003 三千世界

「はっ、はっ、ハックション!!!!」

リビングにある時計の針は9時12分を指していた。僕には公務員の両親と2人の妹がいる。がしかし今はリビングで1人優雅なてぃータイムをしている。てぃーといってと紅茶ではなく緑茶であるがそんなことは現在僕の家で起きている事件に比べれば些細なことであろう。だがそんな事件も僕にとっては不利益を被るどころかこうして1人の時間を楽しむ機会をくれたのだから片方の妹には感謝をせざるを得ない。

そんなふうなことを考えてながら僕は左手で白色の小茶碗を手に取り、すこし口に含みテーブルにおいた。テーブルから可愛らしいアホ毛がこちらを覗いていた。

するとそれは勢い付きすさまじいスピードで近づいてきた。

「にーちゃーん!!!!夏風邪かー!!!」

「?????????」

おどろいた僕は思わず口からお茶を吹き出した。水鉄砲のよりも勢いのある僕の口に含まれていたそれは僕の妹『索野(さくや)』の顔に噴射する結果となった。

一尺二寸 索野は僕の妹の片割れである。先月15才になった少女である。ロングの髪が似合う可愛らしい少女。先月の誕生日に少し早めにスマホをもらっていて今は全体的に浮かれている感じだ。だがそんな少女も顔に熱い茶をかけられてはたまったものではないだろう。

「あっちいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

索野ちゃんはリビングで暴れていた。愚か者を見て僕は少しの愉悦に浸っていた。

すると索野は忍者のような身のこなしで立ち上がる。索野はパルクールを本人曰く'少し'嗜んでいる。なのでこのような動きは朝飯前…いや寝ながらでもできるという。

「うぅ…お兄ちゃんに顔射されちゃったよう…もうお嫁に行けないよお…」

「安心しろにいちゃんがもらってやる。」

「ほんとぉ?」

索野は上目遣いで僕を見つめる。

「嘘だ」

「兄ちゃんの嘘つき!」

そういい索野は僕の顔をぶん殴る。思い一撃である。

「いったぁぁぁぃぁぁ」

鼻血はギリギリ出ていないようだ。

「兄ちゃんの嘘つき!私に顔射したくせに!!!」

顔射は、相手の顔に精液を浴びせることによって性的欲求を満たす行為である____

「たしかにお前の顔にお茶を吹いたが顔射ではないだろ!それに麗しき女の子が言うんじゃありません!というかどこでそんな言葉を教わったんだ!?」

まったく最近の中学生は…学校でもこんなことを言っていたら我が家の恥である。

「あーそれか、たしか陸上部の一個上の先輩が言ってたやつだね」

陸上部…運動部の中でもバスケ部の次に聖なるオーラを纏う部活の一つ(僕調べ)である。まったくこれだから陽キャは…

「で?なんて名前のやつだ?」

「川のようなせせらぎのように鳴く鳥…」

ん?どこかで聞いた名乗り口上だな…

「尾川小鳥大先生だ!!!」

…やっぱり小鳥か…たしかに雀にそういう伝承はあるものだが…あいつはどちらかといえば鷺(さぎ)であろう。

「なんでお前があいつと仲良いんだよ!!!」

そもそも高校生と中学生だ。関わる機会なんてそんな多くないはず…

「あー兄ちゃんは知らねえと思うけど、私と小鳥先輩は大大大の仲良しなんだぜ!!!まあ話せば長くなるけどな!!!」

「ふーん」

「なんだよつれねえなあ私と大先生の仲はラブドールよりも高くえっちなねえちゃんのフェラよりも深いんだぜ!!!」

「最低だーーー!!!あとそんなことを大声で言うんじゃありません!!!!」

最低である。てかまじでどこでそんな言葉を覚えたんだ。

「うるせえ!私はエロで世界を救うんだ!大エロエロ魔神になるんだよ!!!」

「あのなあ…エロで世界を救うなんて無理に決まってるだろ…そもそも世界なんて救えるわけないだろ」

幾ら三千もの世界があると言われているこの世の中でも流石にエロで救われる世界はないだろう。というかあって欲しくないし、あってもその存在を信じたくないものだ。

「でもよう兄ちゃん下ネタって平和の象徴なんじゃないかっておもうんだ〜」

な…何を言っているのか分からねーと思うが僕も何を言っているのか分からなかった…僕の頭がどうにかなりそうだった。

さすがぼくの妹…利朝(とみあさ)市のコンポスターズとはよく言ったものである。まさに詐欺師だ。

「なんて言ったって私たちは生き物だ。生き物は繁殖をするためには住処が外敵に脅かされちゃいけないんだぜ。だから私たちがエロを享受しているうちは平和なんだぜ。完璧な理論だろ?」

言うほど完璧か?やはりぼくは騙されているようでならないのだが…ばかの考えていることはよく分からないものだ。

「あーそうそう兄ちゃん。今から買ってきて欲しいもんがあるんだがいいか?」

「あ?」

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