第136話 エピローグ⑤
次の日、アスカはベン&ソニアマートを訪れた。
「おはようございます。ベンさん、ソニアさん、いらっしゃいますか?」
販売所の中に入って、声をかけると奥からベンとソニアが現れた。
「あっ、アスカさん、おはようございます! 随分と久しぶりですね!」
ベンが汗をぬぐいながら笑顔で答える。
「ちょっと時間がかかるクエストを受けてまして、こちらに来ることができませんでした。ところで、何か足りない商品はありますか?」
魔王討伐に行っている間、商品の補充ができなかったので、まずは在庫を確認する。ベンによると高価な薬は時々売れるくらいで、在庫はまだ十分にあるようだ。
逆に
そこで、午前中は店の様子を見ながら、
そしてこの時、嬉しい話しが聞けた。何とソニアはたくさんの薬を扱っていたので、スキルの選択肢に錬金が現れたのだ。ただ、レベル上げに行く機会がないので、取得することはできていないのだが。
「それじゃあ、午後はお店をお休みにして、3人でレベル上げに行きませんか?」
もうすぐ商品を届けることができなくなるから、ソニアが自分で作ることができるようになれば、お店もやっていけるだろうという判断だ。
突然の申し出で戸惑っていたようだが、来店者が少なかったのとスキルへの興味が勝ったのだろう、二人ともレベル上げに行くことを承諾した。
場所はチックの森で、アスカが魔物を倒している間、ベンとソニアには素材を集めて貰うことになった。
そうと決まれば、すぐにお店を閉めて、お昼ご飯を食べてから出発する。まずはソニアが錬金Lv4になるレベル65を目指すのだ。
「それでは、この辺り一帯に結界を張りますのでその中で素材を集めていてください」
そう言ってアスカはすぐに結界を張る。
「レベルってそんなに簡単に上がるものなのでしょうか? 確か、戦闘に参加して魔物を倒すのにある程度貢献しないと、経験値が入らないはずでは?」
ソニアが意外と博識なところを見せる。
「そうですね。普通ならそうなのですが、私の場合、そこは大丈夫みたいで……」
「ソニア、アスカさんを普通の物差しで測ってはダメだ。アスカさんが大丈夫と言ったら大丈夫なんだよ」
ベンが謎の説得をし、なぜか盛大に頷いているソニア。
(こいつらアスカをなんだと思ってるんだ?)
役割分担ができたところで、アスカは早速狩りをベンとソニアは素材集めを開始する。そして……
「ソニア、気のせいかファンファーレが鳴り止まないんだが……」
「ベン、それは気のせいじゃないわ。私の頭にもファンファーレが鳴り響いていて、もの凄い勢いでレベルが上がっているわ」
アスカがB~S級の魔物を片っ端から狩りまくっているので、開始、10分でソニアのレベルは30を超えた。もともと18レベルだったベンは35を超えている。そして、ものの30分もしないうちに辺りの魔物が狩り尽くされてしまった。
「……あのう、アスカさん。葉っぱを集めてたら、もうレベルが70になってしまいました。レベル上げってこんなに簡単なものなのでしょうか?」
レベル上げをしたことがないソニアはこんなものだと思っているのだろうか。
「どうなんでしょう? いつも割とすぐに上がってましたが、今日は特に早いかもしれませんね」
アスカはレベルが上がらなくなって久しいので、もうどんなものか忘れてしまったようだ。
「いやいや、早すぎでしょう……レベル70の薬屋さんって何の冗談でしょうってレベルですよ!?」
(確かにベンの言う通りだが、スキルをLv4にするためには66まで上げる必要があるからな)
(ちょっと早すぎたかもしれないけど、時間が余った分、ソニアさんと一緒に薬を作ってみるね)
(ああ、それがいいかもな)
「それじゃあ、スキルが貯まってると思いますので錬金をLv4まで上げちゃってください!」
アスカが言うとさも簡単なことのように聞こえてしまうのだが――
「そ、それでは・・・ 上がりました! 錬金のスキルが一気にLv4になりました! あー、スキルってこんな感じなんですね。作れる物と素材と作り方が頭の中に浮かんできます!」
スキルを持てたのがよっぽど嬉しかったのか、いつも以上にハイテンションで喜んでいる。
「ベンさんは何のスキルを上げるのですか?」
「うーん、実は迷っていまして。素材を集めやすくするために武術系のスキルを上げるか、ソニアと一緒に錬金スキルを上げるか、逆に他の生産系のスキルを上げようか、もう少し考えてから決めたいと思います」
確かに限られたポイントだから有効に使うべきだろう。今後の店の方向性を決める上でも重要な選択になりそうだ。
「それでは、お店に戻ってスキルを試してみましょう!」
アスカの言葉に従って、3人は店へと戻るのだった。
「できました!」
店に戻ってからすぐに錬金を始め、ソニアは3時間ほどでLv1からLv4までの薬を一通り作り終えた。
「これで私が商品を作らなくても、お店はやっていけそうですね」
アスカが何気なく放った一言に、ベンとソニアが凍り付く。
「えっ!? アスカさん、もうこのお店にこないのですか?」
ベンがもの凄く不安そうな顔で聞いてくる。
「はい、実は今日はそれを伝えに来たのでして……」
この後はベンとソニアの説得合戦が始まり、最後にはソニアが泣きながら訴えてきたが、アスカの意思は固かったようで、結局、全員泣き出して涙のお別れになってしまった。
(アスカ、本当にいいのか?)
(うん。もう決めたことだから)
俺達はあと何日一緒に居れるのだろうか……
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