前のエピソード――第3話　自称エリートサラリーマンA氏②

　配信の数日前から、俺はかなり緊張していた。

　普通の質問コーナーだと、手持無沙汰で飽きるからTwitterで「オンライン飲み会」にしましょうと提案した。「みなさんも、酒を片手に週末をまったり過ごしましょう」ということにして、俺は炭酸やスナック菓子を買い込んだ。酔っぱらってしまうとメンタリストDaiGo氏みたいに失言をしてしまう可能性がある。

　みんな知っているかもしれないけど、DaiGo氏はワインを飲みながら配信をしていて、「僕はホームレスが死んでもなんとも思わない。それよりは、僕を癒してくれる猫に金を使いたい」という話をしていた。俺はそれをリアルタイムで見ていたから、この人天狗になっとるわと思っていた。DaiGo氏はその後復活してYouTubeもやっているがネットニュースなどには取り上げられなくなってしまった。

　ひろゆき氏も酒を飲みながら配信をしていて、「YouTubeを見ている人は馬鹿が多いと思っている」と発言している。それでも人気があるのは、自分は馬鹿ではないと思っている人ばかりなのだろう。

　俺は取りあえず素面（しらふ）で臨むことにした。まるでジャニーズタレントのように、個性を出しつつ万人受けする回答をしなくてはいけないと自分に言い聞かせた。

　例えば予算がない人でも、キャンプができるような体でやらないといけないだろう。テレビ番組などは東京足立区の人でもわかるように作られているらしい。足立区というと、大阪でいう西成のような位置づけだ。

　足立区の人でもわかるようにというのは、フジテレビの人が言っていたと和歌山毒物カレー事件の林死刑囚の息子さんが告白している。俺も同じ気持ちでやらなくてはいけないのだ。

　足立区の平均年収は490万円で、東京都の66市町村の中で49位。全国の平均年収からも下回る。年収300万円未満の世帯が一番多く114687世帯（37.0%）もいる。就学援助を受けている割合は４割もいるのだ。しかし、生活保護世帯、シングル世帯だけでなく、夫婦と子ども一人の場合は世帯年収500万円以下が対象ということだから、若い夫婦なら珍しくないんじゃないだろうか。

　とりあえず、地雷を踏まないようにだけは気を付けようと思った。