6話 どうやら俺は良い人材を見つけたらしい
奥に進むと様々な檻があった。怒り奴隷商人を睨み、唸るもの。檻の隅でガタガタと震えるもの、もうすぐ息を引き取りそうなもの。
この中で一人笑うのは奴隷商人のみ。そして問う。
「今日のお求めは何になさいますか?日常生活のサポートですか?戦闘用の盾としてですか?それとも…夜の営みでですか?へへへ」
先程よりも興奮したように話す奴隷商人。俺はその反応を無視し早速、奴隷の様子を見始めた。
左から獣族、エルフ族、ドワーフ族…魔族まで様々な種族がいるようだ。魔力が高いのはエルフや魔族がいいな。と考えながら歩いていると、抱き合っている二人の獣族を見つけた。髪色は青とピンクで違うが顔がそっくりである、双子だろうか?と考えていると。
「おお、それはお目が高い。最近捕まえた双子の獣族です」
とニヤニヤと笑う。
獣族は近接戦闘がどの部族よりも優れている部族。俺が近くによると2人の抱きしめる力が強くなる。そこで気が付くこの2人は何か特別なモノを持っていると。だから、決断した。
「あぁ、この2人を貰う」
「おぉ、ありがとうございます。では、こちらの契約書を」
俺はその後、色々な契約書を書き、金貨500枚(50万円)を支払い双子を受け取り奴隷商人の小屋を出た。。
「「…」」
小屋を出て5分過ぎたが、逃げ出す様子もなく恐る恐る俺について来ているようだ。流石に調教されている…いや、違うな。俺は立ち止まった。そして、双子の首に手を近づける。
「「…‼」」
身を強張らせる2人。そして、俺は唱える。
「
そうするとゴトッと首輪が落ちる。すると、
「えっ?」「…」
とピンク髪の獣族が驚きの声を上げ、青い髪の獣族は声も出ないようだ。
「やっぱり、その首輪が原因か」
ただの拘束具だと思っていたが、声だしや行動制限などの効果が付いた魔道具だったようだ。
「おっと、青髪、逃げるのはちょっと待て」
自由になった青髪の獣族はピンク髪の獣族の手を持ち急いで逃げようとし、俺は二人の前に現れる。しかし、それは早すぎるぞ。
「まずは…お腹空いてるだろ?飯を食うぞ」
「「えっ?」」
じゃあ、ロストレイン王国のご飯(夜食バージョン)の始まりだ。
今回は獣族もいるから熱すぎる料理である候補を外し、4個の候補が出てきた…よし、決めた。
という訳で、俺がやって来たのはここ、城から南西に10分、若干裏面寄りだが、ギリギリ表面の青い屋根の店。おっと、店に入る前に忘れてはならない事がある。そう、2人の服装だ。流石に店から文句を言われれば両者いい気分でないだろう。だから。
「
2人の髪を綺麗にし、衣服や靴を作る。
「お、おぉ」「わぁ」
と二人ともゆったりとした服に身を包む。我ながらうまく出来ただろう。
「さぁ、入るぞ」
と店の扉を開けた。
「いらっしゃいませー‼」
元気良い声で店員が近づいてくる。そして、俺たちの数を数え、テーブル席に案内された。
「さぁ、2人とも好きなモノを頼みたまえ」
俺は最初から頼むものが決まっているため2人にメニューを渡す。
「いや、その前に話を…」「ねぇ、兄ちゃん何食べる?」
真面目な青い髪の兄と店に漂う食べ物に夢中になりつつあるピンク髪の妹。妹の方は見た目以上に幼いようだ。
「おい、サチ。そんな事を言ってる場合じゃ」「えぇ、でも…」
成程、ピンク髪の妹はサチというのか。
「この店はデミグラスハンバーグが美味いらしいぞ」
と俺がサチに教えてやると
「」「本当に⁉じゃあ、私それにする」
兄の声が聞こえなくなるほどの声で喋りつつ目を輝かせた。とりあえず、サチを落ち着かせつつ
「いや、そうじゃなくて‼」「?」
と怒る兄と、何故怒ってるのか理解してないサチ。しかし、俺は何が言いたいか分かっている。
「何が目的なんだ、だろ?」
「ッ‼」「あぁー」
図星の兄と他のお客さんのハンバーグを見てよだれを垂らしているサチ。ハンカチでサチのよだれを兄に睨まれながら止め、俺は言う。
「殺意や警戒心を無くせとは言わないが抑えた方がいいぞ。それに最優先事項は飯を食う事だ。話はそれからにしてくれ」
「…」「ねぇ。お兄ちゃんまだ?」
気圧され黙った兄、まだ食べるものが決まってないのかと兄の服を引っ張るサチの姿があった。流石にサチが可哀そうなので店員を呼んだ。
「デミグラスハンバーグをふ…三つ。サイドメニューにオニオンスープとライスをよろしくお願いします」
兄は何も喋らなかったので強制デミグラスハンバーグになった。
「…」「ふん、ふ、ふーん♪」
全く喋らない兄、楽しみで鼻歌が零れているサチ。
そして、5分もしないうちに3人の前にハンバーグとライス、オニオンスープが並べられる。
「…」「わぁ、食べて良い?食べて良い?」
相変わらず無言の兄と目をキラキラと輝かしているサチ。
「あぁ、食べろ食べろ。火傷しないようにな」
「…」「うん‼」
そう言うとサチは一気に食らいついた。そして、頬っぺたを抑え
「…」「美味し~」
とただシンプルな感想を言う。しかし、このシンプルさは逆に食欲をそそる。俺も手を合わせ頂くことにする。
まずは端に切れ込みを入れ一切れ口に入れる。
「うん、美味いな」
肉の粒が荒いが、その分肉汁が詰まっている。デミグラスもトマト風味が強いわけでなく味わい深い。
おっと?兄がこの美味しいハンバーグに手を付けないようだ。仕方ない。
「ピン髪の…」
「名前は言わな…」「サチだよ」
兄はサチの言葉に被せられ完全に消滅した。そして、俺は改めて言う。
「サチ、お兄ちゃんがデミグラスハンバーグを食べないみたいだから冷める前に食べてくれ」
と綺麗にすべて食べきっているサチに言った。
「…」「いいの、お兄ちゃん?」
とサチが兄に聞く。その時、ぎゅるるる と兄のお腹が鳴る。
「…ッ‼」「なんだ、お腹空いてるんじゃん」
一気に赤面し、腹の音を抑える為、ご飯に手を付けるのだった。
そして、俺もその光景を見ながらゆっくりとハンバーグを楽しむのだった。
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