第139話 エピローグ

 聖都でセーラとケンヤにあった翌日、アスカは王都でライアット教授と会う約束をしていた。

 教授と会うのはお昼を過ぎてからなので、午前中は地竜王アースロード風竜王ウインドロード死霊王ゴーストロード昆虫王インセクトロードに会いに行くことにする。

 そして、彼らにスキルクリスタルをいくつか渡し、もし人間族がピンチに陥った時、そのスキルクリスタルを実力に見合ったものに渡し助けてあげて欲しいとお願いした。


 それからハンクに会いに行き、ギルドから抜けることを告げギルドカードを返却した。ハンクは突然のことに驚いていたが、アスカの決意が固いことを知るとそのギルドカードはいつでも取りに来ることができるように、ギルドで保管しておくと言ってくれた。優しいなハンクも。


 その後すぐに約束の時間になったので、ライアット教授の研究室を訪れる。





「やあ、アスカ君。魔王討伐お疲れ様。この学院から君のような優等生が現れて活躍してくれるのは、とても嬉しい限りだよ。ところで、今日はどういった用件かな?」


「はい、実は学院を辞めようかと思いまして、それを伝えに来ました」


 明るく挨拶したライアット教授だったが、アスカの深刻そうな顔を見て真剣な表情で話しを聞き始めた。


 アスカは自身が転生者であることや、この世界でどのように生きてきたか、そしてレベルやステータスなど今までずっと隠してきたことを打ち明けた。そして、あまりに強くなりすぎたため、自分はこの世界にいないほうがいいのではないかと考えるようになったこと。

 魔王の死ぬ間際の言葉が決定打となり、この世界から去ろうとを決意したこと。お世話になった人にお別れを言うために一人で旅をしてきたことを堰を切ったように、涙を流しながら一気に話した。


 そんなアスカの話を、ライアット教授は時折頷くだけで静かに聞いてくれた。そして、アスカが話し終えた後に『今まで我慢してきてつらかっただろうに』と優しく慰めてくれた。


「この世界を去るということが、自ら死を選ぶということならそれは絶対に許すことはできない。しかし、そうではないのであれば、君の考えは尊重されるべきだと考える」


 ライアット教授の言葉は厳しい言い方をしているが、アスカの気持ちをきちんと汲んでくれていた。


「ありがとうございます。私なりの方法でこの世界を去るつもりなので、教授の言う通り自ら死を選ぶと言うことはありません」


 アスカはそう断言するが――


(アスカ、それは半分は嘘だな)


 アスカは俺の言葉を無視して、ライアット教授に一つのお願いをする。


「ライアット教授には、これを受け取って欲しいのですが……」


 そう言って差し出したのは一冊の本だった。


「これは?」


 その本を受け取り内容を確認したライアット教授は、驚きのあまり言葉を失い夢中になってページをめくっている。


 それはアスカが何日もかけて完成させた本で、アスカが知り得た魔法とスキルの全てが記されている。究極魔法や複合魔法、魔力増大など、世の中に知れ渡ったら危険なことになるかもしれないスキルも全て書き残した。


「教授の研究に、その本を役立ててください」


「こ、この本はこの世界を変えてしまうほどの存在になるかもしれない。しかし、これを管理することが、君の担任である私の役目なのかもしれないな。この本のことは任せてくれ」


「ありがとうございます。それでは後のことをよろしくお願いします」


「そうだな。もし、またこの世界に戻ってこれるようなことがあればいつでも訪ねてくれ。君は居場所がないと思っているのかもしれないが、君の周りにいた人達は私も含め、間違いなく君の居場所はこの世界だと思っているだろうから」


その言葉に再び涙を流すアスカ。


「はい」


アスカはその一言を言うだけで精一杯だった。





(アスカ、本当にいいのか?)


 学院を後にした俺達2人は最初に転生してきた森の中にいた。


(うん、もう決めたことだから。でもお兄ちゃんを巻き込むことになってごめんね)


(それは構わないさ。お前と一緒にいなければ、この人生に意味はないからな。まあ、スキルだから人生っていうのかどうかわからないけど)


(あはは、その言い方最後までお兄ちゃんらしいね!)


(まあな、スキルになってもそこはかわらないさ)


(最初、ここに来た時、本当にひとりぼっちだと思ったからブラックウルフに襲われた時、もう死んでもいいやって思ったんだ)


(ああ、知ってるよ)


(でも、お兄ちゃんが一緒にいてくれて本当によかった)


(俺もお前が生きていてくれて良かったと思ったよ)


(上手くいったら次の世界でも一緒にいてくれる?)


(もちろんだよ)


(でも、失敗しちゃうかもね)


(そん時は一緒に天国に行こう。父さんや母さんが待ってるだろ)


(そうだね。それもいいかもね)


(俺としては上手くいって欲しいけどな)


(……よし、それじゃあ、お兄ちゃん準備はいい?)


(俺はいつでもいいぞ。ただ、周りの迷惑にならないように飛んだ方がいいかもな)


(うん、わかった)


 そして、アスカが空高く上って行き、一つの魔法を自分に唱える。治癒の究極魔法――


転生リンカーネイション!」


 自分自身に転生の魔法をかけて、この世界で最後となる魔法を唱える。


暗黒物質創造クリエイト・ザ・ダークマター


 闇操作究極魔法、暗黒物質創造クリエイト・ザ・ダークマター。世の中にある全てのものを分解する暗黒物質で覆われた空間を、自らを中心に作り出す。その暗闇に触れた部分からどんどんとアスカの身体が分解されていく。


(おやすみなさい。お兄ちゃん。また明日)


(ああ、おやすみアスカ。また明日)






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


以上を持ちまして、完結となります。

趣味で書いた、自己満足のような物語に、最後までお付き合いいただきありがとうございました。m(__)m

また別の作品でお会いしましょう!

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転生したのは妹で俺は妹のチートスキル ももぱぱ @momo-papa

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