18 閑話 ローガン 精霊にキリコをさらわれる



 応援してくださった方、読んでくださっている方、更新遅くてすみません。書くことは決まっているのに、どう書いていいのかわからなくなり、何度も止まってしまっています。


 なんとか完結までたどり着きたいと思いますので、最後まで見捨てずにお願いします。




********************************************






 私は、これからキリコと初めての旅行。大まわりしてシャウルスの町まで行く時間がなく、フライングカーペットで飛んでいくことにした。いつもならあっという間に通り過ぎるのだが、キリコが景色を楽しめるようにとゆっくりにしたのが裏目に出た。


 ドゥーフの森の近くに来ると、キラキラしたものがみえるとキリコが言う。精霊だ。見えるのは限られた者だけ。きっとキリコと相性がいいのだろうと感心したが、それはつまり、囚われやすいということでもあった。その時点でスピードをあげていたら、こんなことにならなかったかもしれない・・・。




 私は急に眠くなってきて意識を失った。気がつくとカーペットごと森の中に落ちていた。 高い木々が立ち並ぶ深い森。私が落ちたのは、日が当たらず、低い草がところどころはえている場所。

キリコにも私にも危険が迫った時に自分を守ってくれる保護ペンダントを身に着けていたので、怪我はない。が、キリコがいない。



 キリコが私を置いてどこかへ行くはずがない。どこか違う場所に落ちたのかもしれない。




「キリコ!キリコ!」



 キリコの名前を呼んで、森をさまようとクスクス笑い声が聞こえてきた。




「おい、キリコをどこにやった!」




「キリコ・・・ココ、いない・・・夢の中・・」




「お願いだ!あの子を返しておくれ!大事な子なんだ!」




「クスクス」

「クスクス」




「ローガン、あの子を帰したくない」

「帰したくない」

「魔法陣、作らない」

「できるのにね」




「でもやらない」

「帰したくない」

「ローガン、孤独」

「ひとりぼっち」




「だから帰さない」

「キリコ帰さない」





「違う!あれはそんな簡単なものじゃない。失敗すると元の世界と違うところへ送ってしまう。慎重にやらなければならない。時間がかかるんだ!・・・キリコにとってもまだ、その時じゃない。時が来たら帰す・・・必ず私の力で・・・」





 そうだ、あの子の心の傷はまだ癒えていない。あの子にはまだ、私が必要だ。必要な・・はず・・・。



私は項垂れて立ち尽くす。大事な家族から引き離された日のこと、家族を失ったとわかった日のこと・・・胸が締め付けられるほどの悲しみが私を襲う。私はまた失うのだろうか、キリコを・・・。





「あ~あ、泣いちゃった!」

「ローガン、泣いちゃった!」

「言い過ぎた?」




********************************************





 どのくらいたっただろうか。




「キリコ、帰ってくる」

「ローガンに会いたがっている」

「呼んだらくるよ?」




「キリコ!どこにいるんだい?キリコ!お願いだから帰ってきておくれ!」




 呼んでみたが、返事はない。だが、微かに反応があった。




「キリコ!キリコ!」





 私は続けて名前を呼び、反応を伺った。今度は反応がない。




 私は思いを込めて名前を呼ぶ。





「キリコ!キリコ!」




「はぁ~い、お師匠さん!今、行きま~す!」




 キリコの元気な声が聞こえた。私は目を閉じてキリコの場所を探す。見つけた!あそこだ!だが、心と体が別々の場所にある。まずは心を体の中に戻し、次に体をこちらへ引き寄せる。





頭の上にキラキラした空間ができ、そこから眠った状態のキリコがゆっくり落ちてくる。私はキリコを下で受け止める。そのまま腰を下ろすとキリコをギュッと抱きしめる。温かい。生きている。顔色も悪くない。





「キリコ!キリコ!しっかりおし!」





キリコがぼんやりと目を開く。




 

「ん?お師匠さん?ココ、どこ?」




いつものキリコだ。怖い目には合っていないらしい。ホッとする。




私は、精霊にいたずらで2人とも眠らされてしまったこと、キリコが精霊にとらわれていたことを話す。




「そうだったんですね~、私はマリーっていう女の子の体の中に入って、学校に行ったり、王子様と話したりしていました。って、夢ですけどね・・・」




 私たちは後でゆっくり続きを話すことにした。チェックインの時間が迫っているのだ。





 すると突然、木々が左右に分かれ、出口への道が開かれた。




「「「「「「バイバイ!」」」」」」





気づくと頭の上にキラキラしたものが浮かんでいた。精霊たちだ。





「あ、精霊さんたち?道を作ってくれたの?どうもありがとう!」




 キリコは素直にお礼を言う。この子のこういうところが人から好かれるんだろう。




「「「「「「キリコ、いい子!教えてあげる。雨が降ってもすぐに止むから。バイバイ!」」」」」」





 どういう意味だ?よくわからない。まぁ、いい。とにかく道を急ごう。




「キリコ、行こう」




「はい、お師匠さん!精霊さんたち、バイバイ!」




 キリコは、離れている間に夢でみたことや元の世界で何があったのかを話してくれた。元の世界のことは話したくなさそうだったので、今まで聞いたことはなかったが、夢の中で王子と話したことで気持ちに変化があったようだ。私はただ黙ってキリコの話に耳を傾けた。いつか終わりが来るであろう楽しい時間を噛みしめるように・・・。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る