1章 魔王の仕事場
4話 どうやら生前の職場より魔王城はホワイトらしい
「さぁ、こっちだ」
父に付いて行くと大きな扉の前に案内された。
「ここが父さんの職場だ」
誇らしそうに父が言う。そして、父が扉に触れる。すると、ゆっくりと扉が開いた。
「お帰りなさいませ、魔王様」
こういう部屋の事、玉座の間というのだろうか?広い部屋の奥に大きな椅子が一つその周りには四人の
「おや、魔王様。そちらの方は?」
眼鏡をかけスーツを着た賢そうな魔族が俺の顔を見ながら父に聞く。
「俺の息子だ。アシュ自己紹介を」
「次男のアシュ・ムエテルです。15歳になり父の仕事を手伝いにまいりました。よろしくお願いします」
すると眼鏡の男が
「おぉ、ご丁寧な自己紹介ありがとうございます」
と深々とお辞儀をする。そして、勢いよく頭を上げ
「では、我々の自己紹介もしましょう。まず、私の名前はロズ・ベルガルド、悪魔でございます。どうぞよろしくお願いします」
そして、手前から
「やっほー。エメル・サイリ、獣人だよ」
と耳を揺らしながら小柄な少女。…昔飼ってた犬のようだ。
「フフ、面白そうな子ね。私はリフォ・ラルク、サキュバスよ。よろしくね」
と色気を出している大人っぽい女性。…キャバクラでこんな人いたな。
「…レル・ボルク、岩人だ」
と口数少ないごつごつした男。…見事な筋肉だ。
この四人の事を俺は知っている。魔族の中でも魔王に認められている四人の集団
「デュア《してんのう》の方々でしたか。噂は聞いております」
と俺は深々と頭を下げる。
「あら、私たちの事を知ってるなんて中々勉強熱心じゃない」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
サキュバス改めリフォはあんな事を言っているが200年前に一人一国ずつ滅ぼした魔族を知らない奴なんかいるのだろうか?
「それで魔王様、彼にはどのような仕事を与えるのですか?」
眼鏡改めロズが父に聞く父は
「そうだな…まず、お前らにアシュがどこまで出来るか知ってもらうため、アシュ一人でロストレイン王国を落としてきてもらう」
落とす…どうやら俺の最初の仕事は国を征服することのようだ。
「国の征服ですか…父さん一つお聞きしても?」
俺が仕事をする上で一番気にしている事
「なんだ」
「父さんが望んでいるのは人との共存ですか?それとも世界征服ですか?」
目標というやつだろう上の者が何を望んでいるのかを聞き全力かつ効率的に応える。生前の会社でもそうしてきたように。
「…どっちなら叶えられる?」
「どちらでも可能です」
父は少し考える。他の魔族たちは分かり切ったような顔で笑っている。
「では、共存だ。この仕事をお前に任そう」
「了解しました。では、行ってまいります」
俺は立ち上がると
「お、お待ちください。ロストレイン王国の位置をご存じなのですか?」
と言ってくる。あぁ、そうだよな。俺ここに始めてきたもんな。でも
「大丈夫です。三歳の頃に
瞬間空気が凍る
「お、覚えている?この世界にいくつ国があると思っているんですか?」
「73か国ですね」
「名前や座標は」
「覚えてますよ」
社会人として何処に何があるかは覚えていて当然だよね。まぁ、でもロズは信じてないみたいだな。
「ではロズ様一緒に
入ればきちんとロストレイン王国に繋がってることが分かるだろう。
「え、ええ。行きますか」
という訳で俺とロズは
通った先は緑の綺麗な平原、そして見える城壁と魔王城程ではないが立派な城それに黄金色に輝く塔。
「どうですか、ロズ様」
「え、ええ。確かにあの黄金の塔、ロストレイン王国ですね」
驚いているロズだが直ぐに冷静そうな顔に戻り
「では、ご武運を」
と丁寧にお辞儀をするロズ。俺がロストレイン王国に来れたことを確認したから
「はい、三日後に」
と笑顔で言う。ロズは
「えっ?」
と驚きながら
「じゃあ、早速仕事を始めるか」
俺はロストレイン王国に向かって歩き出した。
ロストレイン王国前に移動して思った。門番がいるんだよな。一応、俺の見た目を言っておくと身長170cmくらいの黒髪の青年なのだが…頭に角があるんだよな。100%門番に止められるんだよな。こういう時の対処法は二つあり、一つ目は透明になる魔法を使うというのがあるが、正直おすすめしない。何故ならずっと周りに気を使わないといけないし、魔力消費も馬鹿にならない。だから、もう一つの方法をおすすめしよう。
「
この魔法を使う事により俺の姿は普通の人間になる。これなら門も普通に通れるだろう。
さて、次の問題だ。門番から
「何故この国に?」
と聞かれた場合どう答えるのが正解だろう?
この国を滅ぼしに来ましたと率直に伝えるのは論外として、旅芸人や商人だと偽るのも良くないだろう。何故なら、門番に本当にその仕事をしているか確認作業が入るからである。そうなれば時間も無駄になる。ならば、普通に観光客だの旅をしてる者だのと言った方が良いだろう。という訳で
「様々な国を旅してまして。この国もその一環で来たんです」
「あぁ、そうですか。どうぞ通ってください」
適当な門番であったが、国に入れたので良いだろう。
さて、俺がすることは
「美味しいものでも食べるかな」
腹が減っては戦は出来ぬ俺はロストレイン王国の名産物を探すことにした。
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