第79話 アスカを全力で守る会
〜side ???〜
「私達が最初に会ったのは、魔法学院の入学試験でしたわ。その試験で、実技試験用のミスリルのマネキンを、炎の魔法で蒸発させた受験生がいるという噂がありました。その時は、そんな馬鹿なことがあるわけないと思っていましたが、今考えるとアスカさんならあり得ますね」
ソフィアがアスカとの出会いを語りだす。
「そうそう、それにその後すぐソフィアが探していた付与3つ付きの指輪とネックレスをくれたんだ。しかもその付与は全属性耐性、全状態異常耐性、結界だぞ。信じられなかったね。まあ、知り合いにもらったと言ってたけど」
ミスラは、今でもその時の衝撃を鮮明に覚えているのだろう。
「我々の出会いはもっと衝撃的だったな」
キリバスが目を瞑り、その時のことを思い出すように語り始める。
「武術学院と魔法学院の合同実戦訓練で一緒にパーティーを組んだけど、あの時アスカがやったことは……氷操作Lv2、雷操作Lv3、治癒Lv3、土操作Lv3、風操作Lv3、結界Lv4でそれらを無詠唱で同時に2つ使ってたな。
さらにC級のイービルウルフは全て一刀で斬り捨てたところをみると、剣術も持っていると思う。装備も見たことがない素材で、明らかに
「今まで、何となく凄いんじゃないかって思ってたけど、事実を並べていくと何となくどころじゃすまないようね。それで魔力は1200を超えてるんでしょう?」
メリッサは最早呆れ顔になっている。
「それとみんな覚えてるかな、アスカが『スキルクリスタル2500』を出した時に言った言葉。『知り合いのドラゴンにもらった』って言ってたんだよ」
ノアは記憶力もいいようで、アスカの一言をはっきりと覚えていた。
「ドラゴンにもらったってことは、少なくともそのドラゴンは会話ができたってことだよね。そんな知性のあるドラゴンは
ちなみに
ノアは魔物に対する知識も豊富なようだ。
「その
妹のクラリスが、ノアの言わんとしていたことを続ける。
「なぁ、お前らの話を聞いててふと思ったんだが、アスカって今回の商品、全部自分で用意したんじゃねぇか?」
ゴードンがとんでもないことを言っている。とんでもないことを言っているんだが……
(((何かあり得る……)))
「ま、まさかとは思うけど、妙に説得力があるよね」
キリバスも薄々そうではないかと思っていたのだろうが、彼の常識がそれを否定していた。
「だってよ。装備にせよ、アクセサリーにせよ、このレベルのものならそんな簡単に作ってもらえないだろう。
しかも、全てのびっくり品はアスカがらみでしか見たことないぞ。他に作っている奴がいるなら、誰かがどこかで見たことあるはずじゃないのか」
「ゴードン、あんたって意外と頭良かったんだ……」
ジェーンが動揺して失礼なことを言ってる。
「ついでに言うと、操作系のスキルをあれだけ持ってるなら、生産系のスキルだって持っててもおかしくないだろう。オリハルコンを扱ってるから鍛冶Lv4、その賞品から見るに付与Lv5、さっきの
実はゴードンが1番物事を素直に受け入れ、柔軟に考えることができているのかもしれない。
「私の常識が音を立てて崩れ去っていきますわ……」
ソフィアも、その考えが間違っていないと思ったのだろう。
「ちょ、ちょっと待って、だとしたら今話題の黒ローブの冒険者って、アスカ本人なんじゃない?」
ついにミスラがアスカの謎の核心に迫ってしまう。
「あ、ありえるな……。そうなるとアスカってSランク冒険者!?」
キリバスも同じ結論に至ったようだ。
「これは大変なことになっちまったね」
メリッサがことの重大さに苦い顔をする。
「これが真実だとしたら、これからどうすんだ?」
「…………」
ゴードンの問いかけに一同皆黙り込む。
そして、最初に口を開いたのはやはりソフィアだった。
「このままじゃ、ダメかしら?」
「どういうことだい?」
キリバスが聞き返す。
「魔法学院の人達は知っていると思いますが、アスカさんって入学試験を首席で合格したから、入学式で代表挨拶をしてるのです。そこで言ってました。『自分は両親が幼い頃亡くなってしまって、唯一の身内だった兄も遠くに行ってしまい、生きるために魔法が必要だった』って。そして『ひとりぼっちになった自分に優しくしてくれた人がいて、その人との約束で今度は自分が困っている人を助けたいんだ』って。
今ここで私達がアスカさんの正体を追求してしまったら、あの子はまたひとりぼっちになってしまうんじゃないかって思うのです。
あの子の能力が世間に知られたら、間違いなく軍事利用され、用がなくなったり戦うのを拒否したら人類の敵として恐れられ、自分の身を守るために人を殺め、居場所を失っていく。普通に接していれば、あんなにもいい子なのに……
あの子を人類の敵にはしたくありません。私達はあの子が自分から言い出すまで、見守ってあげるべきではないでしょうか? どんなに強くても13歳の女の子には変わりません。年上の私達がやるべきことは、あの子をひとりぼっちにさせることではないと思います。あの子がどんな状況に陥っても仲間でいることが、我々のやるべきことではないでしょうか」
ソフィアが熱く語る。その言葉に全員が力強く頷いている。
「僕はアスカに命を助けてもらった。アスカが困っているなら、僕は命をかけて守ると誓うよ」
キリバスもやる気に満ちた目をしている。
こうして、アスカの知らないところで”アスカを全力で守る会”が結成されたのである。
〜side ショウ〜
俺がこの話を聞いたのは、もっと後になってからだった。この話を聞いた時、思ったよ『身体があったらお前らみんな抱きしめてるよ!』ってね。
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