第30話 ドラゴン討伐報告

 今日も昨日に引き続き、タッカート山脈へ入る。狙う獲物はドラゴンなので、かなり山頂に近いところまで登っていった。途中にいたワイバーンの群れは、レベル上げついでに狩っていく。


(そういえば、昨日の素材売りそびれたな。帰ったら必要な物以外、買い取ってもらおうか)


(はーい)


 そんな会話をしながら登って行くと、まず最初に探知にかかったのは、グリーンドラゴンだった。

 グリーンドラゴンは風操作を持っており、風属性と土属性に耐性がある。逆に火属性が弱点になっているので、炎操作で攻めるのが常套手段らしい。

 ただ、今回は素材が目的なので、あまり傷つけないように剣術でとどめをさしたいところだが。


炎の爆発フレイムバースト!」


 まずは小手調べで奇襲の一発を放つ。いきなりの攻撃で右前足にダメージを受けたグリーンドラゴンは、怒り狂ってアスカに向かって一直線に飛んで来た。


水球牢ウォータープリズン!」


 アスカは飛んでくるグリーンドラゴンを水の檻で閉じ込める。


稲妻爆発ライトニングバースト!」


 そこに、アスカの手から生まれた稲妻が突き刺さった。水の中でダメージが拡散し、グリーンドラゴンがあえなく地面に落ちた。そこに、一瞬で間を詰めたアスカの剣が煌めく。


「断鉄剣!」


 アスカの必殺技がグリーンドラゴンの首を落とした。


 ドラゴンも1体なら楽勝のようだ。我が妹ながら、随分と強くなったものだ。この調子で残りの3種類のドラゴンも倒してもらうとしよう。

 ちなみにレッドドラゴンは炎操作を、ブルードラゴンは水操作を、イエロードラゴンは土操作を使ってきた。

 どれも弱点属性を突いて、とどめは剣術スキルで倒したので、綺麗に狩ることができた。これは高く売れること間違いなしだね!


 残りのゴブリンキングは昨日、倒していたのがまだ鞄に入ってるので、改めて狩りに行く必要はない。


 クエスト達成分はこれで大丈夫だが、レベル上げと素材集めにもう少し狩って行くことにする。


 この後さらに、レッドドラゴン2体とブルードラゴン1体を狩ってから、王都に戻った。ちなみに、アスカは今日もレベルが3つ上がったよ。


名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 25 

 職業 賢者(大賢者)

 ステータス

 HP 58(380)

 MP 68(390)

 攻撃力 58(380)

 魔力  78(400)

 耐久力 58(380)

 敏捷  68(390)

 運   68(390)   

 スキルポイント 756


 



「お帰りなさい。今日はまた随分早いですね。ドラゴンは見つからなかったですか?」


「いえ、ちゃんと見つけて倒してきましたよ。ほら」


 ミーシャに聞かれたアスカは、そう言ってレッドドラゴンの逆鱗を出す。ドラゴンの討伐証明部位だ。


「あひょょょょー! ドラゴンってAランクのパーティーが、何時間もかけて倒せるかどうかっていう魔物なのですよ? わかってますか?」


「すいません。わかってませんでした」


 ミーシャの剣幕にアスカがちょっとしょんぼりしてしまった。もちろん、しょんぼりしたアスカもかわいいけどね。


(まだあるって言いづらいな……)


(うん)


「それでは、レッドドラゴンの――――」


「あっ、ちょっと待って……」


「おおっと、この展開はさらに何かぶっ込んでくる感じですか?」


 やばい、こいつとアスカのやりとりがだんだん楽しくなってきた。

 ……クセになりそうだ。


「先に謝っておきます。空気読めなくてすいません」


 そう言ってアスカは残りの逆鱗を並べていく。


「あぎょーーーん! さっき言いましたよね! 1体倒すのに何時間もかかるって! 何で7体分の逆鱗が有るのですか!?」


「……だって、1体倒すのに5分もかからないし。いいじゃないですか別に」


 周りには、騒ぎを聞きつけた冒険者達が集まってきた。何だか見世物のようになっているな。


「……おい、あれを見てみろ」


 少し離れたところでは、チームドラゴンバスターの戦士と思われる男が、リーダーのクロムにそんな声をかけていた。


「……あぁ、見てるよ。資格ありだな」


 おいおい、聞こえてるぞ。資格ってまさか、俺のアスカをパーティーに誘おうってわけじゃないだろうな。


「はぁ、もういいです。あなたに今までの常識が通じないのはわかりました。ギルドとしても、強い冒険者は大歓迎ですから。それで、Aランクへの昇級試験を受けますか?」


「はい、お願いします」


 ミーシャが席を外している間に、必要ない素材の買取をお願いする。えらいたくさんあったのでまた驚かれたが、無事換金することができてよかった。B級の魔物の素材はそれなりに高く、全部で2000万ルークにもなった。何だか金銭感覚が麻痺してくるな。


「よう、お前がAランクの昇格試験を希望してる冒険者か?」


 お金をリュックにしまっているアスカに声をかけてきたのは、頭をスキンヘッドに剃り上げ、色黒のたくましい体に不思議な光沢があるレザーアーマーを身につけた、いかにも戦闘大好きっぽい大柄な男だった。手には魔物の爪が付いたナックルを装備している。


「はい、お忙しいところすいません。よろしくお願いします」


「そうか、俺はハンク、ここのギルドマスター(GM)をしている。ミーシャが『えらい強いヤツが試験を受けにきた』って言ってたから、俺様が直々に手合わせしてやろうと思って来たわけだ」


 そう言って男はニヤッと笑う。


 ついにきたー! これ絶対戦闘狂だよ。負けた後も、笑顔で『またやろうぜ!』って言うタイプだよこれ。


「……おい、GM自らお出ましだぞ!」

「……どうなるんだこの戦い!?」

「……誰もあの黒ローブが戦っているところを見たことがないからな。万が一にもGMが負けることはないと思うが、意外といい勝負するかもな」


 外野がまた好き勝手言ってるが、俺は冷静にその実力を見極める。って鑑定してるだけだけど。


(鑑定!)


名前 ハンク 人族 男

 レベル 68 職業 戦士

 ステータス

 HP 345

 MP 51

 攻撃力 333

 魔力 61

 耐久力 306

 敏捷 341

 運 276

 スキルポイント 5

スキル       

 格闘術  Lv4

 身体強化 Lv2


 この程度のステータスなら、魔法なしで戦っても勝てそうだな。


「お手柔らかにお願いします。場所は裏手の広場でよろしいですか?」


「あぁ、その通りだ。こっちから行ける、ついてきてくれ」


 先導するハンクの後を追って、アスカは裏口から出て行くのであった。

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