5話 散弾銃
屋上から飛び降りた。水早の手をよりぎゅっと握ってしまう。
地面に衝突する瞬間、俺と水早の足元にクッションのようなトランポリンのような何かが急に表れて、俺たちを救った。
それにバウンドした俺たちはバウンドして地面に降り立った。
「このスニーカーで
水早はそう言いながら踵を上げて手で突いた。
「ま、まあかな」
「強がらなくて良いのに」
「強がってない」
「そう。で、この手はいつまで繋いどくの?」
「!!」
俺は慌てて水早の手を離した。
「んじゃ行こうか。最初に私たちは東側から来たんだけど、今からは西に向かう」
水早はそう言うと眼前に真っ直ぐ続く道を指さした。
ずらっと並ぶ集合住宅に挟まれた空間は真上の太陽から照らされて意外と明るい。
子供たちが遊べるようにと設置されたであろう閑静な公園がある。
「ん。この一直線の道はあんまり崩れてないんだな」
俺と水早はとりあえず集合住宅街の一体から出るため歩き始めた。
(水早ってこんな奴だったんだ……。一応去年も同じクラスだったけどあんまり話したことないな……。文化祭準備の時に同じ班分けだったけど、俺が部活でほぼ参加してないしな……)
俺の少し前を、なぜか浮足立って歩く水早の後ろ姿に視線を向けた。
正直、かなりドキッとした。俺を助けてくれたとき、はじめて顔をちゃんと見た。
きめ細かな肌に住んだ瞳。その瞳に映る自分が見えてしまったほど、綺麗な瞳。
掴みどころのない、ふわふわした奴だけど、嫌じゃない。
嫌じゃないどころか……。
俺は頭をぶんぶんと横に振った。
(ああ、もう、何考えてんだ俺は!だいたい水溜まりの中に落されて意味わかんない世界に迷い込んで、多分帰れますってヤバい状況なんだ!今は元の世界に帰ることが最優先だ……)
「お!ツユみて!」
そう言うと水早は公園のフェンスに立てかけてあったキックボードとスケボーを指さした。
「あれ乗れるの?」
「私はキックボードなら乗れるよ」
「中学の頃スケボーかじってたから、多少はいける」
「んじゃ乗ってこっか!」
「決断が早くてよろしい」
「善は急げだよ?」
「善なのかこれは……」
そこからの道のりは水早はキックボードで、俺はスケボーに乗りながらの移動になった。
ご丁寧にヘルメットまで用意してあったし道が安定していたおかげでスムーズに進んだ。
そして数百メートルは続いたであろう集合住宅街をようやく抜けた。
すると、目標となるビルが視界の遠くに再び現れた。
そして視界が開けると、もう一度荒廃した形骸水面正解が全貌を露わにした。
崩壊した建物群に緑が巻き付き、道路はひび割れて空中に
「この道じゃキックボードもスケボーも無理そうだな」
「歩いてくしかないね~」
「ぎゃう!ぎゃう!」
『え?』
どこからともなく、動物の声が聞こえた。それと共に翼をはためかせる影が何羽か目前に出現した。
「水鉄砲準備して!
水早は叫ぶと、ふくらはぎのホルダーから二丁の水鉄砲を取り出した。
「お、おう!」
俺も慌ててショルダーバッグから
水鉄砲を構える俺と水早の正面に、桃色の羽を散らしながら影の正体が降りて来た。
「フラミンゴ!」
俺はその意外な正体に思わず驚愕する。
「フラミンゴの
「え!?戦うの!?」
「あたぼうよ!」
水早は水鉄砲を両手で構えて、フラミンゴに向かって駆けだした。
――――――――――――――――――――――――――――――
どうもです。作者のこたろーです。5話も読んで頂きありがとうございました。
僕としては10話以内の完結を予定している本作ですが、もう半分が終わったことになります。
プロットも未完成の段階で思い付きと勢いで始めた本作ですが、僕の趣味を全開で好きなように書いてます。
5話にして、本作で書きたかたことの2つが登場しました。
スケボーとショットガンです。
スケボーは本当に趣味ですが、ショットガンには意味があります。
4話の後書きでも触れましたが、この「形骸水面世界にあるもの」に注目して頂けると本作のメッセージ性が分かり始めると思います。
あと3つ、4つくらい書きたいものがあるので、頑張って執筆します。
何より、僕にとって実験的な作品をここまで読んで下さる読者の皆様、本当にありがとうございます。
6話もよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます