第80話 サポーター制度
アスカ以外のメンバーが、”アスカを全力で守る会”を結成している時、当のアスカは何も知らずに、ハンクとミーシャとギルドに来ていた。
アスカが提案したサポーター制度が、どのようになっているかを確認するためだ。
ギルドに入るとまず新しい掲示板が増えているのが目に付いた。おそらくアレックスの作品だろう。
そこには色とりどりのカードが貼られていて、よく見るとサポート登録者の紹介カードだった。年齢や性別、職業や所持スキル、日給などが書かれており、その他にも特技やアピールを書く欄もある。
色は冒険者カードと合わせており、同行できるクエストレベルに対応している。冒険者は気に入ったサポーターのカードを受付に持って行けば、すぐにサポーターが紹介され冒険へと出発できる仕組みになっているようだ。
「へぇー、自分で言うのも何ですがよくできてますね」
アスカがそれを見て感心している。
「あぁ、これはかなり画期的な制度だ。実際、冒険者からもサポーターからも評判がよく、仲介するギルドまで儲けちまうよくできたシステムだ。
まだ始めたばかりだが、もうすでに他のギルドから問い合わせがあってな、全国のギルドでこの制度を取り入れる予定だ。国からも、お褒めの言葉をいただいている。貧民街の住人の収入源が確保され、貧民街が貧民街じゃなくなりつつあるらしい。
もっとも、貧民街に突如できた謎の薬屋が、貧民街の住人の病気や怪我を格安で治しちまったってのも大きな理由らしいが。あー、何ていったかな店の名前……『ボンとベニア アート』だったかな?」
ハンクめ、わざと間違ってないか?
「ベン&ソニア マートのことでしょうか?」
「お、知っていたか。そうそう、そんな名前だったな。まあ、話を戻すとだな、国もギルドも冒険者も、貧民街の住人も全てに得がある素晴らしいシステムを考案したクラン”ホープ”に、国やギルドから何らかの栄誉が与えられるってことだな」
「そうなんですか? それは、リーダーのソフィアさんに言っておかないといけないですね。でも、色々打ち合わせとか大変そう……」
「そこは否定できんな。なんせ国やギルドが絡むと、やれ手続きだ、やれ打ち合わせだとうるさいからな。ま、困ったらミーシャに助けてもらうんだな。叫び声はあれだが、こいつはその辺はかなり優秀だからな」
ミーシャは照れているような怒っているような、なんとも言えない表情でハンクをにらんでいる。
「そうだ、ミーシャさん。前からお誘いしようと思ってたのですが、クラン”ホープ”に入っていただけませんか? ハウスで受け付けしたり、クランに来る依頼を捌いてほしいのですが。もちろんお給料ははずみますよ。ここの2倍出すことを約束します!」
「アッパレピーア! 私が、今、飛ぶ鳥を落とす勢いのクラン”ホープ”のメンバーに!? そして給料は今の2倍! 今入れば私も国やギルドから栄誉をいただけちゃうんですか!?」
うひょー、武術大会では近くにいなかったからストレスがたまってたけど、やっぱりいいねミーシャは!
「そうなるかと思います」
「不肖
「いや、辞表は出さんでいい。給料はやれないがギルドには所属しておいてくれ。おそらく”ホープ”とは長い付き合いになりそうだし、何よりアスカとの縁を切りたくない。お前がギルドに所属しておいてくれた方が、都合がいいことがたくさんあるからな」
「アスカさんがよければそうしますが?」
「私は問題ないですよ。私達も、ギルドのクエストをミーシャさんを通して受けられた方が便利ですから」
こうして、クラン”ホープ”のメンバーがひとり増えた。メンバーのみんなには事前に許可を取っておいたので問題ないだろう。
この話が一段落したところで、もう一度、サポートカードを見てみる。そうすると人気のあるサポーターの特徴が見えてきた。サポーターは荷物持ちよりも、その特技や知識が重宝されているようだ。
例えばこのカードのサポーターは『水操作Lv1を使えます。飲み水の確保や、何かを洗ったりする水をご用意できます』と書いてある。水操作を使える者がいないパーティーではかなり重宝するだろう。
こっちのカードの女性は戦闘能力は皆無だが、『薬草の知識あります。錬金Lv1を持っているので、材料があればその場で
また、『魔物の弱点教えます』といったような文句も見受けられる。サポーター達もそういった特技を身につけるように努力しているようだし、特技のあるサポーターは日給も高いらしい。労働意欲の向上にも繋がっていて、良い効果だと思う。
新しい制度の確認もできたので、今日はこれで帰ることにした。
「それではミーシャさん、明日からよろしくお願いします」
アスカがミーシャに頭を下げる。
「ガッテン承知です。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
そう言ったミーシャとハンクに別れを告げギルドを後にした。
(明日は久しぶりの登校日だ。3週間ぶりだな。ライアット教授は元気かな?)
(そうだね。ライアット教授の研究にまた協力してあげないとね)
アスカと俺は、そんなことを話ながら家へと帰っていった。
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