第8話
「ハクアも…貢献、しないと」
歩きながら散策する。
どうにかして、狗神仁郎に手柄を与えたい。
そう強く思う出灰ハクアに。
「おい」
声を掛けられる、それと共に頭を強く殴られる出灰ハクア。
頭部を強打された事で意識が朦朧としながら、そのまま地面に倒れる。
灰で覆われた地面に倒れた彼女は、眼に灰が入りながらも、自身に攻撃を行った相手を確認する。
「へえ…女だ、こんな所に」
「逃げ出したのかな?」
「いや、味見した中じゃ、居なかったぜ」
「じゃあ、非生か」
そんな会話をするのは、黒のスカジャンを着込んだ男たちだった。
出灰ハクアを持ち上げると共に、男は言う。
「軽いなこの女」
「胸と尻が小さいからな」
「いや、逆にそれがさ…そそられるんじゃねえの?」
そう言いながら出灰ハクアを俵持ちをしながら運び出す。
頭から血を流す出灰ハクアは、段々と意識を失っていく。
そして、そのまま記憶が途絶える。
狗神仁郎が出灰ハクアが消えたと言う事実を知ったのは、それから三十分後だった。
街は思ったよりも広く、回り切るには更に倍以上の時間を弄する。
しかし、廃墟と化した建物の中に置かれた荷物を確認した時、此処に誰かが居る事が分かった。
更に、地図らしきものも発見し、赤丸で位置を記されていた。
其処に向かえば、きっと行方不明者が居るのだろうと、狗神仁郎は察した。
そして出灰ハクアを迎えに行く為に現在地点へ戻り、灰を踏みつけた出灰ハクアの足跡を辿った結果。
彼女の血と、建物の中から外へと続く複数の足跡が確認される。
「…」
狗神仁郎は出灰ハクアが危険な状態になっている事を悟る。
地図を確認する、複数の足跡は建物の中に入っていた。
恐らく、この複数の足跡は、灰に触れぬ様に移動しているらしい。
であれば、出灰ハクアが居る場所は分からない。
この地図に記された赤丸の場所を探す他ない。
「…出来れば、其処に出灰さんが居てくれれば、良いけどな」
狗神仁郎はそう思った。
周囲を探して、出灰ハクアを見つけると言う真似はしない。
仕事としてこの地に居る以上、与えられた任務を遂行する事が優先される。
だから、出灰ハクアがどれ程危険な状態になったとしても。
狗神仁郎は仕事を優先するだろう。
「…すぐに終わらせてやる」
だから、狗神仁郎は走り出す。
赤丸が施された地図の元へと、狗神仁郎は向かい出した。
出灰ハクアは、両手首を縛られた状態で目を覚ました。
「う…ぇ…えぁッ」
口の中に、懐かしい味を抱いたので嫌悪感を浮かべる。
口から嘔吐物を撒き散らしながら、彼女は起床する。
嘔吐物を吐いた事で、多少は気分が紛れた。
衣服を汚しながら、出灰ハクアは口元の酸っぱい味を唾液と共に飲み込む。
「ここ、は…」
出灰ハクアは周囲を見回した。
広い部屋だった、そして見渡すと、多くの人が寝転んでいる。
死んでいる、ワケではない。辛うじて生きている。
だが、生気は感じられない、生きているが死んでいる状態だった。
「…ふっ…?」
身体を起こそうとしたが動かない。
どうやら、足首も紐で結ばれている様子だった。
「…あ」
そして、自らの禍遺物も無い事に気が付く。
どうやら捕まった時に、ある程度は回収されてしまったらしい。
「…」
再び、薄暗い中を見る。
どうやら、寝転んでいる人らは、全員が女性だった。
彼女たちは、衣服を破かれていて、体を埋める様に呼吸をしている。
「寝てる時に咥えて貰ってよ、いや、マジで気持ち良いのよ」
「味見すんなって言われてんだろうが、殺されるぞ?」
「別に構わねぇよ、あんな新参にデカい顔させるかってんだ」
「起きてたらマジで襲おうぜ、泣き叫ぶ様を見て見てぇ」
そう言いながら、部屋の中に入る男たち。
スカジャンを着込んだ軟派な見た目をした彼らは、部屋の照明を点ける。
そして、出灰ハクアが起床している所を確認した。
「お、起きてるじゃん」
「…って、臭ェ、吐いてるじゃねえかよ、このアマッ」
「お前の味が悪かったんだろ」
そんな台詞を吐きながら、出灰ハクアの元に近づく。
出灰ハクアは、口を閉ざして、ジッと相手の方を見ていた。
だが、更に部屋の中に入って来た相手の顔を見て、目を大きく見開いた。
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