第103話 ダンジョン都市『フォーチュン』
「クラン"ホープ"様、12名ですね。……"ホープ"!? あの王都で有名なクラン"ホープ"の皆様ですか!?」
ここはフォーチュンのギルドの受付で、
「王都には他に"ホープ"という名前のクランはないから、その"ホープ"だと思うけど――」
「まあ! こんなところでお会いできるとは思ってもいませんでした! あなたはキリバス様ですか? 握手してもらえないでしょうか?」
キリバスは突然の出来事に困惑しているが、そこは爽やかイケメンだけあって、しっかりと握手に応じている。
クラン"ホープ"の噂は、ここフォーチュンにも届いており、メンバー全員がAランクという今1番勢いのあるクランとして人気急上昇中なのだとか。
「人気が出るのは悪い気はしないけど、ああも絡まれるとちょっと疲れちゃうね」
ジェーンの言うとおり、ギルドで対応した受付嬢が大きな声を出してしまったため、近くにいた冒険者達が興奮して集まってきてしまったのだ。
特に人気があったのはキリバス、ソフィア、フローレン兄妹でキリバスは女性からソフィアは男性からの人気が圧倒的に多かった。
フローレン兄妹はその見た目の人気もさることながら、エルフの地位向上に貢献しているようで、同郷の人達から人気が高かった。
逆にアレックスはドワーフ族からの人気が高いが、そもそもドワーフ族はそれほど数がいないので、人数という面で行くと不利かもしれない。
ミスラやメリッサもその気の強さから、強さを求めるマッチョな男性からの支持が多く、トーマやジェーンは落ち着いていて知的な感じがするのか、年上の冒険者からの声援が多い。
そしてゴードンは……最近、ちょいちょいアスカ好きをアピールしてくるが、近くにいない人間にはわからないからだろう、寡黙な男性としておとなしめの女性から意外と人気があるようだ。
そして、ミーシャは最近入ったばかりだが、猫耳だけにコアなファンが急増しているそうだ。
最後にアスカはというと、クラン"ホープ"としての活動実績がなく、『可愛い子がいるけど誰だろう?』といった不思議な感じになっている。
周囲からの羨望のまなざしを受け、
ここフォーチュンの
70層からはS級のロイヤルリッチが現れたと報告があるが、そこで最深記録が途絶えているので、その先に何が待ち受けているのかは、今だ解明されていない。
これらの魔物は、低級であればまだいいが、B級以上となると魔力を帯びた武器でないと討伐が厳しくなっていく。もちろん、聖属性を持っていれば大活躍間違いなしであるのだが。
(今のハンクにぴったりの
まず"ホープ"のメンバーが驚いたのは、ミーシャの戦闘力の高さについてだった。ミーシャは、探知で見つけた魔物を、全て弓矢の一撃で仕留めている。弓には地属性が付いているので、死霊系の魔物も問題なく倒してしまうのだ。
「アスカから聞いてはいたが、実際目にすると凄まじいな」
アレックスがミーシャの戦う姿を見て、しきりに感心している。
「武器や防具の性能も半端ないけど、弓の技術も相当なものだね」
口数の少ないトーマにもそう言わせる、ミーシャの技術の高さに誰もがこう思った。
(((武術大会の後でよかった……)))
50層まではミーシャの独壇場で、他のメンバーは雑談をしながら、ミーシャの後をぞろぞろ付いて行くだけであった。
「みなさん、そろそろ出番です」
50層を超えるとA級の魔物が出始め、数も一気に多くなる。ここに来てようやく、他のメンバーも武器を抜く。
ってかこいつら武器も抜いてなかった。
ここからは、ミーシャのすぐ後ろに魔法使い達が陣取り、ミーシャの奇襲に合わせ魔法を放っていく。10体くらいの魔物の集団なら、最初の攻撃で全滅させてしまうくらいの過剰な火力だが、魔法を放つ者も、相性に合わせ交代するのでMPの消費もそれほど多くならない。2~3回これを繰り返したところで、戦士の皆さんは再び武器をしまってしまった。
「70層まで出番はなさそうね」
ジェーンが気の抜けた声で言う。
70層って今のところの最深到達地点なんですけどね。このクランもいい感じに常識はずれになってきたな。
そして、ジェーンの予想通り70層までミーシャと後衛陣の先制攻撃だけで全て倒しきってしまった。
「さて、ようやく出番かな」
そう言いながらキリバスが剣を抜く。
「身体が固まってしまいました」
ジェーンはそう言いながら、槍を使ってストレッチをしている。
「やっといいところを見せられる」
そう口にするゴードンは、自慢の斧を振り回しながらミーシャとアスカをちらちら見ている。
(何、『どっちにしようかな』みたいな顔しとるんじゃい! どっちの可能性もないわ!)
そんな余裕のある会話をしていたメンバーが、次のミーシャの一言で瞬時に気を引き締める。
「S級が2体、A級を引き連れて待ち受けています」
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