第111話 Sランク冒険者の集い
アスカがピリス村を救った次の日、クロム以外のSランク冒険者が王宮の一室に集まっていた。クロムももうすぐ到着するということで、6人は彼を待ちながら談笑していた。
「のぅ、サンドラ、ピリス村の噂は聞いたかえ?」
炎帝グリモスが、仕入れたばかりであろう情報を雷帝サンドラに確認している。
「ええ、聞きましてよ。何でも普通の村人が、10数体の魔族を返り討ちしたというお話ですわよね?」
さすがはSランク冒険者、情報が早い。
「うむ。しかし、そんなことがあると思うかえ?」
「ちょっと信じられませんよね」
(おいおい、お前らは魔法の勉強してないのかい?)
「光操作Lv5魔法、
さすがに同じ光操作持ちの聖女セーラは気がついたのだろう、2人の会話に入っていく。
「おおぅ、あの魔法があったか。確かにあれなら可能性はあるな。さすがは聖女だぞえ」
グリモスも、魔法の存在自体は知っていたようだ。
「でもよう、じいさんや子どもが魔族を倒せるまでになるもんなのかい? その魔法は?」
ラグナも興味を持ったのか、この話題に食いついてきた。
「見たことある人はいないでしょうから、何とも言えませんね。過去の文献から、『光操作のLv5魔法には、そんな効果があったのではないか』と言われている程度の情報ですから」
ラグナの疑問にセーラが答える。
「そんな魔法を使えるやつがいるなら、ぜひ魔王と戦う時に使ってほしいもんだ」
そんな発言をしたラグナと、実際その魔法を使ったアスカ以外のメンバーがハッとした顔をして、『それはそうだな』なんて呟いてる。
「やあ、お待たせしました」
その時、『ガチャ』っとドアが開き魔剣王子クロム・レイが部屋に入って来た。
クロムが席に着くと再び、先ほどの話題に戻る。
「しかし、わしら以外にLv5魔法を使える者なんぞおるのかのう?」
現在、Lv5魔法が使えるとされているのは、ここにいるグリモスとサンドラとあとは……
「聖都に1人いますね、転生者の方が……」
セーラが、ちょっと嫌そうな顔をしながら答えた。
(わかるぞ、その気持ち!)
「ああ、あのタチバナ・ケンヤというやつか!?」
ラグナも知っていたようだ。
「はい。性格に少々難がありましたが、氷操作と身体強化のスキルがLv5でした」
(あれは少々なのか?)
「「「えっ!?」」」
ケンヤのことを知らなかったメンバーの声が重なる。
「Lv5スキルが2つとは、このわしよりも強いじゃろうが」
「そうですわよね。私も魔法でしたら対抗できますが、身体強化Lv5に勝てる自信はございません」
Lv5持ちの2人も、ケンヤのスキル構成には、一目おかざるを得ない。
「なぜ、その彼はここに呼ばれていないのかな?」
クロムは来たばかりだが、持ち前の人当たりの良さでぐいぐい会話に参加してくる。
「それが、依頼は確かにあったようで、最初は偉そうに『俺がひとりで倒してやる!』って息巻いていたのですが、エンダンテ王国との学院対抗戦の後からおかしくなっちゃいまして、何を聞いても『ごめんなさい』しか言わなくなっちゃったのですよ」
(…………アスカ、やっぱやり過ぎたか?)
(…………うん。今度、謝りに行ってくる)
「なんじゃそりゃ。まあ、いないやつは置いておくとして、俺らの知らないところでもLv5魔法を使えるやつがまだいるのかもな」
そんなラグナの言葉に、最初の会話に参加していなかったクロムが聞き返す。
「ん? 何の話ですか?」
「いやなあ、昨日、ここの東にあるピリス村が魔族に襲われたんだが、普通の村人達が全員やっつけちまったって聞いたんだ。それで、誰かが
ラグナが先ほどの話をまとめて説明する。
「へぇー、そんなことがあったのですか。というか、アスカって
「「「「「はぁ!?」」」」」
見事に5人の声がハモる。今までずっと声を出していなかった、隠密のシルバも思わず声を出していた。
「何でそうなるのですか?」
サンドラがちょっと興奮気味でクロムに詰め寄る。
「あれ? 違うのかい? てっきりまたアスカがやらかしてくれたのかと思ったんだけど」
(ク、クロムの野郎! 余計なことを言いやがって!)
「む、そういえば俺の息子が『アスカっていうSランク冒険者によろしく言ってくれ』って言ってたな。何でも、『クランの武術大会の賞品に付与付きの装備を提供してくれたんだ』ってよろこんでたぞ」
「なんじゃ、お主はLv5魔法だけでなく鍛冶や付与までできるのかえ?」
「あ、あの、それは……」
アスカがグリモスの突っ込みの返答に困っていると、タイミング良くドアが開き頭に王冠を乗せた、きらびやかな衣装に身を包んだ初老の男性と、ここの騎士団と同じ黒いライトメイルと黒のマントに身を包んだ、赤い短髪で鋭い目つきの中年男性が入ってきた。
(ナイスタイミング!)
すぐに、ラグナとシルバ、クロムが立ち上がり片膝をつく。セーラは立ち上がるが軽く会釈をするにとどまっている。グリモスとサンドラは立ち上がることすらせずに片手を上げていた。
アスカはというと、誰を見習ってよいかわからず固まっている。
(アスカ、お前は黒ローブの時はふてぶてしくいって大丈夫だ!)
(うん、わかった。頑張ってみる!)
「ふっ、そこの2人は相変わらずよのう。まあ、お主等は冒険者達の頂点に君臨するSランク冒険者だ。お主達が、頭を下げなければならぬ相手などおるまいて」
グリモスとサンドラの無礼はいつものことなのだろう、国王もさほど気にした様子はなさそうだ。
「さて、せっかく集まってもらったのじゃ、近隣の村が襲われたという情報もあるくらいじゃから、あまり時間をかけても仕方がない。今回の依頼について早速確認をしてもらおう。グエンよ、頼んだぞ」
グエンと呼ばれた赤髪の男が、1歩前に出て説明を始めた。
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