第5話 自称エリートサラリーマンA氏④
まだ残暑が残る中、ちょっと虫が気になるが、蚊取り線香を炊きまくって外からやることにした。
開始時間になったが、見てくれている人は1人しかいなかった。
正直言ってテンションが下がる。
面倒臭いしやりたくない。
そもそも、三連休にやるのが間違いだった。キャンプ好きの人は、郊外などに出かけていて、マイナーな俺のチャンネルなんかを外出先から見るわけがない。
しかし、客がたった一人でもやらなくてはいけないのがエンターテインメント業界が。先日、30代の女性アイドルの人がラストライブの観客が1人だったと言っていたが、まさにその心境だ。(これは事実ではないと言われている)
俺:『こんばんは。〇〇〇のAです。〇〇さん、来てくれてありがとうございます!』
古参フォロワーBさん:『こんばんは』
めっちゃいい人やん。俺は心の中で手を合わせる。
チャットで返信があった。
俺:『今、どこで見てくれてますか?』
Bさん:『家です』
俺:『そうですか。家なら飲めますね』
Bさん:『さっきコンビニで酒買ってきました』
俺:『何、飲んでるんですか?』
俺たちは、たいして盛り上がらない普通の話をしていた。その人は普段からコメントを書いてくれている好きなフォロワーさんだった。俺のつまらないコメントも丁寧に拾ってくれる。すぐに、一人しかいないことも気にならなくなっていた。
そのやり取りが、全世界に配信されているというのも忘れて普通に喋っていた。
気が付いたら視聴者が5人になっていた。
俺はBさんとの会話の中で、普段は都内に住んでいることも言ってしまっていた。この動画は、配信終了後に非公開にしようと思った。車種と車の色もわかっているから、俺のチャンネルを見ている人ならもしかしてあのAじゃないかとなるだろう。チャンネル登録者は1,000人しかいなくても、視聴回数は1万回を超えていたからだ。最近は登録せずに見る人ばかりだ。
俺は実はあまり好感度よくないかもしれない。車に傷をつけられたりするかもな…うちは、防犯カメラとかないし。
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