第106話 死霊王ゴーストロード

 重力操作で空を飛び、SS級の魔物死霊王ゴーストロードの前に踊り出た。死霊王ゴーストロードの両脇にはロイヤルリッチが浮かんでいる。


 名前 死霊王ゴーストロード 死霊族 闇属性

 レベル 120

 ステータス

 HP 3800

 MP 5200

 攻撃力 1850

 魔力  2830

 耐久力 1930

 敏捷  1840

 運   1180

 スキル

 闇操作 Lv5

 風操作 Lv4

 氷操作 Lv4

 闇耐性 Lv5

 物理耐性 Lv3

 全状態異常耐性 Lv4

 鑑定 Lv3

 探知 Lv3

 限界突破 Lv2

 危険察知


「我の領域テリトリーを侵すのは汝らか?」


「……しゃべった!?」


 後ろの方でソフィアが驚いている声が聞こえる。魔物が人間の言葉を話すところを見たことがないのだろう。他のメンバーも似たような感じで驚いている。


「はい! ちょっとお邪魔しています」


 そんな中でも、アスカは相変わらずマイペースである。


「我らは侵入者には容赦せんぞ。汝ひとりで我らに立ち向かうつもりか? 後ろにいる仲間には助けてもらわなくてよいのか? どうせ汝が倒れれば、次はあの者達の番になるのだぞ。ならば一度にかかってきた方が、得策というものではないのか? クククッ」


「何か、よくしゃべりますね。私のことが怖いんですか?」


(あれ、あれあれ~? 何かこんなアスカちゃん見たことあるよ~。挑発アスカちゃん見たことあるよ~。どこだったかな……?)


「ふふふ、面白い。初めて来た人間だ、ゆっくりとかわいがってやろう!」


 そう言って、死霊王ゴーストロードは両手を広げる。その動きに合わせてロイヤルリッチが前に出る。


「それじゃあ、こっちも行きますよ! ハッ!」


 アスカが気合いのかけ声をかけると……


 ズガーン!


 ロイヤルリッチ2体が後ろに吹き飛び、岩壁に打ち付けられる。死霊王ゴーストロードはかろうじて持ちこたえたようだが、信じられないといった感じで明らかに動きが止まった。


「グッ、貴様! 何をした!」


「えっ? いえ、まだ何も? 強いて言うなら気合いを入れただけですが?」


「ふざけるな! 気合いでロイヤルリッチが吹き飛ぶわけあるか! さては風魔法だな!」


「そう言われましても、魔法なんかつかっ……は、は、ハクション!」


 アスカがくしゃみをすると、慌てて戻って来たロイヤルリッチの1体が爆発して消える。


「キーサーマー!! さては無詠唱で魔法を使っているな!!」


「あ、いえ、さっきずぶ濡れになっちゃったので、そのせいでくしゃみが……」


(やばいよ、やばいよー、冗談でくしゃみ1発で街が消えると言ったけど、本当にくしゃみ1発でS級の魔物を倒しちゃったよ……)


「ふざけるのも大概にしろよ! いいだろう我らも本気を出すとしよう」


「すいません。口元を手で押さえるのを忘れてしまいまして……」


(アスカちゃーん、相手が怒ってるのはそこじゃないと思うよ~)


 死霊王ゴーストロードは怒りで我を忘れているようだが、もう1体のロイヤルリッチは相棒がくしゃみし1発で消滅したのを目の当たりにして、少々腰が引けているようだ。それを感じたアスカは死霊王ゴーストロードのみに意識を向ける。そして、その死霊王ゴーストロードが唱えようとしている魔法は……


「《死の呪いカース・オブ・デス》!」


 闇操作Lv5、死の呪いカース・オブ・デス。有効範囲は狭いが、即死の呪いで相手を死に至らしめる凶悪な魔法だ。


「フッ!」


 アスカが吐いた息で、死をもたらす闇が吹き飛ぶ。


「…………」


「どうかしましたか?」


 急に黙りこくる死霊王ゴーストロードに、アスカが問いかける。


「何かおかしくない?」


「さあ? 何かおかしいことありましたか?」


(うーん、死霊王ゴーストロードの言葉に段々威厳がなくなってきたな)


「今、我が放ったのってLv5の魔法だよ?」


「はい、それがなにか?」


「我の魔力って2830だよ」


「へぇー、凄いですね」


「何でその魔法が『フッ』ってやっただけで消えちゃうのかな~?」


「はて? どうしてでしょう? 私の魔力が8000を超えてるからでしょうかね?」


(あー、それを言っちゃお終いだ)


「…………」


 案の定、死霊王ゴーストロードは後ずさりを始める。そして、もの凄い勢いで土下座をした。空中で土下座するとは、なかなか器用なことをするが――


「すいません。本当に失礼なことを言いました。許してください。もう悪いことはしません。というか、ずっとここに住んでいるので、悪いことはしたことないです」


(うーん、こうなっちゃったらアスカが取る行動は……)


「あのー、頭を上げてください。その、こちらこそ急に大人数で押しかけてすいませんでした。ちょっと最下層に何があるのか興味があったもので……」


(そうなるよね、アスカ優しいもんね)


「ここには大したものはありませんが、その辺の壁にはオリハルコンが埋まっていると思います。必要でしたらどうぞお取り下さい。場所はこのロイヤルリッチがお教えしますので……」


 どうやら死霊王ゴーストロードは物で釣る作戦に出たようだ。 


「それはそれは、丁寧にありがとうございます」


 話がついてしまったところで、アスカはみんなを呼び寄せた。その様子をみて、恐る恐る出てくるキリバス達。

 何が起こったのかをアスカが説明すると、緊張で身体をこわばらせながらも納得してくれたようだ。アレックスは開き直ったのか、ロイヤルリッチに案内してもらいながらオリハルコンを採掘している。


 みんなでその様子を、土操作で作ったテーブルの上でお茶をしながら眺めている。お茶をしながら少し死霊王ゴーストロードとお話をして、鉱石を掘っていたアレックスが満足したところで帰ることになった。


「それじゃあ、死霊王ゴーストロードさんまた今度!」


「はい、いつでもお待ちしておりますアスカ様」


(何だか、できる執事みたいになっちまったな)


 そんな挨拶をして地下迷宮ダンジョンを後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る