第51話 学院の授業

 入学式の日は、相当お疲れだったのか帰ってきてすぐ、アスカは寝てしまった。




 次の日、学院へ向かうアスカの足取りが軽いのを見て、ソフィアとミスラと友達になれたことや、クラスメイトが自分の話に共感してくれたことが嬉しかったんだなと思った。

 学院の試験を受けて本当によかった。


 学院に到着し教室に入ると、すでにみんな来ていたようで、それぞれの席に着いていた。

 アスカが教室に入ると一斉にみんながおはようといってくれる。アスカもあいさつを返し、ソフィアやミスラとおしゃべりしながら待っていると、ライアット教授が教室へと入ってきた。


 今日の授業はスキルについてだ。スキルの名前や効果については、スキルナビゲーターの効果でよく分かっているが、この世界でスキルがどのように扱われているかは、よく分かっていない。その辺りを詳しく知りたいものだ。


 ライアット教授によると、スキルには武術系、操作系、耐性系、強化系、生産系、特殊系があるらしい。


 スキルにはスキルLvがあるものと、スキルLvがないものがある。武術系や操作系、耐性系、生産系はほとんどLvが存在するが、強化系や特殊形の一部はLvが存在しないらしい。無詠唱なんかがそれにあたる。

 Lvが存在するスキルは、最初の入手に100ポイント必要だが、Lvの存在しないスキルを覚えるには、かなり多くのポイントが必要なようだ。


 例えば、現在知られているもので言うと、詠唱短縮を覚えるには1000ポイント必要だ。

 ちなみに俺はナビゲーターなので、そのあたりの知識はあり、未確認のスキルっぽい並列思考は50000ポイント、魔力増大は100000ポイント必要だとわかっている。普通だとレベル100で5054ポイントしかもらえないのに、どうやって覚えるのだろうか。


 さらにLv5のスキルは取得に5000ポイント必要となる。スキルは入手に100ポイント、Lv2に上げるのに75ポイント、Lv3は300ポイント、Lv4は1700ポイント必要なので、入手からLv4まで上げるのに、2175ポイント必要になる計算だ。


 そうするとLv5のスキルも通常では覚えることができず、Lv4が2つというのが最高クラスとなってしまう。Lv5の魔法が伝説と言われているのは、この5000ポイントのせいだろう。


 ではなぜLv5のスキルが確認されているのかというと、Lv5を取得した例が2つ確認されているからだそうだ。


 ひとつは【転生者】と呼ばれる存在だ。ごく稀に、異世界からこの世界に転生してくる者がいると言われている。その者は、初めからLv5のスキルをひとつ持っているという記録が残っていると言うのだ。まあ、あの女神様もそんなことを言ってたような気がするし、間違いないだろう。


 もうひとつは、スキルクリスタルの存在である。この世界にいくつか存在する、地下迷宮ダンジョン地上迷宮ラビリンスと呼ばれる魔物の巣窟の奥深くで、希に発見されることがある、スキルポイントが付与されたクリスタルのことである。


 このクリスタルは透明で、六角柱の両端が尖った形をしている。大きさは、小指くらいの物から20cmくらいの物まで確認されているらしい。

 大きければ大きいほど付与されているポイントも大きく、レベルアップ以外でスキルポイントを得ることができる唯一の手段であり、Lv5の魔法を使いたければ必須のアイテムとなるそうだ。


 当然その価値は高く、ごく希にオークションなどに出されると、値段が天井知らずで上がっていくらしい。


 と言うことは、ドラゴンバスターのクロムはこのスキルクリスタルを手に入れたのか。

 気になっていた謎が解けてスッキリした。その話で1時間目は終了となり、長めの休み時間を挟んでから次の授業となる。


 次の授業はスキルの構成についてだった。

 この授業を担当するのはトリスタン・トレイル教授だ。貴族の三男らしく、炎操作、雷操作、氷操作の操作系スキルを取得しており、全てLv3まで上げている。見た目は金髪でロン毛の優男で、初めて見た時、近所に住んでいたチャラい兄ちゃんを思い出した。


 教授によると、それぞれの属性には相性があり、炎>風>土>雷>水・氷>炎となっている。メインで選ぶスキルはぶっちゃけどれでもいいらしい。冒険者の間では炎操作が1番人気だが、風操作もエルフを中心に人気がある。


 しかし、2つ目のスキルを選ぶ時は、少し気をつけなければならない。属性に対して耐性を持っている魔物は多く、その多くは得意属性とその属性と相性がいい属性の2つの耐性を持っている。例えば、炎属性の魔物は、炎耐性と相性のいい風耐性を持っていることが多いというわけだ。


 つまり、炎操作をメインにして、2つ目を風操作にすると、この魔物には有効な攻撃手段がなくなってしまう。

 そこで2つ目のスキルは、メインスキルの苦手属性と相性のいい属性を選ぶのがよいとされている。ここで言えば、炎属性の苦手属性は水属性なので、それと相性のいい雷操作を選ぶとよいということだ。メイン属性と相性の悪い水属性が相手でも、サブ属性を使えば有利に戦いを進められるだろう。

 もちろんそれが全てではないので、自分のスタイルに合った属性を選ぶのも大事だけどね。


 得られるスキルの数に制限があると、色々考えて工夫しなきゃならないんだな。やっぱり俺のスキルはチートだな。


「さて、次に考えるのは真っ直ぐLv4のスキル取得を目指すのか、Lv3のスキルを複数取得するべきか、ということだが――」


 続けて説明するトリスタン教授の話によるとLv4とLv3のスキルには、明確に大きな差があるそうだ。取得ポイントを見ても、1700と300となっているのを見れば明らかだ。

 しかし、Lv4のスキルを諦めれば、その分Lv3を5つ取得することができる。まあ、1から取るなら3つだが。


 ここで知っておかなければならないのが、Lv4のスキルを持っていれば、同じ属性の下位魔法も、Lv4同等に強化されるということだ。

 例えば、土操作Lv4を持っているなら、Lv2の石の盾ストーンシールドで、他のLv4の魔法を防ぐことができるのだ。もちろん、魔力の大小によっても変わるけどね。


 つまり、より強い敵と戦いたいのであれば、Lv4を目指した方がよいということだ。

 ただし、属性が一つしかないと、その耐性を持っている相手には、まるで無力になってしまうが……


「さて、小難しい話ばかりだと退屈だろうから、午後からは実践的なスキルの使い方の練習をしよう」


 色々なパターンとメリット、デメリットを詳しく説明してくれたトリスタン教授は、そう言って午前中の授業を締めくくった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る