第4話 四天王VS神崎④
メインイベントの直前、セミファイナルの試合が始まった。
神崎は今のうちに用を足そうと、控室を出た。建物内は自由に動けるが、廊下の左右にはSPが立っており、外出することは出来ない。不正行為や情報漏れへの対応は万全のようだ。
トイレは控室を出て右手にある。男子用トイレの扉を開けようとしたところで、中から声がする。
「必ず勝利して、兄ちゃんがお前の病気を治してやるからな」
それは豪傑の声だった。誰かと会話をしているのではなく、自分に言い聞かせている。神崎は扉を開く動作を止めて耳を傾けた。
「神崎省吾を倒せば十万ドルが手に入る。それだけあれば医療費が賄える。やるぞ、俺はやってやるからな」
写真をポケットにしまいながら、豪傑が勢いよくトイレから出て来た。聞き耳を立てていた神崎とバッタリ出くわす。
「か、神崎省吾……今の、聞いていたのか」
「何の話だ」
神崎は惚けた。その無表情を見て、豪傑は戸惑いながらも首を振る。
「いや、聞いていなければいいんだ」
豪傑は足早に立ち去っていく。神崎はトイレに入り、それぞれのプレイヤーが色んなものを背負って戦っていることに深いものを感じる。なぜなら自分も同じように背負っているから。この三年間、いわれのない不正行為で受けた不遇の時間を取り戻すべく、アンダーグラウンドの世界で戦っている。
大金が飛び交い、互いの意地と意地がぶつかり合う地下格闘ゲーム。コロッセオに君臨する四天王と神崎の戦いが、いよいよ開幕する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます