皇帝と悪魔の対話 その4

 なるほど、軽々に農耕民族の文化を採用すれば、数の少ない我が騎馬の民の独立不羈、尚武の気質が損なわれ、軟弱で愚鈍な農耕民族の悪影響を恐れねばならん、ということに加えて、要は頭の悪い農耕民族に、慣れた仕事以外をやらせるゆえ、見通しと段取りが必要であるということじゃな、と。

 いや、本格的な堅固な城塞自体、陛下の臣である騎馬民族の技術では建造できないものですから農耕民族が特別に愚かというわけでも……いやいや、こちらの話、さすがは陛下、ご賢察でございます。

 ああ、戦争をやるのとおなじ要領だと。あれほど段取りと先読みの必要な国家事業はない……まさにそのとおりでございます。の、割りには征服したあとの段取りが……ああ、いえ、これもこっちの話でございます。お気になさいませんよう。

 そこまでお分かりでしたら、人をお集めになる前に、臣下によくお諮りになって、どのような城をだれに建設させるか、お決めになることです。陛下の臣にもそろそろ農耕の民と親交のある者が出てきたことでしょう。

 商人や工人、あるいは芸術家のなかには恒久的な建築物への造詣が深い者がおります。

 せっかくの大事業ですからな、陛下はご自身のご要望を積極的に出していただき、たとえば、交通の要衝に位置して他国の者に畏怖を与えつつ、まさかの時には防衛拠点になるような、多目的な築城、港の建設を目指されることをお勧めいたします。


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