IF END お父さんは乗り越えられていなかった

*有り得た未来の1つだったifルートです。

バッドエンドの苦手な方は気にせず飛ばしてください。


*シーンは愛理が寝てしまった直後です。


*お食事の前後や最中はお避けください。


――――――――――――――――――――


私は寝てしまったようだった。


ぽかぽかとあったかい。イスに座ったままの私に、ふあふあの毛布がかけられている。


毛布のふちがあごの下に当たってくすぐったいけど気持ちいい。


だけど、そんな私を見ているお父さんは、肩を震わせて泣いているようだった。その手には薪を割っていたナタを持っている。


「おとーさん……?」


寝ぼけて舌足らずなまま、私は呼びかけた。


もしかして、私が寒くないようにずっと薪を割って足してくれていたのかもしれない。


お父さんはゆっくりと私に近づいて、膝をついて抱きしめてくれた。


「愛理は今は幸せかい?」

「しあわせだよ?おいしいお肉も食べて、ぽかぽかしてあったかくて、おとーさんもいるし」

「そっか」


バーベキューコンロの火は消えていて、辺りは真っ暗だ。暗闇の中、お父さんに背中をぽんぽん、とされて、私はまた眠りに落ちた。


お父さんは、やっぱり泣いていた。



振り下ろされた鉈は綺麗に愛理の頭蓋を割り、血飛沫を上げた。


寝ている間に脳を一撃で、というのが最後の優しさだったのかもしれない。


充分な速さで振り下ろされ、丁寧に研がれた鉈は多少の血は飛び散らせたものの周辺を大きく汚すことはなかった。


愛理の口の真ん中に生えた鉈から手を放す。


そのまま、彼は泣き崩れた。


どんどん母親に似ていく娘。感じていた不安が現実になり男遊びを覚えた事実は彼の胸に突き刺さった。


愛した妻と同じように、愛する娘を失った彼はよろめきながら車へ向かった。


運転席へ座り、1本の電話をかける。二言三言話して、謝って電話を切った。


助手席のダッシュボードを開ける。


当然のように入っていた拳銃を取り出す。


もの悲しい銃声が1度だけ響き、何事もなかったかのように山は静けさを取り戻した。


その夜、2人の死を悼むかのように月も雲に隠れ、地上を照らすことはなかった。

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