第98話 アスカ&ミーシャ到着
〜side ???〜
(確か、今日この会場にいる治癒使いの最高Lvは3だったはずだな。であれば――)
ケンヤは、キリバスをどう料理するのか決めたようだ。
「キリバスだったな。俺がいなければお前が最強だったかもしれない。でも残念、その腕では俺には勝てないよ」
そう言い終わると同時に、ケンヤの動きが急に速くなった。
「くっ!」
キリバスの口から苦しい声が漏れる。ケンヤの動きに必死についていこうとするが、どんどん速くなるケンヤの剣を捌ききれなくなっていく。キリバスは防御を全て結界に任せ、カウンターを合わせにいった。
しかし……
「ははは。無駄無駄! その結界を壊させてもらうぞ!」
そこからはケンヤの独壇場だった。必殺技を目にもとまらぬ速さで連続で繰り出し、どんどん結界を削っていく。もともと多くないキリバスのMPはどんどん減っていき……
バリィン!
ついにキリバスの結界が壊れる。
「こいつでお終いだ! 断鉄斬!」
「ぐわぁぁぁ!」
ケンヤの光速の一振りが、キリバスの右足を斬り飛ばした。
「これで決着だな。誰かが通りかかって助けてくれることを祈るんだな。アディオ~ス」
キリバスとケンヤが戦っている最中に、ノアは下層へとどんどんと降りていった。聖都のメンバーはアレックスとクラリスに気を取られ、ノアには気づかず素通りさせてしまう。そのままノアは地上へと降り立ち、審判員に証を手渡した。
「ふむ、間違いない。この勝負、エンダンテ王国の勝利!」
勝利宣言と共に、エンダンテ側の応援団は大騒ぎになる。一方、クラリリス側はその様子をニヤニヤしながら見守っていた。
「明日が楽しみだな」
そんな声まで聞こえてくる。
勝敗が決したので、
「すぐに治癒が使える者をよこしてくれ!」
「「「キリバス!!」」」
慌てて駆け寄る王都側のメンバー。ソフィアとクラリスが懸命に治癒の魔法をかける。傷口は塞がっていくがLv3の治癒では足は元通りにならない。
「この聖都にはクラリリス教会がある。そこにいけばLv4の治癒の使い手が見つかるだろう。ま、金はべらぼうにかかるがな」
ケンヤはそう言い残して、笑いながら去って行った。
「くそ!」
メリッサがケンヤの後を追うように飛び出そうとするが――
「まて!」
ゴードンに肩をつかまれ、引き戻された。
「離せゴードン! あいつは絶対許さない!」
メリッサが、ゴードンの手を振り払おうと暴れる。
「お前が行ってもけが人が増えるだけだ。あいつを許せないのはみんな同じだ。だが仕返しするのは今じゃない。我慢しろ!」
「でも……」
「メリッサさん、彼を倒すのは私に任せてもらえませんか?」
「「「アスカ!!」」」
〜side ショウ〜
アスカが到着した時はすでに昼を過ぎていた。すぐにお宝探しの会場を探すが、聖都の外にあると聞きミーシャと一緒に再び聖都の外に出て、この
ノアが証を持って出てきたところを、客席で見てほっとしたのもつかの間、キリバスが片足を失って出てきたのだ。それを見て慌てて駆け寄ったところに、ケンヤのあの一言でアスカも一気に怒りの頂点に達したが、先に飛び出そうとしたメリッサを見て、どうにか落ち着くことができたようだ。
「
アスカの魔法で、キリバスの足が復元する。
「すまない、アスカ。恥ずかしいところを見せてしまった」
足が元通りになり、立ち上がりながらキリバスが頭を下げた。
「キリバスさんが謝ることなんてありません。私は本当に怒ってます。もう泣いても許してあげませんからね。明日、絶対彼に謝らせてやるんだから!」
(やばい! 全ステータス6800超えのアスカちゃんが怒ってる! アスカ、周りを見るんだ。みんなドン引きしているぞ!)
