第6話 童心円上
桃色の羽を散らすフラミンゴの群れに、俺は少し近づいた。
昔流行ったFPSゲームに
一方の水早は群れの右側に位置取りし、俺と水早の二箇所から打ち合うことを互いに察した。
(水鉄砲とか通じるんか……?)
俺は疑問を持ちながらも、それっぽく
疎らに飛び散る水の弾丸は、子供が水を掛け合うみたいに飛び散った。
水が着弾したフラミンゴの体表が、着弾箇所からシャボン玉みたいに弾ける。
「ナイスツユ~」
俺の攻撃で怯んで動きが鈍くなったフラミンゴの頭部目掛けて、水早が
頭部を水で打ち抜かれたフラミンゴはブルブルと震えて、やがてそのピンクの身体が破裂してシャボン玉が飛び交った。
群れの数羽が殺されたのを見て、他のフラミンゴは奇声を発しながら飛び去って行った。
「ナイスキル」
「GG」
俺と水早は互いの水鉄砲でこつんとハイタッチした。
「なんてことなかったな」
「でしょ?大半の雨獣はこの水鉄砲があれば何とかなるよ」
「逆にその言い方だと、何とかならない奴がいるんだな」
「居るっちゃ居るけど、そのレベルの奴は自分から絡んでこないから大丈夫」
そう言うと水早は両足のホルダーに水鉄砲を仕舞った。
それを見て俺もショルダーバッグに水鉄砲を仕舞う。
「んじゃ、行きますか」
水早はそう言うと、でこぼこした足元を気にも留めずにキックボードを押して歩き出した。
俺はスケボーを手に取って水早の隣を付いて行く。
20分ほど歩くと勾配が少し急な坂道になり、何とかその坂道を乗り越えた俺たちはまだ崩壊していない高速道路に辿り着いた。
「ねえツユ、私が考えてること分かる?」
「なんだよ急に」
「この高速道路をさ、キックボードとスケボーで全力疾走したら最高な時短じゃない?」
「乗った」
「景気いいじゃん」
俺はスケボーを地面に置き、片足を乗せた。
「私のこと、置いて行かないでよ?」
水早はキックボードに片足を乗せた。
「どーしよっかな~」
「意地悪したら案内してあげないからね」
(まあ置いて行く気なんて微塵もないんだけど……)
俺と水早は二人で誰もいない高速道路の中心を駆け抜け始めた。
道路の中央線を線対称の基準の様にして、同じスピードで崩壊したこの世界を駆け抜ける。
湿度が高くて少し蒸し暑かった俺にとって、この風はとても気持ちいい。
タンクトップの隙間から身体中に透き通って行く風。
隣を見れば、髪の毛を揺れる風鈴に付いた札みたいに靡かせる水早の横顔。
それを見て少し熱くなる俺の頬は、この風なんかじゃ全然冷めてくれない。
「私に合わせてくれてるでしょ?」
唐突に水早が声を掛けてきた。
「え?」
「ありがと。でももうちょっとスピード出せるよ?」
その言葉と少し良い匂いを残して水早は加速して俺の先へと行ってしまう。
「置いて行かないでとか言ってたのにな」
俺は地面を蹴る力を強くした。
「なあ水早。そういえb……」
何かしら会話がしたいと思い、話かけた俺の周囲を巨大な影が覆いこんだ。
その影はテニスコートくらいの大きさが合る。左右に広がっているのは明らかに「翼」で、正面に見えるのは「頭」。後ろに見えるのは「尻尾」だ。
「お?」
水早は少し期待したような口ぶりで空を見上げた。
「ツユ、見てみ」
言葉に釣られて俺も空を見上げる。
すると、建物五階くらいの高さを、「龍」と形容するのが最も正しいであろう生き物が飛んでいる。
がっちりとした前脚と後ろ脚。離れていても伝わってくる威厳と、澄んだ水色の体表。
「!?!?」
「大丈夫だよ。あの子は襲ってきたりしないから」
「何だよあれ!?」
「あの子は 水泡龍 パドルインちゃん。この世界が成立する為に必要な生き物だよ」
「どゆこと!?」
「
「す、すげえ……」
余りにも神秘的で美麗なその様相に感嘆の声が漏れてしまう。
でも、今、俺の空には確かに
不安はあるけど、嫌じゃない。また一つ、俺がこの世界を好きになる根拠が増えてしまった。
どう責任取ってくれるんだ。まったく……。
水泡龍は翼を大きく羽ばたかせると、遠く青い空へと飛んで行ってしまった。
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どうもです。作者のこたろーです。読んでくださりありがとうございます。
更新が遅くなってしまい大変申し訳ございません。大学の勉強が出来ていなかったことと、それに伴う精神面と時間面での理由で執筆が出来ていませんでした。
今回登場した水泡龍 パドルインちゃんですが、僕の前作『レプリカント ドラゴンナイト』に登場する大海龍 リントブルム君の妹に当たります。
両作は世界線は同じですが、「時間と空間」の二つにおいて座標が違うので間接的なつながりが生じています。ここら辺の話は追々別作品の中で説明されますので何となく「繋がりがある」と考えて頂ければ幸いです。
「ちなミニ」
水早の読み方は「みつは」ですが、僕が執筆する際には「みずは」でタイピングしています。その内二丁拳銃で打ち抜かれそうで怖いです。
物語は既に終盤となっています。頑張って執筆していきますので応援いただければ幸いです。
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