STEP2 【賦役を実際に課すには】

 兵役・大規模工事人夫・農園労役、このみっつのカテゴリ別に見ていきましょう。


《兵役》

 農閑期を使って定期的に賦役対象者の訓練を行っておきます。

 具体的には国王や貴族がさまざまな場所で狩猟を行い、近隣から人を集めて勢子として使います。国の制度にもよりますが、領地から満遍なく人を集めるのではなく、自分の主要な領地(拠点)で人を集めることになります。

 拠点は、「作物がよく実る」「物資の移送・人員の移送に便利な大河のそば」が有力候補になります。要は、人口が増加しやすい場所です。

 ここで軍隊におけるラッパや太鼓などで行う突撃指示や退却指示、弩や槍、盾などの武器の使い方を覚えさせます。軍隊は、兵隊がてんでバラバラに敵と戦っていては、強さを発揮できません。集団行動を覚えさせておく必要があります。いざ敵が攻めてきた! という時になってからこの訓練を始めていたのでは間に合いません。

 実際に敵が攻めてくる、あるいは侵略するとなれば、兵士たちを徴募することになりますが、これは

①戸籍や田畑の面積などに基づいて籤引きや輪番制

②村落などの共同体に適任者を推薦させる

 等の方法で集めます。

 集めた兵士は常日頃狩猟という名の軍事訓練をともにしている貴族たちの指揮下に入り、戦うことになります。

 このように集めた兵士たちは、国境の監視など、戦闘があまり起こらない任務に従事させる場合は大きな損耗を考えなくとも良いのですが、戦役に参加させた場合、戦争に勝利しても一部は死亡しますし、戦争に負ければ死亡・捕虜などで大部分が失われる可能性もあります。


《大規模工事人夫》

 短期間で済むのなら、農閑期に徴募します。明代の律令にも、ちゃんと「農閑期に」という文言があります。

 数年かかるような場合でも、可能なら農閑期に工事を進め、農繁期はすくない人夫で作業する(前述の労働刑を科せられた人々など)、など対応します。しかし、通年で工事を行う必要がある場合もあるため、その場合は

①戸籍や田畑の面積などに基づいて籤引きや輪番制

②村落などの共同体に推薦させる

 によって、なるべく農作業に影響が出ないように配慮しつつ徴募する必要があります。

 農作業に甚大な影響が出れば、国力の衰えにつながります。(例・隋の煬帝が行った大運河延長工事)完成すれば経済を活性化させたりといったいい影響が見込まれる工事でも、あまりやり過ぎると国が滅びますので注意しましょう。


《農園労役》

 この賦役はほかのふたつとやや趣が違います。

 基本的に地元の領主の農園に通い、自分の農地の手入れと並行して領主の農園の世話をします。

 領主は、たとえば自分の領内の農民に対し『年間六十日』の労役を賦課します。

 領主は、あまり人手の要らない時期の農地の管理は自分たちで行い、播種や収穫、ワインの醸造など、労働者がたくさん要る作業のときに彼らを呼び集めて作業させます。

 この賦役の場合は、領主の農園に近い村落に、期日までに人を集めるように指示しておく、という方法をとります。

 農民は自分の農地の繁忙期と重なりますが、そこをうまくずらす、村内で人員の融通をする等して作業すれば、自分の生産活動と賦役を同時に行うこともできます。

 ただし、ここにはやや領主側の詐術がある場合があり、『六十日』は『領主の農園で作業を終わらせるのに充分な日数』と読み替えられ、なんらかの事情で作業が終わらなければ、作業が終わるまで無制限に拘束されることはよくあったようです。

 作業が終わらない原因としては、天候不順で作業が行えない・招集された期間に農地周辺の手入れ(柵の補修や屋敷の修繕など)までさせられる、ペストなどの疫病で農民が減り、充分な人手が確保できないため一人あたりの作業負担が増える、などの原因があります。

 歴史的に、領主が農民に耕作地を貸し与える代わりに、その農民は移動を制限され、地租や貸し家の賃料、賦役を課される在り方を『農奴制』といいます。


《サボタージュ等へのペナルティー》

 賦役で徴募した労働者が逃げ出す、兵の駐屯地や工事現場にたどり着く前の旅の途中で死亡する、ということはあり得ます。

 対策としては

①村落単位で集めた人員は集団移動するものとし、逃げ出した者がいれば連座で他の者が懲罰される。

②必要な人員が現地に集まらなければ、人員を用意する義務のある戸籍や村落といった賦課単位になんらかの罰が科される。

 などがありましたが、いずれにせよ【逃げ得】で、逃げ出さなかった者に厳しい罰になりがちでした。


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