第97話 お宝争奪戦
〜side ???〜
対抗戦2日目。本日は、聖都から少し離れたところにある、
「おはよう、エンダンテ王国のみなさん。昨日は、悔しくて眠れないなんてことはなかったかい?」
ケンヤがキリバス達を見つけるや否や、いらっとくる
「おはよう、ケンヤ……さんかな? 昨日は剣での決着が付けられなくて残念だったよ。君は【剣帝】の称号にも興味があるようだったからね」
キリバスは作戦が成功する確率を上げるために、開始前から挑発する作戦に出る。
「あはは。まさか、あの状態から勝てたとは思ってないよね?」
「さあ、どうだろうかな。確かめたければ、今回の対抗戦が終わったあと個人的に勝負しようかい?」
「ふっ。そんな必要はないさ。この中での戦闘は禁止されていないからね」
キリバスは、上手にケンヤを誘導していく。
「そのタイミングがあれば、僕からも仕掛けさせてもらうよ」
キリバスはそれだけ告げると、ケンヤに背を向けて
この
1階が非常に広く、上にあがるにつれ段々と狭くなっていく。つまり、上にあがればあがるほど敵と遭遇する確率が高くなるのだ。
実はこの
この
「それでは2種目目のお宝争奪戦を行う。聖都側がこの勝負に勝てば、明日を待たずに神聖王国の勝利が決定する。各チームとも準備はよいか?……それでは始め!」
開始の合図とともに、両チームとも一斉に走り出した。証が隠されている50階までは、スピード勝負だからだ。身体能力から考えると、ケンヤが1番のはずだが、どういうわけかケンヤは手を抜いているように見える。そのおかげで、レベルの高い王都側のメンバーが、先に50階に到達した。
聖都側のメンバーは
まずはアレックスが仕掛けた。まだ証は見つけていないが、52階から隠れながら降りていく。ようやく50階に到着した聖都のメンバーの1人が、こっそり下に降りていくアレックスを発見した。彼らにとってはアレックスは格上になるので、一対一を避けるため3人が後を追いかけていく。
たくさんのB級の魔物と、時折現れるA級の魔物を倒しながら、個々で証を探す他の王都のメンバー達。
その中でもノアは、証を隠しに行った教授達をよく観察していた。王都側からはライアット教授とミル教授、聖都側からは名前はわからないが、年配の紳士的な教授と若い熱血漢あふれる教授が一緒に証を隠しに行った。
そこでノアは考えた。ただの戦闘ならケンヤがいる聖都側が有利だが、捜し物となると話は別だ。魔物がいる場所での捜し物はレベルの高い人間が複数いる方が有利に決まっている。
つまり、上層階に行けば行くほど王都側が有利になる。そんなことは教授達は百も承知のはずである。であれば、どちらにとっても公平な53階あたりに隠しているのではないかと推測したのだ。
さらに、聖都側は地の利を生かして見つかりづらいところに隠そうとするだろうし、王都側は見つけやすい場所、もしくは強い魔物が守っている場所を選ぶだろう。そこでまた公平を期すためにはB級の魔物が多くいる、比較的わかりやすいところなのではないかと当たりをつけた。
(見つけた)
ノアの予想通り、53階のドレイクの巣の中に証はあった。
さて、ここからが勝負である。ノアは当初の予定通り、見つけた人が必ず通る50階で探していたキリバスに合図を送る。それを見たキリバスは、まだ50階にも達していないケンヤを探しに行った。それから偶然途中で会ったクラリスにも合図を送り、囮として先に降りるように指示を出す。
「おおっと、王都側のノア・フローレンが証を見つけたようだ! 聖都側はまだ気づいていないようだぞ!」
地上では証を見張っていた教授からの通話を受け、司会兼審判の教授が実況していた。数少ない王都側の応援団はドッと盛り上がっているが、聖都側の応援団はケンヤが下の階にいるのがわかっているので、余裕の表情を見せている。
先に下に降りていった、キリバスが44階でケンヤを見つけた。ケンヤはB級のヘルハウンドの群れを潰している最中だった。
キリバスはヘルハウンドの群れに紛れ、不意打ちを仕掛ける。
「飛刃斬」
飛びかかるヘルハウンドの隙間から、キリバスの放った斬撃がケンヤに迫る。
「おっと、ようやく来たか」
流石は敏捷1500だけあって、斬撃を確認してからでも余裕で躱すことができるようだ。
「意外だよ。証も探さずに、僕を待っていてくれたみたいだな」
ケンヤの言葉を聞いて、キリバスが少々驚いた顔で聞き返す。
「君たちが色々策を弄しているのはわかったが、正直、今日の宝探しなんて負けたって構わないんだ。明日のクラン戦で、僕ひとりで君たち全員を打ち負かす姿を、みんなが期待しているのでね」
地上にいるクラリリスの応援団が、証を見つけられても焦っていなかったのは、それを期待しているからだろう。
「そういうことか。せっかくみんなで知恵を出し合ったんだが、あまり意味はなかったようだ。まあいい、僕らがやることは変わらないからね」
そう言って、キリバスは剣を中断に構えた。
「お前が、必死に俺を挑発しているのを見て笑いそうになったが、お前と決着をつけたいのはこちらも同じだからな。敢えて乗ってやったというわけよ」
ケンヤも剣を中断に構える。
そこからは無言で打ち合いが始まった。キリバスは必殺技を使わず、隙の少ない基本的な動きでケンヤを攻め立てる。しかし、ケンヤは薄ら笑みを浮かべながら簡単にその攻撃を捌いていく。
(さて、勝つのは簡単だが、どうやってこいつの心をへし折ってやろうかな)
ケンヤはキリバスの攻撃を受けながら、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます