第64話 地竜王

 ダークドラゴンとホーリードラゴンを左右に従え、その魔物は真ん中に鎮座していた。S級のドラゴン達が霞んで見えるほどの圧倒的な存在で、その知的な目はアスカを見つめている。


(鑑定!)


名前 地竜王アースロード 竜王族 地属性

 レベル 120

 ステータス

 HP 4500

 MP 3800

 攻撃力 2200

 魔力 1900

 耐久力 2330

 敏捷 1760

 運 1480

スキル

 土操作 Lv5

 土耐性 Lv5

 雷耐性 Lv5

 全状態異常耐性 Lv4

 鑑定 Lv5

 限界突破 Lv2

 危険察知


 こいつはヤバイ。S級のさらに上を行くステータスだ。スキルもLv5が複数付いている。ダークドラゴンとホーリードラゴンもいて、アスカに勝ち目はあるのか?


 この魔物はまだ世に存在が知られておらず、ランクで言えばSS級の魔物だった。竜王や魔王といった各種族の王達がさらに限界を突破して進化した姿なのだ。

 いかにアスカといえども、この3体を相手には無事で済まないかもしれない。そう思い、アスカの顔を見るが…………全然、動揺していない。

 おかしい、アスカも色々な経験を重ね、一目見ただけで相手の強さがわかるようになっているはずなのに、涼しい顔をして地竜王アースロードを見つめている。


(もしもし、アスカちゃん、お兄ちゃんこのドラゴンさんはちょっとヤバいなーって思ってるんだけど、アスカちゃんにはどう見えてるのかな?)


 一応確認してみる。


(えー、そうなの? 私にはそんなに強そうには見えないけど……)


 どうなってる? もしかして、この地下迷宮ダンジョンでS級の魔物を8体ほど倒してるから、レベルが上がってるのか!? そう思い鑑定してみると……


(鑑定!)


名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 30(99)

 職業 賢者(超越者)

 ステータス

 HP 124(3265)

 MP 134(3275)

 攻撃力 124(3265)

 魔力 144(3285)

 耐久力 124(3265)

 敏捷 134(3275)

 運 134(3275)

 スキルポイント 200(33715)


 ……おい、なんじゃこりゃ。レベルが99になってる。S級1体でレベルが6くらい上がってる計算だな。ステータスも半端ないし、そりゃ竜王さんも弱く見えるわ……これもう、絶対日常生活に影響出ちゃうだろ。


「小さき者よ。どうやってここまでたどり着いたのかはわからぬが、汝が来るべきところではない。早々に立ち去るがよい。さすれば命までは取りはせん」


 地竜王アースロードが厳かに言い放つ。


 しかし……


 頼む――、地竜王アースロードちゃん、あんたが持っている鑑定を使ってくれー。命取られちゃうのはあんただよー。


「こんにちは、地竜王アースロードさん。あなたはここで何をしてるのですか?」


 地竜王アースロードの言葉を無視して、アスカがマイペースに質問する。


「……なぜ我の名前がわかった? もしや汝は鑑定持ちか? ならば今一度、我のステータスを見るがよい。その上で、その勇気があるのならもう一度問うてみよ」


 頼む。お前がアスカのステータスを見てくれ。その上で勇気があれば、偉そうにしゃべってくれ……


「はい、見ました。それでこんなところで何をしてるのですか?」


 そりゃそうだよね。アスカはそうなるよね……。だって竜王ちゃん弱いもんね……


「汝、バカなのか?」


 違う! バカはお前だー!!


「むしろ、私の質問にまともに答えれない、あなたの方がおかしいのでは?」


 アスカー、空気読めよー。このお方は竜王の進化形なんだよー。挫折を知らないんだから、もうちょっと優しくいこうよ……


「汝を敵として認めた。後悔するでないぞ」


 もう、何も言えない……


 地竜王アースロードが立ち上がる。それに合わせて、左右に控えていたダークドラゴンとホーリードラゴンも立ち上がり、戦闘態勢に入る。そして……


「はぁっ?」


 さすがは地竜王アースロード。自分が最強だと思っていながらも、戦うとなれば油断せずにアスカを鑑定したようだ。個人的にはもっと早く鑑定してほしかったが……


「ちょっとタイム!?」


 地竜王アースロードは威厳もへったくれもない声で待ったをかけ、お供のダークドラゴンとホーリードラゴンと、何やら相談を始めた。


「あの黒ローブ、全てのステータスが3000超えてるんだけど、そんなことある?」

「ガウガウ。(ボスの鑑定はLv5だよね? だとすれば間違いないんじゃない?)」

「えっ、だとしたら3体がかりで戦っても負けちゃうんじゃね?」

「ガウゥゥー。(普通に考えたら負けちゃいますね。敏捷3000超えとか、攻撃当たりませんよ?)」

「そうだよね。スキルも見たけど33個付いてた。全部Lv5……」

「ガウーガウー。(ボス、謝った方がよくないっすか?)」

「えっ、我謝るの? 我って最強じゃなかったの?」

「ガウウンガウウン。(残念ですが、今この瞬間に最強ではなくなりました)」

「そうすると我のさっきの発言ヤバくない?」

「ガーーーウガウ。(俺人間の言葉しゃべれなくてよかったー)」

「我、こんなところで死にたくない……」

「ガウッウガウッウ。(私がついてますから一緒にあやまりましょう)

「我、そうする」


 3体の相談が終わったようで、地竜王アースロードはこちらに向き直り、アスカを見つめる。その目には知的な輝きはなく、むしろ怯えているようだった。


「我がここにいる理由は……我がこの地下迷宮ダンジョンの主だからだ……です」


 なぜか敬語を使い始める元最強の竜。


「あ、敬語は別にいいですよ」


 気軽に許す現最強のアスカ。


「我、感謝する」


 最早完全に立場が逆転してしまった。


「あなたがここの主ということは、ここが最終層で間違いないですか?」


「その通りだ」


 アスカの問いに地竜王アースロードが厳かに答える。その声は震えているけど……


「そっか、最終層には何かお宝とかあるのかなーって思ったんだけど、そんなのはなさそうですね」


「む、汝はお宝目当てだったのか?」


「うん。ちょっと武術大会の賞品を探しにね」


「我、賞品探しのついでに殺されるところだったのか……」


 あまりの理由に地竜王アースロードがへこんでいる。


「お宝かどうかはわからぬが、このクリスタルでよければ汝に授けよう」


 そう言って地竜王アースロードが差し出してきたのは、拳2つ分の大きさのスキルクリスタルだった。中には『スキルポイント2500』と書かれている。


「わー、ありがとう! これはよい賞品になりそうです」


 アスカは手を叩きながら喜んでいる。何せ、スキルクリスタルは滅多に見つからないお宝だから。


「我、役に立ててよかった」


 地竜王アースロードも、そんなアスカの様子を見てほっとしているようだ。


「それでは、遠慮なくいただいていきますね!」


 とっても嬉しそうにスキルクリスタルを受け取ったアスカは、地竜王アースロードに別れを告げる。


「うむ。汝も達者でな」


 地竜王アースロードにさよならを言ってアスカは空間転移テレポーテーションで我が家へと戻って行った。


 そうそう、アスカのレベルが99になったから限界突破のスキルを付けておこう。確か、Lv5はレベルの限界値+100だったから200まで上がるはずだな。

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