第133話 エピローグ②
セルビアに着いたアスカが、クロフトと別れ真っ先に向かったのは冒険者ギルドだった。アスカが初めてパーティーを組んだ、レスター達と出会ったギルドだ。
「いらっしゃいませ……あら? アスカさんじゃないですか?」
そう声をかけてくれたのは、アスカが冒険者登録の時にお世話になった、美人の受付嬢だった。
「お久しぶりです。あの時はお世話になりました」
そう言ってアスカは頭を下げる。
「久しぶりですね! あれから王都に行ったのですよね? ランクは上がりましたか?」
「はい、おかげさまで少しは強くなれました!」
それからこの町の状況を教えてもらった。何でも、レスター達3人パーティーはランクがAまであがり、このギルドでも上位ランカーとして活躍しているそうだ。現に今も、A級のネメアライオンを狩るクエストに出かけているらしい。
「情報ありがとうございます。レスターさん達に会いに行ってみます!」
レスター達とよく狩りに来たソーマの森に入る。あの時は外側ばかりで狩りをしていたので、中心部に行くのは初めてだ。ソーマの森はかなりの広さがあるが、アスカの探知はすでにレスター達の居場所を捉えていたのだが――
(お兄ちゃん、これって……)
(うん、3人の周りにA級の魔物の反応が5体。わざとじゃなければ、結構ピンチなのかも?)
(急いで行ってみる!)
言うが早いか、アスカは重力操作で空を飛ぶ。確かに森の中を走るより、空を飛んだ方が早いからね。
「おい! どうなってるんだこれは!?」
真っ赤な刀身の剣を持った、金髪のイケメン戦士が慌てた様子で声を張り上げている。
「ごめんなさい。でも、僕の探知はLv1だからA級の魔物となると、動きが速すぎて探知にかかった時にはもう目の前にいる感じなんだよね……」
戦士の文句に答えたのは、赤髪のこれまた真っ赤な弓を持った青年だ。
「あんた達、おしゃべりはいいから集中しなさい。じゃなきゃ、ここで人生終わっちゃうわよ!」
そう突っ込んだのは金髪のサラサラヘアーで、尖った耳がちょこんと出ているエルフの魔法使い。手には真っ赤な指輪をはめている。
レスター、エリック、シーラの3人組だ。
どうやら彼らは金色に輝くネメアライオンを見つけ、戦闘を開始したようだが、近くにいた同じくA級のインビジブルタイガーには気がつかなかったらしい。
1体のネメアライオンに2体のインビジブルタイガー、さらに逃げ回っているうちに、キマイラ2体も追加されたというところだろう。
「ネメアライオンは僕が相手をする。エリック、インビジブルタイガーの居場所がわかるのは君だけだ。2体を何とか足止めしてくれ。シーラ、キマイラ2体任せてもいいか?」
「「厳しいけど、やるしかない!」」
レスターの作戦とも呼べない指示に、2人の声がハモる。かなり厳しい状況だが、諦めてはいないようだ。
おそらくレスターが1対1でネメアライオンを素早く倒し、加勢に行く作戦なのだろうが、それよりも早く2人がピンチに陥る。
シーラは
エリックは
「きゃあ!」
「うわぁ!」
2人が同時に悲鳴を上げる。
「シーラ! エリック!」
ネメアライオンに衝撃斬に放ち、大きく吹き飛ばしてから振り向いたレスターの視界に入って来たのは、2人が魔物に噛まれる寸前の光景だった。
ガキン!
もうダメだと思い、思わず目をつぶった2人はいつまで経っても痛みが来ないので、そーっと目を開けると、大きな牙が何かに阻まれ口を閉じることができない魔物が目の前にいた。
「間に合って良かったです!」
何が起きたかわからない3人だったが、上空から懐かしい声が聞こえたのでハッとして上を見る。
「「「アスカ!?」」」
宙に浮かぶアスカを見て、3人の驚きの声が重なった。
「みなさん、お久しぶりです。レスターさん、おふたりは私が結界で守りますので、ネメアライオンの討伐をお願いします!」
その言葉で、3人とも戦闘中だったことを思い出し、すぐに気持ちを切り替えたようだ。
レスターは再び距離を詰めてきたネメアライオンに、巧みな剣技で応戦していく。並の剣では刃が通らない金属のような黄金の皮膚も、レスターの真っ赤な剣を防ぐことはできない。
ネメアライオンは、前足を中心に切り裂かれていき、徐々に動きが鈍くなっていったところを断鉄斬で首を落とされた。
シーラも結界で守られているとわかったので、防御は無視して大胆に至近距離から
エリックもシーラと同様に、結界に阻まれているインビジブルタイガーに至近距離から
不利を悟ったのか、残りのキマイラとインビジブルタイガーは一目散に逃げ出したようだ。目的のネメアライオンは討伐しているので、ここは見逃しても大丈夫だろうと判断し、アスカは3人の前に降り立った。
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