第10話
超巨大蟲人
結界にディーが一歩踏み入れると、人を探して歩いていたオンナ形の成蟲が、ディーをギロリと注視した。
成蟲の気味の悪い目をパチクリと瞬かせて、コチラに走り寄ってくる。
ディーも飛ぶように走り出した。
神社の鳥居から離れていくと成蟲の数も減っているように感じる。
「何処に行くんだ」
「この間の続きだな、あと11本錫杖を立てて、最終防衛ラインを下げたいんだ」
「結界を完成させたとして、どうやって蟲人を結界の中に入れるんだよ」
「地道に殺していく行かないだろ」
特殊スーツの手を細い針のようにのばして、オンナ型の成蟲の眉間に刺す。
迫ってくる成蟲を次々と屠っていく。
俺はただ見ているだけで何もしていない。
何となく背後から圧をかけられているような感じがした。
「ディー後ろから何か来てないか」
「ん?」
振り向きざまに、オンナ型に刺して、屠る。
「よくわかったな」
「なんだか圧迫感があったんだ」
「そうか次も頼む」
「おう、任せておけ、次は上だ」
「わかった」
最初の目的地にたどり着く頃には50匹を倒していた。
地面に錫杖を刺すと半径2メートルは成蟲がよって来ないそうだ。
「なぁ」
「ん?」
「俺、成蟲退治ってもっと腕とか、足とか飛び散ったり、スプラッターなことに成るんじゃないかって、思ってたんだよ、割と繊細な仕事だな」
「成蟲の体液は金魄で出来ていて、金魄が地面に落ちると卵が生えるんだ、キモイぞ、一個や、二個ならまだしも20個、30個とわらわら湧いてくる卵キモイぞ」
「想像に難くない、から余計想像したくないよ」
オンナ型の成蟲を片付けながら、錫杖を地面に刺していく。
10本の錫杖を指したところで、強い圧迫感が迫ってきた。
「ディー左斜め後方から強い圧迫っ感が接近、警戒を頼む」
「ラジャ」
さながら戦闘オペレーションのゲームをしているような感じがする。
楽しい。
ディーが振り返って成蟲の攻撃を受け止める。
そこにはディーと同じように手をナイフのように鋭く変形したオトコ型の成蟲がそこにいた。
「こいつ、オトコなのかそれにディーと同じように手を」
「あぁ、問題ない」
両手が塞がる。
ディーがオトコ型の腕を振り払い、体勢が崩れた所をすかさず、眉間を刺す。
オトコ型が崩れ落ちた。
「なっ、問題ないって言っただろ」
「シ、心配してねえよ」
ちょっと吃驚しただけだし
「ハイハイ、分かってるよ」
「なっ何を分かってんだよ」
「オレの心配をしてくれて、
ありがとう、ちゃんとアロは守るよ」
「ばか、心配してねえって言ってんだろ」
ハハハ
ディーが楽しそうに笑う。
「わかった、わかった、次来るよ、指示頼む」
「お、おう、任せとけ、次、オトコ型前方上2体」
「ははっ、イイね」
楽しそうにディーが跳躍して、オトコ型の上を取り、2体同時に脳天を刺して瞬殺した。
最後の錫杖を刺す場所に着いた時、それは結界のライン上にいた。
結界を張る際に遮蔽物があってはいけないのに。
「これが、ディーが言ってた大型か」
「いや、オレの戦った大型はこれより、ふたまわり小さいな」
「それは、大型なのか、これを見たら中型だな」
10階建てのビル位あるだろうか、俺もポカンと口を開けて見上げた。
「とりあえず、弱点の頭を狙って見るか」
「届くのか、ジャンプして届く高さじゃないだろ」
「やってみるしかないだろ」
ディーは駆け出して跳ねた。
巨大な蟲人の膝を蹴って跳ねる。
腕に乗って走る。
巨大な蟲人がゆっくり動いて、腕を走るディーに目掛けて、蚊を叩くみたいにゆっくりした動きで叩く。
手が迫る前に跳躍して、肩に着地し、跳躍、頭を軽く超えるくらいジャンプして落下、その勢いのまま特殊スーツで、巨大蟲人の脳天を貫いた。
腕まで刺してトドメを刺す。
巨体が揺れる。
「ディー、こいつ倒れるぞ」
ディーは結界の内側に倒れるように蹴って跳躍した。
巨大蟲人が倒れると土煙が舞う中、地面がゆれて、轟音が響いた。
「やったな」
「あぁ、だか」
返事に落胆が見える。
「どうした? 」
「それが、頭の傷口から大量の卵が出でちまった」
「ディー気を落とすなよ、また倒せばいい」
ディーは思い切り大きなため息をついた。
「よし、最後の錫杖突き刺すぞ」
気を取り直したディーが、最後の錫杖を地面に突き刺した。
「よし、第一任務完了だな」
「おう、今日は、あと二重結界と最終結界の間にいる、ムシ退治して終わりだな、っとその前に一回安全な所まで出よう」
「いいけど、どうした?」
「腹減った。アロを食わせろよ」
「そうだな俺も腹減ったし、安全圏まで移動しようか」
ディーは飛ぶように走った。
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