3話 どうやら俺の魔法への考えはおかしいらしい

「…じゃあ、今から兄シュウと弟アシュの対決を始める」

そして、父は少し嫌そうに魔法のフィールドを展開した。父を中心に黒い霧のようなものが発生し俺たち兄弟二人を包みこむ。兄は驚いていたが、俺はこの魔法を知っている。能力だけなら時間を切り離す魔法。しかし、この魔法にはもう一つ面白い能力がある。

「では。戦闘開始だ」

まぁ、この試合が終わってからでもいいだろう。さて、兄はどのように動くか…。

「俺の方が上だってこと思い知らせてやるよ」

そう言うと、ドッチボールくらいの大きさの火の玉を両手に出した。

「凄いだろ。俺はもう火炎フレムを2個も出せるんだぜ」

あぁ、ドヤってるな。…でもな。

「非効率的ですね」

実験して分かった生物の大きさにもよるが子供同士の勝負において火炎フレムなんて魔法は無駄の塊だ。

「なんだと⁉」

と兄は怒り火炎フレムを投げつけてくる。俺の行動は単純、横に少し動くだけ、すると俺には当たらない。

「な、なんで当たらない」

兄はどんどんと投げつけてくる、次第に

「はぁはぁ、なんで当たらないんだ」

と息を切らした。

火炎フレムスピード普通 コントロールあまり効かない 威力 普通」

「何を言って…」

「魔力消費 普通」

実験にてわかった事だ。魔力消費は普通と言ったが子供にとっては大でもいいかもしれない。

「さて、兄さん。次は俺の番だよ」

俺が出すのは小さな炎フレイ

「…お前が火の魔法を使えるようになっている事は驚いたが、今更小さな炎フレイなんて…」

兄はさらに驚く、俺が出した小さな炎フレイの数は10個

「これで火炎フレム一発分です。さぁ、避けてくださいね」

そして、小さな火球が兄を襲う。速度はプロ野球選手のピッチングぐらいの速度、さらにコントロールが自由で様々な方角から飛んでくる。威力は石を投げられたぐらいだ。

そうして兄は18発目にて見事撃沈した。

黒い霧がなくなる。すると、兄の傷は無くなっていった。父が治した訳ではない、切り離された時間が元に戻り、黒い霧の中であったこと全てが無かったことになったのだ。それが、便利な魔法 もしかしたらあった現実フィクションだ。

「ね、お父さん。大丈夫だったでしょう?」

「…あ、あぁ」

父はすごく衝撃を受けていた。まぁ、昨日まで魔法が使えないと思った子が兄をボコボコに出来るまで成長してたら誰でも驚くか。

「それと兄さん、これから僕に命令はしないでね」

と気絶している兄に、言い俺は父を連れ魔法を教わる為、その場を去ったのだった。


兄からだいぶ離れたころ

「一日であそこまで魔法を使えるようになるなんて驚いたぞ」

と暗かった空気を切り替えるよう喋り始めた。しかし、会話も長く続かず、家族での会話を諦め、真面目な会話を始めた。

「…なぁ、アシュよ。お前はどれ程魔法が使えるんだ?」

「…全ての属性のをある程度」

正直、自分の手の内を明かすのは愚策だが、父には嘘をついても、もう騙すことが出来ないので打ち明ける。

我流オリジナルが十個ほど使えます」

「…そうか。では、私が使ったもしかしたらあった現実フィクションの存在も知っていたのか」

「はい」

「…嘘ではないみたいだな」

そして、父は少し考え

「アシュよ。三つ質問させてくれ」

「はい」

「一つ目に、いつから魔法が使えるんだ?」

「3歳の頃、この家の書庫で学び使えるよう練習しました」

「二つ目、何故使える事を黙っていたんだ?」

「いつ、周りの誰かが敵になるのか分からないので」

「三つ目、使えるのに他の魔法を使わなかったのは何故だ?」

「無駄な魔力を使いたくなかったからです」

と面接のような会話がすぐに終わった。まぁ、でも間違ったことは言ってない。

本を0歳から読み始め3歳にて魔法を発動できるようになった。

そして、いつ家族(主に兄)が殺しに来ても返り討ちに出来るように魔法使えないアピールをする。

最後に兄を倒すのに魔力消費が酷くて小さく早い的に当たらない火炎フレアよりも小さい的に当てやすく魔力消費が少ない小さな炎フレイを高速で当てる方が効率的に相手を倒せる。

これは少し省略したが演技無しの俺の真実だ。

俺の答えを聞き父の反応は

「お前は本当に子供か?」

いつものアシュ呼びからお前呼びに変わったな、それに、

「四つ目の質問はなしですよ、お父さん。僕はまだ子供ですよ、お父さんのね」

俺は笑みを浮かべる。

「…そうだな、すまなかったアシュ。さぁ、今日はもう遅い。魔法の訓練は明日にしよう」

と俺に笑みを返し、今日という一日を終えた。

それからは毎日のように魔法の訓練、たまに格闘や剣術の訓練も積んでいった。

そして10年という月日が経った。


年齢15歳、この世界ではもう成人だそうだ。

「おめでとう、アシュ‼」

母が泣きながら俺に抱き着いてきた。

「ありがとう、母さん」

父も近くにいるが恥ずかしいのか抱き着いてこなかった。兄は…ボコボコにして以来、食事以外で出会わなくなった。

母が落ち着いてきた頃

「さぁ、アシュお前は今日から自由になる訳だがこの先、何をするんだ?」

今のところ俺には2つの選択肢があった。1つ目は、魔法学園に行き魔法を学ぶ事。もう1つは父の仕事を手伝う事だ。まぁ、でも俺の選択は決まっている。

「父さんの仕事を手伝うよ」

正直、学園から得られる知識には興味は無く、今の俺には父の職場から得られる経験が欲しかったのだ。

「そうか、じゃあ。早速、今日から来てみるか?」

俺が頷くと父は空間転移ゲートを出した。

「さぁ、行くぞ」

俺は父に付いて行き、空間転移ゲートの中に入る。

そして、行きつく場所は俺が今日まで住んでいた世界とはまた別の世界、角が生えてない人間が暮らす場所

「アシュ、ようこそ。人間界の魔王城へ」

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