せた際、少しは警戒するが魔族の話をきちんと聞き俺の案に乗った。まぁ、薬の効果を見せ信用を上げたというのもあるだろうが。

「そして、計画を説明した後、私と契約しました。俺もしくは俺の部下の誰かがこの国を新たに治めた時、私たち魔族と裏で友好な関係を必ず結ぶ、と」

この世界での契約と絶対に破る事が出来ないものだ。もしも、破ってしまうと体が弾け飛ぶ、それほど効力があるものを人間は破る事はないだろう。尚且つ破ってしまった場合はあの国を俺が…。

「さて、これであの国を征服する且つ共存の二つの仕事をきちんと達成したと言えるでしょう」

「…そうだな。合格でいいだろう」

反応的に及第点と言ったところか。仕方ない次からはもっと効率を上げ満足させれるようにするか。

「さぁ、ロイ、次の話だ」

あぁ、恐らく魔法の事だろう。さて、どう説明したものか…。

「お前はあの双子をどうする気だ?」

あぁ、どうやら次は双子そっちの話に飛ぶようだ。

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