実際、アスカの殺気が周囲全体を包み込み、キリバスの足が復元したことに驚いていたはず観客達が、どんどん失神していく。メリッサも先ほどの怒りはどこへやら、SS級の魔王にでも睨まれたかのようにおびえていた。
「あ、すいません。ちょっと怒りが抑えられませんでした。てへっ!」
「「「殺気が全然可愛くない!」」」
その夜、久しぶりに全員揃った"ホープ"のメンバーは宿でお互いの状況を報告する。
キリバス達はミーシャの成長ぶりに驚いて、口をあんぐり開けている。
「2日間でレベル96ってどうなってるの……」
ミスラは思わず本音が口をついたようだ。自分達が今まで、どれほど苦労してレベルを上げてきたかを考えると、もう常識外れも大概だろうと思っているのだろう。
「アスカさんの教え方が上手だったので……」
ミーシャもあまり努力せずにレベルが上がってしまったことに、申し訳なさを感じているようだ。
「教え方は関係ないと思うが……」
トーマはすでに諦めた顔をしている。
「それでそちらの状況はどうなってますか?」
アスカが嫌な予感を感じたので、話題を変える。
そこで、キリバスが昨日のチーム戦の様子と今日のお宝探しであったことを詳細に説明してくれた。
「転生者がそんなに強く、そして残虐だとは思ってませんでした。遅くなってすいません」
この2日間の苦労を聞き、アスカが頭を下げた。
「アスカさんがいなくても勝てると言っておきながら、結局アスカさんを頼ることになってすいません」
自分達の不甲斐なさに、逆にソフィアがアスカに謝ってきた。
「いえ、転生者がいるなんて予想外でしたから。ましてやその転生者が、Lv5スキルを2つも持っているなんて、誰も予測できないですよ」
アスカとソフィアの慰め合いが続いているが……
「それで、アスカはあの転生者に勝てそうかい?」
キリバスが1番肝心なところを確認する。
「はい! 怒っているので問題ないと思います」
(((怒っているかは関係ないと思うけど……)))
俺も含め、その場にいるみんなの思いが一致した気がしたのだが、アスカの殺気が怖くて誰も突っ込めない。
「僕らからすれば信じられないけど、アスカが言うんだから大丈夫なんだろう。それで、作戦はどうしようか?」
(作戦って必要なのかな? お兄ちゃん、どう思う?)
(そうだな。確か、明日の会場はツェルト湿原だったよな。
(多分死んじゃうと思う。Lv6魔法は瞬間的なものじゃなく、継続的なものだから結界を張っても、すぐにMPが切れて壊れちゃうと思う)
(だよなー。それじゃあ、面倒くさいけど1人ずつ倒してく?)
(探知を使えばそれほど苦労しないかもしれないけど、もっといい方法ないかな? ケンヤって人が泣いて謝るような)
(【氷の支配者】って言われてるみたいだから、凍らせるかい?)
(あ、それがいいかも。そうすればもう恥ずかしくて、【氷の支配者】なんて言えなくなるかもね!)
「作戦を思いつきました。明日、ケンヤって人を凍らせます!」
「「「…………」」」
「すまない。それのどの辺りが作戦なのか説明してもらっていいかな?」
キリバスが、みんなの疑問を代表して聞く。
「ごめんなさい。説明不足でした。開始早々、大規模魔法で凍らせますので、みなさんは私が作った土のドームの中で待っててください。結界も張りますが、寒いと思いますのでミスラさんは炎操作で暖をとっておいてください」
これではまるで聖都側の作戦と一緒だが、先ほどのアスカの殺気を考えると、誰も外に出たいとは思っていないようだ。
「わかった。アスカに頼りっきりになるけど、転生者は僕らの手には負えないから任せるよ」
もうみんな転生者への怒りはなく、逆に同情の気持ちすら湧いてきてしまっている。
そうして夜は明け、ケンヤにとって絶望の1日が始まる。
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